1ー2 手紙
車掌のお姉さんの説明回。
「実は行けちゃうんです!異世界!」
ガタンゴトンと車両のリズムをつんざくようにお姉さんの声が響く。どうでもいいが車掌さんが大声を出して良いのだろうか?
「最も普通の人間の方にはこの鉄道に乗る事は出来ません。基本的にはあなた方で言う神様や人の身を超えた仙人様などが手続きをして申請が通らないといけませんから。なので乗客はそんなに多くはないのが悩みです…」
お姉さんは残念そうにする。
神や仙人が鉄道に乗ってるのはとてもシュールな絵になるがそんなことよりも気になることがある。
「ならここは異世界なの?あと俺、何でここにいるの?神様でも仙人でもないんだけど」
少年も神様のミスなどで異世界転生する話は良く読んでいるが今回は少し違うようだ。神や仙人とも知り合いにはいない。
「ここが異世界と言うとちょっと違います。正確には異世界と異世界の間に存在するエネルギーがある空間ですね。ちょっとカーテンを開けてみてください」
今のこの車両はすべての窓のカーテンがかかっており外の様子が伺えない状態だった。お姉さんに促され少年がカーテンを開けてみる。
「おぉ~~!」するとそこには星空の様な風景が広がっていた。
「すごい!日本でみた星空より何倍もきれいだ」
「宇宙空間に惑星があるのを想像してもらえれば分かりやすいかと。惑星が異世界で今は宇宙空間を進んでいるようなものです。あそこに虹色の雲のようなものが見えるのがわかりますか?」
お姉さんが指を指す方に目を向けると自動車ほどの塊が星空を漂っている。テレビで見たことのある七色の綿菓子みたいだった。最も食べた事はないが…。
「あれが世界から溢れたエネルギーの塊です。あれが沢山集まると世界の卵になります。卵の状態からちゃんと羽化するかバラバラのエネルギーになるかはその時次第ですがね」
お姉さんは得意気に説明をする。要するにこの鉄道は宇宙船なのだろう。他の惑星に行くのに大変なのはどこも同じようだ。
「もうひとつの疑問は恐らくその手紙に書かれていると思います。読んでみてください」
少年宛の封筒には先ほどお姉さんに渡した乗車券の他に折り畳まれた手紙が入っていたが、まだ目を通していなかった。
「じゃあ早速………ん?」
少年は手紙を開き内容を確認しようとしたが、書かれている文字を見て怪訝な声をあげた。
「どうしましたか?」
「……読めないです」
「……はい?」
「日本語だと思うけど…達筆すぎて読めない。」
手紙には歴史の資料に載っているような文字が墨で達筆に書かれており、一介の学生が読める代物ではなかった。唯一、下の方に小さく追伸が鉛筆で書かれており、そこは読むことが出来る。恐らく別の人が書き足したものだと思われた。
肝心の本文が分からなければ意味がないだろうに…。
「ちょっと見せてもらってもよろしいですか?」
読めないと言われるのは予想外だったらしいお姉さんに手紙を渡してみる。読めるのだろうか?
「…ふむふむ、なるほど。分かりました!」
「え!?」
まじで読めたの?このお姉さんすごい!
「はい!書かれている内容は、『追伸、お詫びと言ってはなんですが、便利なコートをプレゼントします。いろいろと機能が付いておりますので、是非役にたたせて下さい。身につければ分かるはず!』と書いてあります!」
少年は座席に座りながらも、コケそうになる。
「追伸のところは分かるので本文の方を読んでもらえますか?」
「あー、すみません。本文は読めませんね。えへへ」
先ほどの称賛のセリフを返して欲しい…。
「まぁとりあえずですね。手紙に書かれている通りコートは受け取って下さい。何か分かるかも知れないですし」
誤魔化すかのように提案をするお姉さん。まぁ他にすることもないので、コートを着てみる。
『……認証コードを確認しました。はじめまして我が主。』
頭の中に声が響いた。
ちょっと短いけど、無理しない投稿。