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君がいてくれたから  作者: sakiko
4/16

④共感度4

明日の講演会のために、地下体育館に机とイスを運んでいる。

そこに駆り出されたメンバーは、テニス部、バド部、陸上部という謎メン。


「男子すごいよね。机一気に2個持ち!」

「ね。1個ずつ持ってくのもめんどくさいから、わたしも2個一気に持ちたい」

「明日ちゃんらしいな……」


テニス部の4人は本当に優しい。

陸上部での居場所がないわたしにも、優しく接してくれる。

陸上部の女子は、わたし以外が仲良すぎて、わたしの入る隙間がないんだ。

だから、先輩と一緒にいることが多い。

あーあ、ホント、明日ちゃんが陸上部に入ってくれたら楽しかったのに。


「あと2個で良いんだよね」

「あ、わたし持ってくよ!」

「わたしも持ってくね〜」

「じゃあ、途中で交代する!」


望亜ちゃんと葵ちゃんが1個ずつ机を持った。


「うわっ!」

「どうした!?」


先頭を歩いていた明日ちゃんが、壁に激突してもう一方の壁にも激突して隅に座り込んだ。


「びっくりした……」


明日ちゃんが見上げる先を見てみると、そこにいたのは、伊那くんだった……。


「え、姫里さん!?」


伊那くんも驚いて笑う。


「なんだよ今の反応!」

「リアクションすごすぎ」


萌乃ちゃんと望亜ちゃんがツッコんで、明日ちゃんも笑った。

今のリアクションはすごすぎたし、普通に痛そうだったぞ。


「大丈夫、姫さん?」


いたずらっぽく笑って、伊那くんが明日ちゃんの顔をのぞきこんだ。

今、「姫里さん」じゃなくて「姫さん」って呼んだよね……。

嫉妬で息がつまりそうになる。

わたしは「奥村さん」としか呼んでもらったことがないのに……。


「あ、うん」


明日ちゃんは普通に答えて、笑顔で立ち上がった。

伊那くんのこの優しい笑顔は、わたしに向けられているものじゃない。

この笑顔の相手は、明日ちゃんなんだ……。


「うをぁぁぁぁ!!!!!」


嫉妬心を吹き飛ばすため、突如叫ぶ。


「唯香ちゃんどうした!?」

「唯香ちゃん!?」

「奥村さん何があった!?」


みんながおどろいてわたしの顔を見る。


「あ、いえ……ごめんなさい……気合い入れで……」


わたしの悪いクセ。

周りのことを忘れて、自分の世界に入り込んでしまうことがある……。


「ふっ」


伊那くんが吹き出す。


「奥村さんって、おもしろいね」


え……?

伊那くんの笑顔を唖然して見上げた。


「おもしろいって言っただけで、なんでそんなに驚いてるの」


また伊那くんが吹き出した。

わたしは、お笑い系の明日ちゃんといるせいか、おもしろいと言われることがほぼない。

わたしってそんなにつまんない人かな、一緒にいておもしろくないのかなって傷つくことがある。

だからこそ、「おもしろい」という一言がとても嬉しかった。


「あ、いや……」


ああ、バカ。なんで伊那くんの前だとこんなに話せなくなるの!

しばし流れる沈黙。


「よーし、机早く運ぶぞ! フォ〜〜!!」


人目を気にせず明日ちゃんが叫び、葵ちゃんが持っていた机をサッと取り上げた。

叫んでることはカッコ良くないけど、その動作はカッコ良い。


「姫さんヤバい」


伊那くんの楽しそうな声を聞かないようにして、わたしも望亜ちゃんの持っていた机を持った。


「あ、ありがとう唯香ちゃん!」


望亜ちゃんが無邪気な笑顔で言う。


「うおおおお!! 行くでぇぇぇ!」


わたしも叫び、笑い声を上げる3人を背に、明日ちゃんに続いて走り出した。

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