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『てか、ちょっと待って。あたしはじゃあ何するのよ』


 一連の流れを説明した後に、思わず堂島さんが呟いた一言だった。



『一番大切な事をお願いしたいと思っています』

『って言ったって、あんたの策が上手くいけばあたしいらないじゃない。相手を煽って、それこそ物が飛んでくるような始末まで煽り倒して、特定した嘘つきカードをペットボトルのラベルに仕込んで、カードのチェンジングでしょ? 大事なことは全部終わってる』

『えぇ、大事なことは全部終わってます。煽り倒すのは御剣さん以外の適任を私はしりませんし、サークルに潜り込んでのカードのチェンジングは、今までこっちに接点なかった白銀さんしか出来ません。私と敵対していた事実は、教授も知っているでしょうし、だからこそ入りやすい。一万人っていう規模なら尚更、埋もれやすいでしょう。しかも、敵対した理由が、彼個人のもので、サークルとは一切関係ないという点も加味すれば、これ以上の人選はないと思います』

『じゃあ、あたしは何で呼ばれたのよ』

『大事なことは終わっても、大切なことはこれからなんです。万城目さんにお願いしたこともそれの伏線です』


 万城目さんにお願いしたことは、ラフィーさんだけを信じ込ませること。いや、万城目さんにお願いしたことだけでなく、私が三人にお願いしたことは、本当はこの後の伏線だ。


 本当の主役は、彼女に他ならない。



『ゲームをしてあげてください、ラフィーさんと。全力で』


 決着をつけるのに、野暮な連中を引き払っただけ。私が残るのもゲームの性質上、最終場面には三人の人物が必要なだけだからだ。



『それがきっと、』


 言葉は続かなかった。堂島さんの声が私の声を押しとどめた。



『ごめん、()()()()()



強い力を持った言葉だった。





 静寂だった。


 体育館のエアコンの音だけが木霊する。


 一番先に動いたのは、今回の嘘つき、万城目さんだった



「じゃあ、わたしは一足先に会場出てるねー」


 万城目さんは、フワッとした足取りで体育館の入り口に向かう。



「万城目さん、その、ありがとうございました」


 一番複雑な想いを抱えていたかもしれない彼女に私は、そんなありきたりな言葉しかかけられない。

 それでも万城目さんは、どこか吹っ切れたような顔でいつもの調子を外すことなく、私に言う。



「うん、いいよー。白銀くんと合流して待ってる」

「白銀さんにも」

「わかってるよー、伝えておくねー」


 万城目さんは、一旦立ち止まる。そして、振り返り拳を突き出して言うのだ。



「後は、ガンバ、だよ」

「はい」


 その少しだけ幼い仕草に、私はどうしようもなく感謝した。



 四番を指摘したのは、私と堂島さん。


 そして、


 ()()()()()()()()()()()()()()



 万城目さんは、私のお願いしたことを完遂し、この場を作りあげてくれた。

 もう、策などない。

 堂島さんとの結託もここまで、ということで話はついていた。



 ここからが、本当に純粋なゲームだった。



 この場に辿り着くのにどれほどかかったのだろう。全ては6月に始まり、そして大学一年の終わりかけという時期まで進行した。であるのならば、この一年間を通して、そこまでの遠回りしてまで、私が、私たちがやろうとしたこと、得ようとしたものは一体なんだったんだ。



 言語化しようのないその問題を私は、堂島さんにこの場で託した。



「シェルト、()()()()()をしよ」


 堂島さんがやってきたことは、友達の想いに気づくことが出来なかった無意味なものだったのか。

 ラフィーさんがやってきたことは、友達を守ろうとして傷つけるだけの無意味なものだったのか。


 なら、それに巻き込まれた私は、彼女たちにどのように解答すべきか。



「受けてたちます」

 

 ラフィーさんは、小さく返す。泣きそうな顔で、小さく返す。



 これは、答え合わせだ。

 私たち一年間の答え合わせだ。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 御剣さん大好きです ずっと更新待ってました…!
[良い点] 随分と懐かしいタイトルが…待ってたよ。 [一言] 白銀さんかっけー… ちなみに嘘つきの番号は現状の文でこちらも推測出来たりします?
[良い点] 御剣さんまじで勇者。かっけー。 個人的にはそこまで味方の出番なかったけど、白銀さんのキャラも大好きです。 [一言] 待ってました!待ってました!! 更新していただいて本当に嬉しいです! 2…
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