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それでも平凡は天才を愛せるか?  作者: 由比ヶ浜 在人
六章 過去より今を(下)
75/113

エピローグ:下



 朝日が目に染みて、少しだけ涙がでる。


 あんなに泣き喚いたのに、この目はまだ泣きたいらしい。私の体ながら、酷く傲慢なやつだと苦笑する。


 私は、目的の人物が来るまで一人ベンチに座っていた。絶対、ここを通るという確信を持って座っていた。


 座りながら、この件について少し整理する。この後のことを考えたら、情報を整理することが何より望ましいと思われた。



 今回の発端は、私の家がめちゃくちゃにされ、凛さんの消息が途絶えたこと、そして弓弦さんが現れたこと。


  だから、勘違いした。単純に一つの事柄だと思っていた。そう、弓弦さんが復讐のために、行ったことだと。


 だが、そんな簡単な話ではなかった。もっといろいろなことに目を向けるべきだった。


 酷く頭が冴えている。度々起こっていた、ズキリと痛む頭痛も今はもう感じない。



 始まりから間違っていた。今回の件は、()()()()()だ。


 それを認識すると、全てが繋がって見える。


 何故、家が荒らされたのか。

 何故、監視カメラなんてものが家にあったのか。

 何故、弓弦さんが凛さんを誘拐したと言ったのか。


 田舎と違って雪がない大都会で、私は拳を握っては開く。変な汗が掌に浮かんでいた。


 そう、思い返せば、結構あからさまだった。それに気づけない私は、いや、気づくことをしなかった私は、ここまで踊る嵌めになった。地元からここまでで、かなりの額を出費してしまっている。請求書でも書いてやりたい気分だった。



 でも、結局、この流れは必然なのだろうとも思う。


 私は、堂島さんと対峙して。

 私は、白銀さんと対峙して。

 私は、漣さんと対峙して。

 私は、万城目さんと対峙して。

 私は、ラフィーさんと対峙の真っ只中だ。


 どう考えても、一人足りない。


 数が合わない。役者が足りない。


 ねぇ、そうは思いませんか。



「待ってましたよ」


 ()()()()



「んだよ、たっくだりーなおい」


 流麗な仕草で、濁流のような言葉を吐き出す彼は、6月の頭から私とともにいることが多くなった人物。


 自らをロリコンと名乗り、私の前に現れた人物。


 そんな訳があるか。今更ながらに、私は心の中で突っ込んだ。


 何処ぞの勇者かと思うほど、高そうな真っ白なコートと、真っ黒な革手袋をはめた彼は、ベンチの私に向けて、心底嫌そうな顔をした。


 その綺麗な顔が僅かばかりに歪むのが、また様になっていた。



「こっちはおめぇに用なんてねぇんだが」

「私にはあるんです」

「何しに来た」


 私は精一杯空気を取り込んで、彼を真っすぐ見つめる。


 もう決めた。腹を括った。言葉は、ビビッていちゃ伝わらない。



「凛さんを助けに来ました」



 救うことなんて、出来やしない。



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