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私と山田くん  作者: 佐倉ハル
5/7

第4話 アゴの話


 国語の授業中…


 「東出先生ってさー、アゴやばくない?」


 と、斎藤琢磨が言い出した。とたんにクラス中がシーンとした空気にきつまれる。


 (バカ!お前はバカなのか!?みんなふれないようにしていたのに!!)

 

 東出先生とは、東出賢治といい、社会の先生で4組の担任をしている。ベテランの45歳で、とてもおもしろい先生なのだ。ちなみに、うちは3組だ。


 先生は、アゴがとてもしゃくれている。おそらく、鼻とアゴに指を当てても唇が指につかないのではないかというくらいにはしゃくれている。年はとっているが、顔はけっこうかっこいい方だろう。ただし横から見なければの話だが。


 「…斎藤…。」


 (ああぁあぁーー!!絶対起こられるでしょ!琢磨のバカたれーー!!)


 琢磨は4月に転入してきたばかりだ。だからそのあたりにはまだ疎いのかもしれないが、このくらい察しろや!、と言いたくなってしまう。


 「俺、アゴのこと、久しぶりに言われたわー。」


 ………。あれ、?


 「いやー、俺さ?小中高、ずっとアゴのこといじられてきたワケ。ずっと言われなかったから忘れかけてたんだけど…そっか、やっぱそうだよな~。」


 ………。え、?


 「とゆーか、みんないつからそう思ってた?…もしかして、1年の4月の時点でもうそう思ってた!?」


 「……怒らないんですか…?」


 ナイス由衣!みんなの心が1つになった瞬間だった。


 「ええー?怒んねーよ?みんなと仲良くなれてたんだってわかってうれしいし。ちなみにオレ、高校の時、アゴラって呼ばれてたんだぜ?ヤバいだろ!」


 ダムからたくさんの水が吹き出すように、教室中が笑いにつつまれた。あまり大爆笑しない山田くんも、いつも真面目な麻衣ちゃんも、みんなが笑ってる。


 チラリと隣を見てみる。


 (……、あー…。)


 ヤバい、めちゃめちゃ、きゅん、ってした


 (山田くんが笑いすぎて涙が出てる…。)


 隣でよかったと心から思った。お腹を抱えて大爆笑なんて、レア中のレアだ。普段はかっこいいのに、今はすごくかわいく見える。目に焼き付けておかなくては!、という謎の使命感にかられた。


 「ちょっ!お前ら笑いすぎ、ってオイ安田!今お前俺のアゴ見て笑ったよな!?」


 それから、この日の社会はアゴの話になった。


 中学校の英語の時間、 two days ago など、agoが出てくる時はみんな手を上げなくて俺が言わされた、とか。急に初対面の人に、


 「お前、アゴヤバくね!?」


 と言われた、とか。いつの間にか50分たっていて、みんな笑いすぎてお腹が痛くなっていた。


 ……キーンコーンカーンコーン、


 「うわヤベえ、この時間何もしてねぇし。明日はここからやるからなー。ハイ、起立ー!」


 『ありがとーごさいましたー!』




 今日は最高の日だ。山田くんにおはようって言えて、大爆笑するところも見れた。学校はあまり好きじゃないけど、幸せだ。








 

 

ありがとうございました!

次回は山田くん視点です!

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