霧崎社長とお食事
遅くなってすみません
霧崎社長が来たあの日から数日後。今日もまた商談がある。
私は、今日は事務の仕事は休みだ。その代わり、社長としての仕事がある。
社長の仕事だけの日は、事務の仕事の方の人に会ってもいいように気休め程度の変装をしている。というよりは、事務の仕事の時が変装していると言った方が適切だろう。
社長としての仕事の時は、まず眼鏡を外す。そして、三つ編みをしている髪を下ろしている。眼鏡はコンタクトに変えるわけではなく、だてだ。
それだけやれば、結構イメージが変わる。ついでに服装とメイクを変えれば完璧だ。まず、一見では分からないだろう。
そんな感じで今日は仕事をしている。
霧崎社長との商談については、私は何もしない。副社長にお任せだ。
しばらくやると、大体の仕事が終わった。ちょうどきりもついたので、休憩も兼ねて外で昼食を食べることにした。
因みに、現在の時間は15:00となっている。
そんなわけで、遅い昼食を食べるためにロビー辺りまで下りてきた時に出会ってしまった。
霧崎社長だ。この前の秘書の人も一緒にいる。
少し驚いたが、考えればもう商談は終わっているはずの時間なため、いてもおかしくはない。そのまま通り過ぎようとしたら、まさかの声がかかった。
「きみ、この前の人だよね」
(!?この前に会った時は変装していた筈なのになんで分かったの!?)
「ど、どうして……」
「分かったのかって?なんとなくかな」
(なんとなくで分かるものなの!?)
「社長、そちらの方とお知り合いですか?」
「宇都木、前に会ってただろう。受付をやってた子だよ」
ああ、秘書の人は宇都木って名前なんだ。
そんな場違いな事、考えている場合じゃないって‼
一人突っ込みしてしまいました。
「この方が!?」
ずいぶん驚いたようだった。普通はわかりませんよね。
「ずいぶんきれいになりましたね。今日はどうしたのですか?」
「少し別の仕事をしていただけです。申し訳ございませんが、昼食にいきますので失礼いたします」
ただ、早く離れたかっただけなのにこれがあだにあるなんて思いもしませんでした。
「それなら、私達もまだですからご一緒しませんか?」
「!?申し訳ございませんが、急いでいますので失礼いたします」
そういって早く立ち去ろうとしたら、腕を掴まれた。
「そんな事は仰らずに。少し聞きたいこともありますしね」
何を聞きたいのかは想像がつきます。
「何が食べたいですか?早く言わないと適当なところにいきますよ」
腕を掴まれているので逃げれません。そろそろ腹をくくるべきでしょうか。
「では、寿司でお願いします」
「わかりました」
昼に寿司はどうかと思いましたが、最近食べていなかったので丁度いいと思いそういった。
回る方か回らないかどっちになるんだろうか。
回らない方でした。とても高そうです。
霧崎社長に席を勧められてカウンターの席に座った。その隣に霧崎社長が座って、そのさらに隣に秘書の人改め宇都木さんが座った。
「注文はどうしますか?」
「じゃあマグロをお願いします」
それだけ伝えると店員の人は作ってくれた。
しばらくすると、私のところにはマグロが運ばれて来た。霧崎社長はたいで、宇都木さんのところにはイクラが運ばれて来た。
なんか……。
その後も追加で何回か頼んだ。もうお腹いっぱいです。
でも、何か忘れているのは気がするのは気のせいでしょうか?
「では問題本題ですが、この前と今回で違う服を着ていたのはなぜでしょうか?」
ああ~。そう言えば、その話がまだでした。 「えっと、別の仕事をしていたからです。
「その仕事の内容は?」
「そういうことは、普通外部の人に話てはいけないと思います」
「話せる範囲のことでかまわないですよ」
なんだか、少しずつ追い詰められている気がします。
「すみません、そろそろ仕事に戻らないといけないので失礼いたします」
こういう時は逃げの一手にかぎる。
急いで退散してきたが、止められる事はなかった。ただ、一言言われたが。
「また誘います」
*その後の会話*
宇都木「逃げられましたね」
霧崎「ああ」
宇都木「なぜ口調を変えられていたのですか」
霧崎「なんとなくだな」
宇都木「……気に入られたのですね」
霧崎「……」
宇都木「はぁ。あの方が可哀想ですね (小声)」
霧崎「なんか言ったか」
宇都木「いいえ、何でもございません」