③共感度3
給食前。
明日ちゃんと一緒に、水道に手を洗いに行った。
いつもより少し遅めの時間に行ったので、ラッシュは過ぎていて、人もあまりいなかった。
「明日ちゃん、最近陵河くんと話した?」
「ううん。全然」
少し悲しそうな明日ちゃんが、本当に可愛かった。
あ、伊那くんだ!
超ナイスタイミングで、伊那くんが水道に登場した。
「そうなのか。でも、良いよねぇ、好きな人がいるって」
「ちょ、唯香ちゃん! そういうこと言わないで!」
「え、別に良いじゃん。好きな人がいるとしか言ってないし」
「それもイヤなの!」
好きな人がいることだけでも、バレるのがイヤなのか……。
「伊那くん……今の、聞いてたよね……?」
明日ちゃんが顔を赤くして聞く。
「え、うん。好きな人がいるっていうのだけは聞いたけど……」
少し笑いながら言う伊那くん。
「伊那くんのバカぁ」
そう言って伊那くんの背中を叩くと、明日ちゃんは先に教室に戻って行った。
その明日ちゃんの姿を、伊那くんは楽しそうに眺めていた。
もしかして……伊那くんは、明日ちゃんのことが好きなの?
その悪い考えから逃げるように、わたしもその場を立ち去った。
「もう、明日ちゃん! 先に行っちゃわないでよ!」
「唯香ちゃんがあんなこと言うから……」
「なんで好きな人がいるってバレるだけでもイヤなの?」
「だって、小学生のころ、好きな人がいるって誰にも言ってなかったし……」
「マジで!?」
「うん。だから、中学入ってもバレたくなかった」
「え、ごめん……」
「いや、大丈夫。バレたらバレたでしょうがない」
やっと笑顔になった。
明日ちゃんは、リーダーシップもあって、いつもは積極的なのに……。
恋愛のこととなると、いきなり消極的になるんだな。
好きな人がいるってこともバレたくない、か……。
わたしはそこまで消極的ではない。
奥ゆかしい明日ちゃんは、とても応援したくなる。
明日ちゃんのタイプは、『恋が苦手でみんなに好かれる学級委員タイプ』だな。
なんでもできて、誰よりもみんなに好かれているのに、恋愛では自分に自信がない。
もっと自信があれば良いのに。もっと自信があれば、きっと両想いになれるのに。
そう思うけど、でも、わたしは、そういう明日ちゃんだからこそ好きなんだ。