発表
入団式が終わり、イザベル達は場所を移動して本部の外に出た。向かった先は入り口前の広場。いよいよここで、配属される騎士団が発表される。新人の騎士達は緊張、不安、そして喜びが顔に表れていた。
「ああ、どの騎士団に配属されるかな!?ダイヤモンド騎士団だと良いなぁ!」
「…イザベルはどうしてダイヤモンド騎士団にこだわるの?」
「えっ?ああ、それはね…。」
イザベルは養成学校3年目にダイヤモンド騎士団へ仮配属された時のことを語り出した。
「私がダイヤモンド騎士団に仮配属された時にね、とても親切に教えてくれた先輩騎士がいたんだ。カッコよくて、頭が良くて、私が目標にしている人。もし私が騎士になったらあの人と一緒に働きたいって、ずっと思い続けていたんだ。」
「…そうなんだ。」
イザベルが目を輝かせて語る一方で、リディアーヌは目を細め、口を曲げ、面白くないという顔をした。ちょうどその時、黒い髪の男が前に現れた。
「静粛に!これより、配属される騎士団を発表する!各々、見落とさぬように。」
男が場を静め、手に持っていた紙を掲示板に貼り出す。同時に騎士達が一斉に近づき、自分の名前を探し出した。各騎士団によってグループ分けしてあり、一目で自分がどの騎士団に配属されるかが分かる。
「やった!エメラルドだ!憧れのシナプス先輩と一緒だ!」
「ブラッドストーンか…。アメジストに入りたかったなぁ…。」
「やったわ!ガーネット騎士団よ!アメリは?」
「私もガーネットよ!一緒に働けるね、エルザ!」
「げっ、ラピスラズリかよ!またあの人と一緒なのか…。」
希望した騎士団に入れた者、逆に入れなかった者。友達と一緒の騎士団に入れた者。苦手な先輩騎士がいる所に入った者。各々が自分の所属する騎士団を確認し、一喜一憂した。そしてイザベルとリディアーヌは…。
「えっと、私の名前は…あっ!リディの名前あったよ!」
「え、どこに?」
「ほら、ここ!」
イザベルが指を指す方向にリディアーヌは目を向けた。
「リディアーヌ・べアール」・・・・・ルビー騎士団
「あった…ルビー騎士団か…。」
「確か3年の時に入ったんだよね?慣れたところに入れたなんてラッキーだね!」
「う、うん…。私はイザベルと一緒ならどこでも…。」
「ん?何か言った?」
「ううん、何でもない…。それより、イザベルはどこに配属されたの?」
「そうだった!えっと、私は…。」
イザベルは掲示板に目を凝らして自分の名前を探した。が、どこを探しても彼女の名前は見つからない。
「あれ、おかしいな?私の名前がない。ごめん、リディも一緒に探して?」
「分かった。」
リディアーヌも掲示板をくまなく見る。しかし、それでもイザベル・コーランの名前は見つからない。
「どうして?何で私の名前だけないのかしら?」
「きっと何かの間違いだよ。さっきの人に聞いてみようよ。」
「そうだね、聞いてみよう。」
イザベルとリディアーヌは紙を貼った男の元に向かった。男は掲示板の横に立ち、様子を見ていた。
「すいません!」
「何か?」
男はしかめっ面でイザベルを見た。
「あの、私の名前だけが無いのですが、何かの間違いでしょうか?」
「名前は?」
「イザベル・コーランです。」
「イザベル・コーラン…。」
男は手に持っていた書類をめくり、イザベルの名前を探し出した。待っている間、イザベルの心に不安が生まれる。
「大丈夫かな、私…。」
「大丈夫だよ。イザベルなら絶対に…。」
その時、男の手が止まり、ある一点に目を向けた。
「あった、イザベル・コーラン。君は…なるほど。」
「あの、一体私は…?」
イザベルが言い終わる前に、男は口を開いた。この時男の放った言葉が、彼女の運命を大きく変えることになる。
「イザベル・コーラン。君は、騎士団に入れない。」