22時54分の流れ星
今日も僕は、走る。
役立たずな僕は、走る。
僕が役立たずなのは、一人の例外もなく誰しもが認める所である。
当然、僕自身もそう思うし、彼もそう思っているに違いない。
こうする事に、果たしてどれだけの意味があるのか。
僕は役立たずだ。
なぜならば、僕の中には誰もいないからだ。
煌々と照らし出された僕のお腹は空っぽで、恥ずかしくて死にたくなる。
それでも周囲に見せびらかすように、明かりは灯り続ける。
「どうだ! 僕は役立たずだぞ!」
暗がりの中ではいよいよそれが悪目立ちする。
そんな事、知られたくないのに。
きっと誰の役にも立たない。
誰も僕を必要としない。
端っこの奴は良いな、特別な名前までもらって。
たった一つ違うだけで、こんなにも扱いが違うなんて。
僕は、僕はなんて中途半端なんだ。
それでも僕は、走り続ける。
それが僕の役割だから。
誰一人僕を必要としていなくても、それが僕の日常だから。
ただ一つ、僕の身勝手な願いだけを乗せて走る。
あぁ、どうか誰の目も引きませんように!
イヤな事があった日の帰り道は、いつだってブルーだ。
今日も怒られた。それもたくさん。
人よりも要領が悪く、ドジで、覚えも悪い。
そりゃ怒られるよって話だよね。
良い事があった日もそうでない日も、同じ道を歩く。
そうしないと家に帰れないから。
僕の気持ちと同じように、道は真っ暗。
人の気配もまるでない。
きっと明日も良い事なんて無い。
昨日もそうだったんだから、きっとそうだ。
ふと、光が視界の端を過ぎる。
視線を上げると、流れ星が時速80kmで流れていた。
ガタンゴトンと身を揺らしながら流れていくこの明かり。
僕は勝手に「22時54分の流れ星」と名付けている。
毎日同じ時間に流れていく。
良い日も悪い日も。
誰かにそう、望まれているんだろうな。
僕はこいつが羨ましい。
少しでも幸運がもらえるようにと、いつも願い事をする。
明日は良い事ありますように。
どうか、どうか、ほんのちょっとでいいんです。
……いえ、多いに越した事はないんですが。
そんな下らない事を考えると、ほんの少しだけ心が軽くなる。
そうして僕は帰路につく。
また明日も、頑張ろうって思えるんだ。
……これは流れ星の御利益なのかな?
幸せが見つけられなくても、きっとそこには幸せはある。
どうか視点を変えて、見つけられますように。
という訳で、電車の擬人化でした。ただし、終電の一個前です。なかなか使われなかったりします。
田舎の夜。灯りなど無い道に流れる一筋の光。なかなか美しいものですよ。