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ジェット騎士団〜影の守護者たち〜  作者: 如月
第一章 絶望と脱却
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諦めない!

ウルカの街は騎士達に守られているため、非常に治安がいい。しかし、どの街にも必ず闇がある。通りから外れた路地裏は狭く、昼でも暗いため、なかなか目に付きにくい。そのため、犯罪が起こりやすい。今も、3人の男達が1人の少女を囲んでいる。その内の1人は少女を背後から拘束している。


「いやっ、やめて!離してください!」


「おいおい落ちつけよお。別に暴力を振るうつもりはないからよお。」


「そうそう!ただ俺達と気持ちいいことをするだけだからさ!」


「いやっ、やめて!誰か、誰か助けてー!」


「へへへ、嫌がる表情も可愛いねぇ〜。どうせ助けなんて来ねえよお!ここに騎士はこねぇからな〜!」


「いや、いやーーー!」


明らかに少女を犯そうとする男達。彼女の純潔が奪わるかと思われた、その時!


「やめなさい!」


「ああ?」


矢の如く真っ直ぐに届いた言葉に男達が振り向く。視線の先には息を切らしたイザベルが立っていた。少女の悲鳴を聴いて必死に走ってきた彼女の顔には、疲労が見られた。しかし、男達を睨みつけるその目から、彼女の怒りが滲み出ていた。


「だ、誰だよ、てめぇ?」


男の1人が尋ねる。イザベルは男の問いを無視し、大声で怒鳴った。


「男3人で1人の女の子に迫るなんて、この不埒者!さっさと離れなさい!」


「何だとテメェ!部外者が口出しするんじゃ…!」


別の男がイザベルに怒鳴り返す。男達の意識はイザベルに集中する。その隙を狙い、少女は背後から拘束している男の足を思いっきり踏みつけた。


「痛っ!」


突然の痛みに驚き、男は拘束を解く。少女は素早く動き、イザベルの元に逃げる。


「あっ、テメェ!」


男達が少女に迫ろうとする。しかし、イザベルの鋭い眼光にたじろぎ、それ以上は動けなかった。少女はイザベルの後ろに隠れ、イザベルは少女を男達から見えないようにする。


「大丈夫?」


「は、はい…。」


イザベルは男達を睨みつけながら少女に尋ねる。少女は震えながらイザベルの服を掴み、ピッタリと寄り添う。ひとまず男達から解放することは出来た。しかし、問題はここからである。


「ねぇ、走れる?」


「え?」


イザベルは小声で少女に尋ねる。少女は戸惑いながらも首を縦にふる。イザベルは横目で確認すると少女に言った。


「いい?私がアイツらをくい止めるから、その隙に逃げて。まっすぐ走れば通りに出られるから。」


「えっ?でもそれでは貴女が…!」


「私は大丈夫。合図をしたら全速力で走って。後ろは振り返らないで。いい?」


「は、はい。」


「OK.それじゃあいくわよ……今よ!」


イザベルの合図と共に、少女は全速力で走った。それに気づいた男達が、慌てて追いかけようとする。


「あっ、待て!」


「逃がさねぇぞ!」


イザベルは腰に下げた剣を鞘から抜き、水平にして道を塞ぐ。そして男達を睨みつける。


「ここから先は、通さないわよ。」


そう言い放った声は低く、凄みがある。男の1人が小さな勇気を振り絞って言い返す。


「へっ!何がここから先は通さない、だ!3対1でどう見ても不利じゃねぇか!剣を持っているからって、俺達に勝てるわけねぇだろ!諦めろ!」


諦めろ、男が最後に言った言葉に、イザベルはピクリと反応する。そして俯きながら、小さな声で言う。


「…めない。」


「ああ?」


「…めない…諦めない…諦めない…諦めない!」


「?!」


突然、語気を強めたイザベルの声に男達は驚く。イザベルは更に言葉を続ける。


「私は絶対に諦めない!たとえ今は駄目でも、子供の頃から抱き続けた夢を、簡単に手放すことはしない!必ず叶えてみせる!だから私は、こんな事で負けるわけにはいかない!」


「な、何だこの女?一体何を言っている?」


「どうでもいい。それよりも、さっさとこの女を始末するぞ!」


男達はポケットからナイフを取り出す。勢いよく啖呵を切ったイザベルだが、流石に3対1では分が悪い。彼女の額から、冷や汗が出ている。が、それは向こうも同じである。イザベルの放つ怒りのオーラに、男達3人は完全に呑みこまれていた。


「へっ!強がったって無駄だぜ。どうせ誰も助けに来ねえからな!3対1で、どう見てもこっちが有利…。」


「それはどうかな?」


その時、何者かの声が聞こえたと同時にイザベルの背後から何かが現れた。1つは男の持つナイフを弾き飛ばすと、瞬時に強烈なパンチを腹部へ食らわせた。


「ふん!」


「ぐはっ!?」


もう1つは男の足をはらって体勢を崩し、倒れたところに棒状の武器を思いっきり顔面に振り下ろした。


「おりゃ!」


「ぐぁ!」


あっというまに、2人の男は戦闘不能になった。1人残った男は、ナイフを向けて必死の抵抗をする。しかし…。


「な、何だよテメェら?何者だ!?」


残り僅かな強気を見せたものの、その声に力はなく、足は震え、額から滝の様に汗が出ている。完全に後がなくなった男に、この状況を打開することは不可能になった。イザベルを助けたのは黒装束の男達だった。1人は両手にカエストスを嵌め、もう1人は杖を持っている。そして…。


「安心しろ。その2人は殺していないしお前を殺すつもりもない。ただ、しばらく眠ってもらう。」


ゆっくりとイザベルの背後から現れ、男に銃口を突きつけるもう1人の男。最初に言葉を発した男である。


「さっき、質問したよな。俺達が何者か、と。これを見たら分かるだろう?」


そう言うと、男は右腕に着けた黒い数珠状の装飾品を見せた。それは、漆黒に輝く黒玉(ジェット)のブレスレットだった。


「黒玉…….…まさか!おまえらは…!?」


ナイフを持った男は、相手の正体に気づいた。が、それと同時に…。


ドン!


という音と共に、ゆっくりと背中から倒れていった。男の眉間には丸い跡があり、近くにはゴム製の弾が転がっている。それがゴム弾であることを、イザベルはすぐに理解した。


(彼等は一体、何者?)


突然現れ、瞬く間に倒した黒装束の男達。この偶然の出会いが、彼女の人生に大きく影響していくことになる。

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