表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ジェット騎士団〜影の守護者たち〜  作者: 如月
第一章 絶望と脱却
4/23

見えない未来

「はあ、これからどうしよう…。」


イザベルはベッドの上で呟いた。彼女は今、宿の部屋にいた。部屋にはベッドが2つある。1つはイザベルが使い、もう1つは()()()()()()()()()()()()使()()()()()。だが、今はもういない。


「リディ…1人でうまくやっているのかな…。」


2人で立派な騎士となり、国の為に働く。幼い頃、何度も約束した。その約束を果たす為、2人で頑張ってきた。故郷を出て王都に行き、養成学校に入り、耐え難きを耐え、忍び難きを忍び、そして今年卒業した。ようやく、夢だった騎士になれる。昨日まで、期待が心を満たしていた。しかし、今は絶望と空虚が満たしている。何故自分だけが騎士になれなかったのか、誰がこんなことをしてくれたのか、怒りの疑問が、頭に浮かんでくる。しかしそれ以上に、親友との約束を果たせなかった悲しみが、上回っている。


「…っ!」


目が熱を帯びる。また再び、泣きそうになる。しかしイザベルはぐっとこらえ、涙を拭う。そしてベッドから起き上り、前を向く。


「いつまでも落ち込んでいては駄目!これからのことを考えないと!」


そう決心したイザベルは荷物をまとめ、宿を後にしたのだった。

宿を出たイザベルは中心街からはずれた通りに座り、落ち込んでいた。通りは人々が歩き、いつもの平和な風景を見せていた。


「はぁ〜…。」


深いため息をつく。これからどうすればいいのか、全く分からなくなっていた。仕事を探そうと求人のお店に行ったりしたが、全てお断りされてしまった。いっそ故郷に帰ろうかと思ったが、家族の悲しむ顔が浮かび、それもやめた。何よりも…。


「やっぱり諦めきれないよ…。」


これまでの人生を全て騎士になる為に費やしてきた。しかし昨日、その全てを否定された。唐突に、納得のいく説明もされず。そう簡単に見切りをつけられるわけがない。騎士になる夢は彼女の足枷となり、彼女の負担となってしまった。


「どうしよう…。」


先の見えない未来に、イザベルは絶望感を抱いていた。いっそのこと、命を…。彼女の頭に、危険な考えがよぎった。

その時。


「きゃ――――――!」


「今のは!?」


突然、どこから女性の叫び声が聞こえた。声といっても非常に小さく、周りの人々には聞こえていなかった。ただ1人、イザベルだけが気づいた。


「さっきの声、何かを恐れる声だった。助けに行かないと!」


さっきまで絶望に染まっていた顔は生気に満ちていた。落ち込んでいた彼女の心に、再び騎士道精神の火がついたのである。


「声はあっちから聞こえた。そんなに遠くはないはず!」


イザベルは声のする方を見た。その目は鋭く、手には拳ができていた。そして彼女は力強く駆け出し、走っていった。彼女の心から、絶望や悲しみは消えていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ