⑥共感度6
体育祭練習に追われる忙しい日々はあっという間に過ぎ、暑さを感じるこの頃。
ついに体育祭当日になった。
美化委員の仕事として、朝から用具の準備と確認を行っている。
学級委員の明日ちゃんは、グラウンドの入口付近に立ち、生徒の誘導をしていた。
「おはようございます! こちらから周ってください!」
知らない先輩や仲良くない人にも、笑顔で、なおかつ聞き取りやすい声ではっきりとしゃべっている。
わたしだったら、仲良い人には言えるけど、先輩とかに対しては小さな声になってしまうだろう。
とにかく、あんなに堂々とはしていられない。
美化委員の仕事は一段落したので、席に座ってボーッとグラウンドの様子を見ていた。
あ、伊那くんだ!
イスを持ってグラウンドに入ってきた男の子。
少し距離が遠いため声は聞こえないが、明日ちゃんに対して何か言っていることは分かった。
ああ、良いなぁ。
ただ見ているだけの自分が本当にイヤになる。
「え〜、生徒のみなさんは、グラウンドバックストレート側の生徒応援席に着席してください。学級委員、美化委員も自分のクラスのところに行ってください」
学級委員と美化委員は、それぞれ違うところが応援席となっている。
わたしが立ち上がって自分のクラスの後ろまで行くと、明日ちゃんも丁度来たところだった。
「どうすれば良いんだろ? 空気イス?」
「いや、辛っ!」
笑い合う。
大体の人がもう着席していて、かなり騒がしかった。
「きゃ〜! 姫さんカッコ良い! 唯香ちゃんかわいい!」
あはは。
瑞葉ちゃんのこのテンションには、いつまでたっても慣れないな。
瑞葉ちゃんと仲の良い、藍流ちゃんと葵ちゃんも苦笑している。
この3人は、とても明日ちゃんのことを好きな3人組。
わたしのことも「かわいい」とか、いっつも言ってくれるけど、明日ちゃんへの好意はそれとは比べ物にならない。
わたしが明日ちゃんと仲が良いから、そういうことを言ってくれてるだけだ。
「みんな、頑張ろうね!」
A組みんなに向かって明日ちゃんが言い、みんなが笑顔で応えた。
「優勝目指そう!」
「A組なら行けるっしょ」
一瞬にして、みんなを希望に満ちた笑顔にしてしまった。
ああ、本当にすごいな。
それに、明日ちゃんがいれば、明日ちゃんのことを信じていれば、本当に優勝できる気がする。
「唯香。絶対勝とうね!」
「うん!」
笑顔の明日ちゃんに対して、わたしも満面の笑みでうなずいて見せた。