その今の『親の心』、子知らず
私のお母さんはとてもうるさい。理由は自分でも解っている。
他のみんなより、とてもどんくさいからだ。
「ほら早く起きて! 布団たたんだら、すぐに着替えるのよ!?」
お母さんは寝坊助の私を部屋まで起こしに来る。
わかってる、わかってるよ。お母さん。今起きる……。
眠気眼でお母さんに返事をした私は、布団のなかでモソモソしながらやっとの事で身体を起こすと、少し間を置いてから布団をたたんで、押し入れにしまう。
自分としては早く行動しているつもりなんだけど、お母さんの目には、すごく遅く見えるみたい。
「……まだ着替え終わってないの!? もう! どうしてあんたはそんなにとろいのよ! 本当、イライラするわ!!」
様子を見に来たお母さんが、私を叱りつける。
……お母さん、これでも私、一生懸命、早くやっているつもりなんだよ……。
だからそんなに怒らないで……。
「ほら、早くしないと朝食を食べる時間がなくなるだろ!?」
お母さんはそう言うと私を両手の平で背中を押し、居間に連れていくと、お互い向かい合うようにテーブルにつかせる。
「朝はしっかり食べないと身体がもたないからね、残さず食べるんだよ!」
「……うん」
私はお母さんの作ってくれたご飯の前で両手を合わせると、お母さんと声を揃えてこう言った。
「いただきます……」
「いただきます!!」
………………あー、あれから二度目の新元号を迎えましたか。子供の頃は人生で二回も元号が変わるだなんて思わなかったなー。
私は何故か、ゴミ集積所に左手に二つ持ったゴミ袋を扉を開けて放り込みながらそんな事を考えていた。
そして家に帰ろうと後ろを振り向くと、朝日がめっちゃ目に射し込んでくる。焼けるわ。
「お早うございます」
「あ、お早うございます」
目を朝日から守ろうと両手で隠していると、近所の中学生に挨拶される。泡を食いながら、挨拶を返す私。何やってんだか。
ゴミを捨て終えた私は、トロトロと家に帰るとお母さんがこんな事を言う。
「おや? 早いねえ。もうゴミを捨ててきたのかい?」
「なに言ってんの! 全然早くないでしょ? いつも通りだって!」
お母さんは何年か前から口癖のように私に「早いねえ」と言うようになった。
最初は動きのとろい私の当て付けかと思った。
……でも最近、それが違うって知った。
お母さんは、歳を重ねて早く動けなくなった自分に苛ついていたのだ。……と思う。
「ああっ!! もうっ!! どうしてこんなにも素早く動けなくなってしまったんだろうねぇ!? もっと早く動けたら、お前を助けてやることも出来るんだけどねぇ!?」
「やめてよ、お母さん! 私も良い大人なんだよ? お母さんに助けてもらわなくても大丈夫だよ! それにお母さんは充分、動けてるじゃない!? もっと自信持ってよ!!」
そうだよ、お母さん。どうして動かない身体を無理に動かそうとするの……?
どうして少しばかり、とろくなるのがいけないの……?
お母さんが出来なくなった事は、私が出来るだけ手助けするから……。
でもきっと、今の『親の心』は私が知る事は出来ないのだろう。
私がお母さんと同じ時を迎えるまでは……。
今回、初めて心に思った事を書き綴ってみました。
皆様、どう感じられましたか?




