女王が二人誕生(?)しました
「あなたたち!私は魔法界の女王よ!私の言うことをちゃんと聞きなさい!」
あなたがいま読んでいるのは「恋を夢見ない少女の物語」で間違いありません。
二日目になり、みんなが少しずつ心を開いて、クラスメイトを受け入れようとしている。もちろん私も含めて。
この国では子供向けドラマがある。魔法少女がCGで変身して、いろいろやるドラマだ。
その中で、一番美しく、力の強い登場人物が魔法界の女王様なのだ。
先程の台詞の発生源はサラだ。
彼女は金持ちの家の所謂お嬢様で、私たちの寮のルーム長なのだ。
ティナが子供向けのあま~い糖衣で包まれた栄養材を食べているのを見て、おねだりをしているのだ。
まあ、お姫様扱いされていた彼女ならば、おかしくはない発言だし、みんな彼女を相手にしなくてもいいんだけれど、彼女、目がつり上がっていて、見た目が怖いの。
結局彼女はティナから栄養材を五粒ほど奪っていってしまった。
これから同じ部屋で暮らしていかないといけないなんて......
数週間後、サラのおねだりは私のところへやって来た。
“事件”は、放課後、教室で起こった。
週末に、いい子にしていたからと叔母さんからかわいい蝶々形のペンダントをもらったんだ。
これはあの子供向けドラマの変身アイテムを模倣したグッズなのだ。
自称女王様は、自分にはないからと、どうやら不満らしい。
「あなた、この国の人間じゃないんでしょ?でしゃばってるんじゃないよ!私にそれを寄越しなさい!」
こんなことになるだろうと思って、わざわざ教室に置いたって言うのに、何で見つけちゃうんだろう。
ティナたちはあなたのことが怖いかもしれないけれど、私は別にそうではない。サラよりも怖い人を知っているから、何も怖くない。
それに、彼女の言い分には少しカチンと来た。私の今まで育ってきた国を侮辱するなんて、許さない!
「なんとか言ってみなさいよ!国のサイズと同じで、小さい人ね!バカでしょあなた、私の言っている意味がわからないの?あぁ~そうだった。あなたまだまともに喋れないらしいじゃない?なるほどなるほど~口がないのと一緒なわけだ~んじゃ、とりあえずこれは私が預かるわ!」
イライラして、黙っていたらとんでもない解釈をしていたらしい。
授業の合間の放課のため、先生は誰もいない。が、クラスメイトは全員こちらを見ている。
にもかかわらず、彼女は手を出した。私の手からペンダントを奪おうとしたのだ。
バシン!
小さいはずの音が、この瞬間、この教室では大きく響いていた。
彼女が伸ばしてきた手をそのまま手をあげて叩いたのだ。
「な、なんてことをするのよ!痛いじゃない!」
と、サラは涙目で訴えてきた。
「あなたが人のものを無許可で奪おうとしたから、それを止めるために手を挙げただけだけど」
「な、生意気!」
彼女はもう一度手を伸ばしてきた。
「イイイイイイイイイイタイイタイイタイ!!!ごめんなさい!ごめんなさい!もうやめて!!」
私は彼女の伸ばしてきた手をつかんで、上へ挙げた。私は少しだけ、平均より背が高いのだ。
「もう二度と奪わないようにね」
チッ
嫌そうな顔をして、舌打ちをして離れていった。
「すげぇ」
「つえぇな」
「おいおい、マジかよ......」
「女王だ......力の女王だ」
「ぼ、ぼぼぼ、暴力女!!」
このように、第三者として受けとる想いは様々で、この日、私は「暴力の女王」という全く望んでいない呼ばれ方をされるようになった。主に男子から。
これ、暴力とはまた少し違うんだけどなぁー
いつも短くてすみません!