斬る
「うっ……ここは……どこだ…………?」
気がつくと俺は原っぱに仰向けになって寝ていた。
「気がついたかい?多田君。ここはもうネット上の世界だよ。立ち上がって周りを見てごらん!」
ふと呼ばれた方を向くと、先生が俺の隣で座っていた。俺は立ち上がり、周りの様子を見る。
原っぱの先には現代的なビルが建っている区域と中世ヨーロッパの風の区域に綺麗に別れた町があり、異様な雰囲気に包まれている。そして、その町の中心には巨大な中世ヨーロッパの城が聳え立っていた。
ここが……ネット上の仮想空間か…………違和感が半端無いな。
「違和感が凄いと思っただろう。この建物はもちろんこの世界にあるものは全てインターネット上にアップされた画像や絵からできている。だからこのように異様な街並みになっているんだよ」
「そうなんですか……そういえば制服が軽くなっている気がするんですけど、どうしてですか?」
「体をスキャンした時に容姿、身長、体重の他に身体能力をスキャンしたんだ。それで体をデータ化する時に身体能力だけ10倍したんだ」
「どうしてそんなことをするんですか?」
「それはね。データに襲われても一撃では死なないようにしているんだ。人間の体は意外と脆いからね。それとデータに攻撃する時のためだよ」
「どうしてデータが襲ってくるなんて事があるんですか?」
「僕たちはデータを破壊しようとしてるだろう?それに対してデータは破壊されないように抵抗するんだ。君だって何かに襲われたら抵抗するだろう?それと同じだよ。その他にも攻撃的なデータが攻撃してくることもあるけどね。もちろん身体能力を10倍したからといっても危険な状態になる時はあるけどね。その時は警告がでてくるから逃げればいいよ。死んでしまったら元も子もないからね」
一撃で死なないようにしていると聞いて少し安心したがそれでも危険な状態になると聞いてまた不安になった。
「あの空中を流れてる文字って何ですか?」
空中には多数の文字列が浮いている。
「あれはね。スペシャルのレスだよ。あれは無害だから気にしなくても大丈夫」
よく見てみると、空中に浮かぶ文字列の中には俺が顔を晒したことについての事もあった。
「多田君! 今から画像を消去しに行くよ!」
「どうやって画像を消去するんですか? 画像を見つけたら殴ったりすればいいんですか?」
「もちろんそれでもいいけどそれだと相手に近づく分、攻撃を受けやすいからこれを使うといいよ!」
そういうと先生は短剣を差し出した。
「剣……ですか……?」
「そうだよ。身体能力は10倍になっているからこんな短い剣でもかなりのダメージを与えられるよ」
「でもどうしてこんなものを持っているんですか?」
「前きたときに拾ったんだよ。ログインするとログアウト前の状態からスタートできるからね」
俺は一度剣を振ってみた。すると周りにそよ風が吹いた。
「凄いなこりゃ。一度振っただけでこんなになるのか」
「切れ味を確認する為に適当に空を流れてるレスを斬ってみて!」
「でもあんな空高いと届きませんよ」
俺は『昨日顔晒した奴のコラ画像素材としての汎用性高杉ワロタ』というレスを見つける。レスはおおよそ上空5mほどのところにあった。
「言っただろう。身体能力は10倍になっていると」
「じゃあ跳躍力も10倍になっているってことですか?」
「そういうこと」
俺は思いっきり力を込めて跳ぶ。
「いっけええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
俺は一気に空高く跳び上がりレスを短剣で真っ二つに斬る。すると斬られたレスは徐々に小さくなり、完全に消えて無くなった。
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