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2話



「えっと・・・ここかなぁ??」


バスに乗ってからアナウンスと文字板を注意深く見ながらバス停で降り、そこからキャリーケースをゴロゴロと歩いてきた場所は住宅街。その奥にある、レンガ造りの大きな建物だった。

特にそれらしい看板は見当たらないけれど、スマホに写るものと同じ建物。

並べてみても、遜色はない。なら、ここが到着地点・・・つまり、これから6年間私が住む建物がここ、ってこと。


私は、恐る恐る入っていった。


「こ、こんにちはー??は、ハロー????」


両開きの扉をそぉっと片方だけ開けて入ると、そこにはキラキラとした貴族の屋敷が広がっていた。

大理石の床には光が反射され、汚れ1つなく。壁にはロウソクが掛かっていたり花が活けてあったり、高そうな額縁の絵が飾ってあったり。

中央には2階へ上がる大きな階段。両側には2つづつ木の扉がある。


「・・・映画で見た景色だ・・・。」

マンション、と聞いていただけに驚きは凄かった。


え、ここマンションじゃないの!?え、私は入る所間違えた??え、でも外観は同じだったし・・・え、へ!?お、おにいちゃーん!!


私は思わず建物の外にでると、お兄ちゃんに電話した。

待っているあいだは、早く早く早く早くはやくはやくはやくはやく!!!とそればっかりを繰り返していた。


『おー、着いたか??』

「おにいちゃん!!ま、マンションだと思ったら貴族の屋敷で!!外観同じだと思ったら違ってて!!私何処にいるの!?」


混乱した頭は台詞にまで影響を及ぼしたらしく、文の繰り返し。脈略がなかった。

とはいえ、そこは兄。爆笑するだけに終わった。


なんで妹がこんなに困っているのに、爆笑しているのかなぁ・・・??


『あ、あってるあってる(笑)そこであってるから(笑)

い、いま下に、おりるから(笑)ま、まってろ・・・(笑)』

「は、早くきてね!!!」


どうやら合っているらしく、私はまたそぉっと扉を片方だけ開けると中へ入っていった。




「んー??あ、柚鶴。来たね。」


左端の扉を開けてやってきたのは、黒い髪と瞳の純日本人。彼は眠そうな顔を一瞬にしてほころばせながら、片手を私に振ってきた。

多分普通の人は綺麗だなって見惚れるんだろうけど、今の私にはそんな余裕はなかった。


「か、かけいおじさーーん!!!」


お母さんの弟、つまり私とお兄ちゃんにとって叔父に当たるその人に私は飛び込んでいった。


緊張と、不安それとほんの少しの期待。それが、飛行機に乗るまでの私。

飛行機に乗って3時間した辺りで期待は疲労に変わり、こっちに着いてからはもう心労と疲労と不安だけ!!


「なんで迎えに来ないのー!!!!!!!!」


だから、臑を蹴るぐらいは許されると思うんだ。





私は結構力を込めて蹴った。靴は運動靴だし、疲労もこれまでにないってぐらいにはしているから、多分全力って言っても平常時の30%とかそれぐらいじゃないかな??ま、青タンが出来た所で・・・それで??なんだけど!!


「ゆ、ゆづる、・・・すねは、・・・痛い・・・。」

「とうぜんでしょう!?空港からここに来るまで・・・ううん、嘉慶さんが来るまで私は緊張と不安の連続だよ!?とちゅうで日本人の観光客とか、日本人のこっちに住んでいる人に偶然にも会わなきゃ、私完全に迷子だったんだからね!?

ちょっと聞いてる!!!!??」

「き、きいてる・・・」


臑を抑えながら、涙声の嘉慶さんを見てもなお怒りは収まらない。むしろ泣きたいのはこっちだっての。


「何話しているのかわからないし、空港を離れれば見たことのないお店ばっかりだし!!!お兄ちゃんも嘉慶叔父さんも電話は繋がらないし!!!」


アナウンスもちゃんと聞いていたし、文字板もちゃんと見ていたのに私が降りたのは目的のバス停よりも1つ手前のバス停だった。

そこで泣きそうになったけど我慢して時刻表を見れば次に来るバスは1時間後。待つよりも歩いた方が早い!と思って歩いた。


スマホのマップを見ながら歩いたのに、私は何故か迷子になった。

そのときに観光地から離れた場所に観光に来ていた日本人と、ここに住んでいるらしい日本人に出会って道順を教えてもらった。

それで、どうにかこうにか大通りに出たはずなのに、何故かまた迷子になった。

別に方向音痴でもないのに!!!

お兄ちゃんとか嘉慶叔父さんに迎えに来てもらおうにも電話はぜんぜん繋がらない。

結果、予定時刻よりも1時間以上遅い11時頃に私はここに着いた。


「あー!柚鶴!!なぁに叔父さんを泣かせてんだよ!」


中央の階段から、お兄ちゃんが降りてきた。こっちも美形。なぜならお母さんに似たから。嘉慶叔父さんとは系統が違うし、私にしてみたら全然なんだけどね。


「お、お兄ちゃんのせいでもあるんだからね!!!??」




結局、15分・・・30分?ぐらいそこで私たちは言い合っていた。管理人室からヴァロさんが「五月蝿い!!!」って怒鳴らなければ、たぶんまだ言い合っていた。


反省したし、あんなところで言い合いし恥ずかしかったけど、緊張は解消された。

不安も、お兄ちゃんと嘉慶叔父さんが住んでいる所なら、ね!




長い、ですかね??

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