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プロローグ

自称初投稿兄貴です。

誤字脱字がありましたら教えて下さい。

 Full Dive Massively Multiplayer Online Role Playing Game――縮めて『FDMMORPG』が初めて市場に登場し、世界的なブームを巻き起こしたのは、今からおよそ30年前、2069年の事だった。

 仮想現実空間という革新的な技術が可能にした、脳波による超直感的な操作感と、まるで実際にゲームの世界の中に飛び込んだかのようなリアルな没入感。

 それらの今までになかった新しい要素が人々に大ウケし、爆発的な流行となったのである。


 それから間も無くして、世界中のゲーム会社がそのトレンドの波に乗るべく、フルダイブシステムを利用したソフトを次々と売り出し始めた。

 有名どころで言うならば、スルエニの『ファースト・ファンタジー』やカプキンの『モンスター・ハント』などが挙げられるだろうか。

 その競争は熾烈を極め、極一部の企業が大成功して莫大な利益を得る傍、数多くの企業が膨大な借金を抱えてそのまま倒産していった。


 しかし、そんな激戦を生き抜き、最も人気を博したのは、意外にも当時全くの無名だったゲーム会社、クロノス社が苦節十数年に渡る研究と開発によって創り出したオンラインファンタジーゲームだった。

 その名も『Fallen Utopia Online』。

 このゲームが大売れした要因についてはいくつか考えられるが、中でも一番特徴的なのは、やはりその斬新なゲーム性だろう。


 『強者どもが集う世界、信じられるのは己の剣のみ。生きたければ、斬れ』――その物騒なキャッチコピーの通り、『Fallen Utopia Online』の世界には、魔法やスキルはおろか、経験値やレベルなどのRPGの基本と言われている概念すら存在していなかった。

 あるのは装備品によるある程度の能力の向上と、純粋なプレイヤー個人としての技量のみ。

 そのいささかやり過ぎとも言える極端なゲームバランスが、逆に多くの人々の関心を引き、結果として大ヒットに繋がったのだ。



 「ほらほら!天音!こっちだよこっち!」


 「ちょ、ちょっと待ってよ美琴(みこと)ちゃーん!」


 「もう!ボサッとしてると置いてっちゃうよー!」


 「だから待ってってばー!」



 発売から5年経った今でも、その人気は留まるところを知らない。

 それどころか、頻繁に行われるマップの更新や継続的な広告によって、アクティブプレイヤー数は今もなお増え続けており、先日ついに1000万人を突破。

 その急激に増加し続けるユーザー数に対応するため、近々大規模なアップデートが行われると公式に告知されるほどの愛されっぷりである。

 今ハマっているゲームは何ですか、と街行く人に質問すれば、恐らく10人に1人がこのゲームの名前を口に出す事だろう。

 しかし、栄光の裏には得てして陰があるものだ。



 「はぁ……はぁ……や、やっと追いついた……」


 「あはは……ごめんごめん、つい興奮しちゃって」


 「もう……全く、子供じゃないんだから」



 このゲームには、ある黒い噂があった。

 といっても、それは酷く信憑性が低く、また現実的でもないため、あるいは噂というより、むしろ都市伝説と言った方が正しいかもしれないが。

 その噂とは、『プレイヤーがゲームに取り込まれて消える』と言うものだ。


 噂の出所は複数あるが、一番有名なのは2年前の『マリー姫消失事件』だろう。

 これはかつての有名ギルド『蒼の騎士団』のリーダーだった『マリー姫』というプレイヤーが、公式大会の最中に忽然と姿を消し、それっきり永遠にログインしなくなってしまったという事件だ。

 彼女――彼かもしれないが――は、24時間のうち16時間をゲームの中で過ごすような廃人だった。

 それ故にこの突然の失踪は不自然極まりなく、それを訝しんだプレイヤー達の間で『プレイのやり過ぎで意識がゲームに取り込まれてしまったのではないか?』などという仮説が作り出されたのである。


 最も、先ほども言ったように、これは根拠も証拠も何も無い、ただ実しやかに囁かれ続けているだけの噂にすぎない。

 そもそも、いくら作り込まれたリアルな世界だと言っても、所詮はただの仮想現実空間なのだ。

 どれだけ奇妙で恐ろしい事が起ころうとも、それは一種のバグに過ぎないし、ゲームの中で起こった事が現実に反映されるなどあり得る筈がない。

 結局の所、面白おかしく話題にする事はあれど、誰もこの噂を本気で信じてはいなかった。



 「でも、確かに凄いねこのゲーム。なんて言うか、ホントに現実と全然変わらない感じで……」


 「でしょー!?キャラメイクも自分そっくりに出来るし、それに五感も痛覚以外完璧に再現されてるのよ!マジでヤバイでしょ!?」


 「うん、そうだね。ゲームとかあんまりやった事ないけど、確かにコレはちょっと楽しいかも」


 「ふふん!驚くのはまだ早いよ、天音!これからもーっと楽しくなるんだから!よし、それじゃあとりあえず町に行こう!私に付いてきなさーい!」


 「あっ!だ、だから走らないでってばー!」



 だから誰も気がつかなかったのだ。

 この日、2人の少女が時空の歪みに飲み込まれ、世界から姿を消してしまった事に。

 法則から倫理観まで、何もかもが地球とは異なる世界に転移してしまった事に。

 誰も……そう、本人達でさえも気がつかなかった。

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