①共感度1
「奥村唯香です」
1年A組の教室。
入学してすぐの恒例行事、クラス全員の自己紹介が行われている。
人前に出てしゃべることが苦手なわたしにとっては、地獄でしかない……。
一通り自己紹介をし終わって席につくと、安心して前を向く。
「え〜、姫里明日奈です」
その後何人かの自己紹介が終わり、明日ちゃんの番になった。
人見知りで打ち解けるまでに時間がかかるわたしに、明るく話しかけてきてくれたのが明日ちゃん。
前に立っても物怖じすることがなく、表情も明るく生き生きとしている。
良いなぁ……わたしも、あんな風になりたいなぁ……。
明日ちゃんは確かに身長が高いほうだけど、でも、1番目立つほどの身長ではない。
容姿だってそこまで華やかではない。
なのに、間違いなくクラスで1番目立っているのは明日ちゃんだ。
ああ、わたしももうちょっと目立ちたいな……。
目立つのは嫌い。
だけど、目立たないのも辛いものがあるよ……。
「では、委員会決めをします」
担任の竹中先生が言い、全ての委員会の名前を黒板に書いた。
わたしは美化委員がやりたい!
「まず、学級委員をやりたい人」
手をあげたのは、男子2人、女子は明日ちゃんだけ。
「じゃあ女子は姫里さんで決まりで良いですか?」
パチパチと拍手するみんな。
やっぱり明日ちゃんが学代か。
誰にでも声をかけれるし、知り合ったばかりのわたしでも、明日ちゃんに学代は似合うと思う。
その後、わたしは美化委員になり、委員会決めは終わった。
「唯香ちゃんは部活何に入るの?」
休み時間。明日ちゃんが話しかけてきた。
「わたしは陸上部」
「へえ、すごい! 走るの得意なんだ!」
「うん、長距離」
「長距離かぁ。わたしが1番できないヤツだ」
そう言って笑った。
「明日ちゃんは?」
「わたしはテニス部」
「テニスか。できるの?」
「ううん、全く」
テニス部か……。
陸上部に入ってくれたら、楽しかったのにな……。
明日ちゃんの屈託のない笑顔を見て、はっと気づいた。
わたし、こんなにすぐに心を許した人は、明日ちゃんが初めてだ。
入学して少ししか経っていないのに。
わたしにとって、明日ちゃんはもう、特別な存在になっていた。