1ー3 メラン
便利ツール?の登場
「だれ!?」
「はい?」
頭の中にの声が響き思わず返事をしてしまう。お姉さんには聞こえてないらしく疑問符を浮かべている。
『主、私はコートに備わっているサポートシステムなのです。私の声は主以外に基本的には聞こえませんよ。』
頭に響く声は元気な女の子のように聞こえる。コートを着たら聞こえる様だが、端から見ると独り言を言う怪しい人である。
「どうかしましたか?」
お姉さんは不思議そうにしているが、なんと答えたものだろうか?
『主!そこの車掌さんになら私の事を伝えても大丈夫ですよ。理解者ですから』
…理解者?
「…車掌さん。このコートを着たらサポートシステムって声が聞こえたんですけど」
恐る恐る伝えてみる。
「あー、なるほど。最初はビックリしますよね。私も驚きましたし。ですがとても有り難い存在ですよ」
ウンウンと頷いているお姉さん。話を聞くとお姉さんの被っている車掌帽子にもサポートシステムが備わっているらしい。付き合いも長く、仕事をする時の大事な相棒になっているようだ。
「っと、そろそろ仕事しろって注意されたので、私は行きますね。何かございましたらお呼び下さい」
流石に話す時間が長かったのか相棒に怒られたようだ。お姉さんはそのまま次の車両に向かって行った。
「それでサポートシステムさん?」
『主!私を呼ぶときは思念で伝わりますので、声に出す必要はありませんよ』
「思念って頭の中で喋りかければいいの?」
『概ね違いはございません!』
そのあとしばらく話をしてみていくつか分かったことがある。
一つ目はサポートシステムさんは型番で管理されていたため名前がなく、持ち主になった者が新たに名前を決めること。名前は大事なので落ち着いてから決めることにする。
二つ目はこのコートを着用している限り様々な恩恵を受けられ、特殊な機能を使えるようになること。
三つ目は自分をこちらに招待してコートを贈ってくれたのはやはり神様らしく、これから向かう所で誰かと会って欲しいらしい。しかし誰と会えば良いのか、会ってどうすれば良いのかは聞かされていないらしい。
『主!そろそろ私の名前を決めて頂きたいのです!』
これからどうするか悩んでいるとワクワクとした声が聞こえてきた。確かに他にやることもないので考えてみる。
『名前を頂けるだけで嬉しいですが、変な名前を着けたらイジけますのでご注意を!』
ネーミングセンスは無いのだがどうするか。型番から取るかな。
「以前は型番で管理されてたって聞いたけど何番だったの?」
『申し訳ないです主!型番は守秘義務に含まれるので教えられないのですよ』
「守秘義務?」
『以前にその情報が漏れたのですが、私のようなものがどれほど管理されているのかばれてしまい保管場所から強奪されたことがあります。いくつかはまだ行方不明なので情報漏洩にはピリピリしてます』
神様たちも大変なようである。
「それじゃどうするか…、黒いからそこから取るかな」
黒、ブラック、ノワール、シュヴァルツ、ネーロ、メラン…
「メランはどうかな?ギリシャ語の黒」
『メラン!良いですね~、今から私はメランを名乗ります!』
サポート、いやメランはとても嬉しそうにしている。イジけなくて良かった。
『お客様にお知らせします。まもなく本線はアルファベータ駅に同調いたします。お降りの際はお荷物の忘れ物がございませんようご注意下さい。繰り返します。お客様に……』
メランとの会話をしていると、先ほどのお姉さんの声が車内放送で聞こえてきた。乗車券に書かれた駅にもうすぐ到着するらしい。
『主!いよいよですね!』
『あぁ、いよいよだ!』
メランはワクワクしているようで声が弾んでいる。そう言う自分もワクワクする気持ちが抑えられない。
そうしているうちに窓からの景色も変化していた。まるで宇宙空間のような風景に少しずつ霧がまとわりついてきており、気がついた時には真っ白になっていた。
いよいよ到着