⑧共感度8
本当に嬉しそうなA組の笑顔に囲まれて、いかだ流しは終わった。
次はすぐに800メートル走だ。
すぐに入場門に戻り、即効で入場する。
1年女子は、走る順番が1番最初なんだ……。
「唯香、若菜ファイト〜!」
学級委員としての着順判定係の明日ちゃんが、近くから声をかけてきた。
緊張しながらもうなずいて見せる。
得意な中長距離。
短距離じゃ良いところを見せられないから。
だから、絶対に勝ってみせる!!
「位置について」
「バン!」
一斉に走り始める。
わたしは、後からスピードをあげていくタイプ。だから、最初はあまりとばさない。
今のところ、6人中3位。
前には、若菜と実梨ちゃんがいる。
「若菜ファイト〜!」
200メートル走ってスタート地点に戻って来ると、ひときわ大きい明日ちゃんの声援が聞こえてきた。
「実梨ファイト! 唯香ファイト〜!!」
ちゃんと実梨ちゃんのことも応援している。
2周目は順位変動ナシで走り切り、3周目。
実梨ちゃんと若菜の速度がどんどん落ちてきた。
わたしはどんどんスピードを上げ、トップに立った。
「唯香〜!! 頑張れ〜!!」
聞き慣れた声の全力の応援。
あと1周。このまま走り切る!!
ラスト1周だと告げる鐘を、生徒会副会長の3年生が鳴らした。
「若菜ファイト〜!!!」
若菜が近くにいる。
息遣いと足音、気配でそれが分かった。
イヤだ、イヤだよ。絶対に勝つんだから!
あと100メートル。
あと80メートル。
ウソ。
若菜に抜かれた……。
でも、もうこれ以上スピードを上げることはできない。
わたしは若菜が白いゴールテープを切った直後、2位でゴールした。
トラック内に入ると、みんなも次々とゴールしてきた。
「お疲れ様」
4位係の明日ちゃんが声をかけたのは、実梨ちゃん。
2位のところに並ぶと、先生がコップに入ったスポーツドリンクを渡してくれた。
熱い体に冷たいスポーツドリンクが染み渡る。
ふわふわしていた意識が、戻って来た。
ああ、1位とれなかった……。
でも、A組ワンツーフィニッシュだもんね!
そういう考え方をすれば楽になれる。
「お疲れ様。すごかったよ!」
わたしと若菜に笑顔で声をかけてきた明日ちゃん。
返事をするのも辛いので、ほほ笑んでうなずいて見せた。