⑦共感度7
「あ。次、姫里さん走るんじゃない?」
B組美化委員の華波が言った。
明日ちゃんと華波には何の共通点もないし、しゃべったこともないはず。
だけど、明日ちゃんの走る能力には、みんなが注目していた。
「明日ちゃんファイト〜!」
一瞬、明日ちゃんがこちらを向いて笑ったような気がした。
生徒応援席からは、応援の声がものすごく聞こえる。
「位置について」
「よーい」
「バン!」
ピストルの音。
1年女子、150メートル走。
すごい、すごすぎる……。
圧倒的な速さを誇るのは、もちろん明日ちゃん。
「姫里さんすごい……」
華波も見とれていた。
そのままぶっちぎりの1位でゴール。2位でゴールした麗羅ちゃんと、笑顔でハイタッチを交わしている。
すごいよ、赤団(A組)がワンツーフィニッシュ!!
「A組、ワンツーフィニッシュ多くない?」
「うん。足速い人がそろってるね」
陸上部の2年女子エースである柚羽先輩も、誰もが認めるM中陸上部エースの祐梨子先輩も、2人とも赤団だ。
1年女子エースの明日ちゃんもいる。
でも、1年男子ツートップの陵河くん(明日ちゃんの好きな人ね!)と川中が2人ともB組なのが辛い……。
「1年生、入場門に行ってくださ〜い」
係の生活委員が呼びに来た。
「あ、もういかだ流しか」
入場門まで歩いて行くと、A組のみんなに囲まれている明日ちゃんがいた。
「唯香!」
わたしのことを見てほほ笑んでくれる。
「150メートル走めっちゃカッコ良かったよ〜! 麗羅ちゃんもすごかった!」
「ははは。ありがとう」
「明日奈がいるとウチは目立たないでしょ」
麗羅ちゃんが笑う。
「何言ってんの」
明日ちゃんがふざけて麗羅ちゃんを軽くにらむ。
「麗羅が一緒だったから、わたしも頑張れたんだよ」
「恥ずいこと言うねぇ」
「あはははは」
みんなで笑う。
ああ、良い雰囲気。
この調子だったら、学年種目のいかだ流しも頑張れるよね!
わたし達A組は、いかだ流しは練習ではいつもビリ。
男子は速いんだけど、女子が遅いんだよね……。
入場すると、緊張感が高まってきた。
体育祭は大好きな行事。なんとしてでも勝ちたい!
「いっけーいけいけいけいけ赤団!」
後ろから、明日ちゃんが掛け声を始めた。
「いっけーいけいけいけいけ赤団!」
みんながそれに続く。
「おっせーおせおせおせおせ赤団!」
「おっせーおせおせおせおせ赤団!」
「いーけ!」
「はい!」
「おーせ!」
「はい!」
「あーかーだん!」
「ファイト〜!!」
男子、頑張れ!!
「もうそろそろ帰ってくるよ! 準備しよう!」
バトンタッチ。男子から、みふに棒が渡った。
みんなの動きがいつもより機敏な気がする。
夢中で土台を作り、みふが走り、あっという間にゴールした。
え、ウソ……。
B組は、まだゴールしてない……。
今までずっとビリだったいかだ流し。
本番で、A組は、2位を勝ち取ることができたんだ!!