私と山田くん
数学の時間が急に自習になった。
2組の佳奈ちゃんが、千里ちゃんがトイレで倒れていたと言っていたので多分その件だろう。
数学の先生は学年主任だ。倒れたということは救急車で運ばれるのだろう。だからそれについて行ったのかもしれない。
突然だか、数学の前野先生は厳しい。ものすごく厳しい。それはもうヤバいくらいに厳しい。前に琢磨が次の時間が体育で急いでいたからか、挨拶が適当になっていたことがあった。そのとき先生は、
「ありがとうごさいました。ありがとうごさいました。ありがとうごさいました。ありがとうごさいました。……」
と、みんなの前で100回挨拶をやり直させたのだ。
その時の先生はマジで怖かった。すごい怒鳴っていたし、琢磨も涙目だった。
そして今その光景が目の前にある。
自習で先生がいないからとみんな騒いだのだ。いや、騒ぎすぎだった。
私も先生は今日いっぱいいないのかな?、なんて思っていたが、ギリギリで戻ってくるとは思いもしなかった。
「オイ!!!どーいうことだぁ、ああん!?」
「「「………。」」」
「なんとか言えよぉ、ああっ!?」
「「「……ハイ…。」」」
「聞こえねぇんだよ!!」
ガンッッ!!(机を蹴った音)
(ヒイィイイィー!!)
もうやばいわ。先生マジヤバい。当然のことながら私も怒られている。琢磨のときみたいに1人に集中して怒ってるワケじゃないからまだいいが、1人だったら泣く。絶対泣く。
そういえば、山田くんも怒られてるんだよね…?
チラッ
!!
めっちゃ真剣に聞いてる!?どうしよう、私まったく真剣に聞いてないのに!!
(ほぅら私?山田くんもちゃんと聞いてるんだよ~?だからちゃんとしよう!?)
顔にでていたのだろう。
「……何ニヤニヤしてんだよ、寺田ぁ!!」
ターゲットにされた。終わったな、私。
「に、ニヤニヤしてないです!」
ぷっ…
小さく吹き出す音が聞こえた。チラリと上を見る。
(っ!!山田くん!?)
山田くんが吹き出してる。人が怒られてるところを笑うなんてっ!!
(フザケンナーーっ!!)
「……寺田ぁ……お前ちゃんと聞いてんのか…?」
やっべー!聞いてないーーっ!!
「……なんか、怒る気失せてきた…。」
よっしゃ、ラッキー!
おそらくみんな、私に感謝してるだろう。次体育だしね。(体育に遅刻すると前野先生と双璧をなす山口先生に怒られるのだ。)
「お前、これからはちゃんと話聞けよ?」
ええっ!?バレてたの!?
クラスで笑いが起こる。
顔が熱いぃーー!!
山田くんまでーー!?
ううぅ……。恥ずかしい。