初戦
やばい……部活に集中できない……。
俺は部活でも顔を晒した事ばかりを考えてしまい全く集中ができないでいた。
「おい! 安弘! ちょっと来い!」
俺を呼んだのはサッカー部の顧問の先生である川越先生だった。
先生は気が抜けていたりする事をすぐに見抜くことができるので多分その事だろう。
俺は走って、川越先生の所へ行った。
「川越先生何ですか?」
「安弘。お前今日調子悪いぞ。疲れてるんじゃないか? 今日は帰って休んだらどうだ?」
「いえ、大丈夫です」
「いいや。もうすぐで大事な大会もある。無理に練習し続けて怪我でもしたらお前だけじゃなくてチームにも迷惑がかかるから今日のところは帰ってしっかりと休め!」
俺は集中できないだけで疲れているわけではないが、ここまでくるともう川越先生は何を言っても聞きいれてくれないので帰ることにした。
仮想空間に行く必要がある俺には、丁度よかったかもしれない。
「分かりました。帰ります。さようなら」
「今日はしっかり休めよ!」
「はい」
俺は急いで門を出て家へ帰った。
まさか帰らせれるとは思わなかったな……秋見先生もう来てるといいんだけどなぁ……あっ。
俺が家の前の道に着くと家の前に秋見先生の車があるのが見えた。
「秋見先生! 帰ってきましたよ」
「おお! 良かった早く帰ってきてくれて。家からIIDSを運び出して車に入れて来たのはいいもののよく考えたら鍵があいてる筈がないだろう? 遅くまでずっと待つ事になるかと思ったよ……家に入れるのを手伝ってくれ」
俺は先生の話を聞いて、改めて先生はドジだと思う。
俺はそう言われると秋見先生とIIDSを運んだ。IIDSはかなりの重さだったのでどうやって家の中から車まで運び出したかが謎で仕方なかった。まあ、誰かに手伝ってもらったのだろう。
「ふぅ……運び終わったな……じゃあ僕はまだ仕事があるから後で仮想空間に行くから先に行っていてくれ。あ、そうそう、朝は制服で行っちゃったけどこれからは動きやすい服でいいよ」
そういうと秋見先生は車に乗り帰って行った。
さてと、俺も行きますか!
俺は黒いジャージに着替えてIIDSの中に入った。
『アカウントを作成しますか?それともログインしますか?』という質問に『ログインする』を選び、パスワードを入力してログインする。
そこからは朝と同じ手順を踏んで、インターネットの世界へと入った。
うっ……やっぱり眩しいけど朝ログインした時よりは眩しい事も分かってたからマシかな……。
辺りを見渡し、ワープした先がまた朝と同じ原っぱだということを確認する。
俺は短剣が自分の手元にある事を確認すると立ち上がった。
先生が来るまで時間あるから散歩してようかな……ここがどんな所なのか見ていたいし。
俺は町を歩いて回った。
町には当然の事かもしれないが人がいて賑わっている。おそらくこっちの世界に住んでいるデータ上だけの存在だろう。
やっぱりいろんな種類の建物があると違和感があるな……なんか人が減ってきている気がするな……。
俺は歩いている途中で暗く人のいない細い路地裏に入ってしまった。
俺は路地裏で迷うのが嫌なので人が多く居る大通りに戻ろうとした。
「ん?」
俺は後ろ建物の陰から視線を感じたので建物に近づいてみた。
「これは……俺……なのか?」
建物の陰には俺の顔そっくりな生首が跳ねていた。その生首は俺の顔を見ると跳ねながら一目散に逃げ出す。
「待てっ!!!」
俺はすぐに俺が晒した顔だと理解する。首までしか写真に写ってなかったので胴体がないのだろう。
逃げる俺の顔をした生首は必死に逃げているが、俺の身体能力は10倍になっているため、すぐに距離が縮まった。
「よし……!追いつめたぞ!!」
俺は裏路地の奥の行き止まりまで追いつめた。
俺は剣を構える。
「いっっっっっけぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」
俺は勢いよく、剣で生首を斬り裂く。
傷が浅かったのか、確実にダメージは負っているように見えるものの、空中に浮遊するレスを攻撃した時とは違い、まだ完全に消滅していなかった。
「レスの時みたいに一発じゃ無理か……もう一度っ!」
もう一度剣を構えて斬りかかろうとした時、生首は俺に突っ込んできた。
「くっ!」
間一髪のところで避けることに成功した。
そしてもう一度剣を構え、斬り裂く。すると今度は完全に顔が消滅した。
「消去できたのか……」
俺は安心してそのまま地面に座り込んだ。
今は突っ込んできた生首を避ける事ができたが一瞬ひやりとした。
今度も同じように避けられるとは限らない。
身体能力が10倍になっているので一度攻撃を受けても死ななかったとしても攻撃を受けて体勢を崩し、そのまま攻撃されてしまうという事も考えられる。
いくら体が頑丈になったからといっても攻撃を何度も受けたら死んでしまう。
俺は改めて死への恐怖を感じた。
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