第1話 一歩ずつ
山田くんと隣になって1週間、何の進展もない……
訳ではない。
まず、本の貸し借りをするようになった。
私も彼も、ファンタジーが、つまり非日常的な話が好きなのだ。
今私は彼に借りた「ソー○・アート・オンライン」という本を読んでいる。全10巻で、今は8巻。ここまで夢中になるのは久しぶりだった。けれどあと少しで完結。全て読み終わってしまったら、また話せなくなるのだろうか……?という不安がつのる。
好きな人が、すぐ隣にいて、話せて、……その幸せを知ってしまうと、もうもとには戻れない。
だから私は……
「大丈夫?」
「えっ?」
心臓が、ドキィって、した。
もしかして今私、山田くんに話しかけられたっ!?
落ち着け私。クールだ、クールに決めるんだ…。
平常心…平常心…………………行けっ!私っ!
「っな、なあに?…」
っ!?!?噛んだ!噛んだよね今!?ああぁあああぁあぁ……………。なにしちゃってんのぉ!?私!?せっかく山田くんに話しかけられのにぃ……!
「…いや、寝てんのかと思って…。起きてんならいいよ。」
ぐはああぁっ!!どうしよう。ヤバい。彼が私のことを気にかけてくれていたということに、ニヤける……。これ、知らない人が見たら、大丈夫かコイツ…。とか思われそう…。でもおさまらない…。
『…であるからー……』
口元がニヤけるのを手で隠す。あぁ…目元も笑ってるかもしれない…。くふふ…。
『じゃあここを寺田!』
どうしよう…。授業に集中できないやぁ…。くふふふふ…。
『…寺田?』
山田くんが私にぃ…ぐふふ……
くいくい…(服を引っ張る音)
…ん?えっ…?山田くん…?
「…先生、呼んでるんだけど。」
「…えっ‥…?」
チラッ………
先生「ニコッ」
私「ニコッ」
………………。終わった…。
「あとでちょっと先生のところにきなさい。」
「………ハイ…。」
ああぁぁああぁあ!!!私のアホ!オタンコナスぅ!!山田くんに…カッコ悪いとこ見せちゃったよぉ……。
「ぷっ……。ばーか。」
「!?」
やっ…山田くんに…バカって言われたぁっ!!どうしよう、けっしてうれしいことは言われてないのに、すごくうれしい……。
私…Mなのか…?
と、とりあえず、いつもと違う山田くんが見れたんだ。進展…かな?
授業後
先生「お前はなんでいつも……………」
私「ハイ…………。」
山田くん「ぷっ」
ありがとうございました!