仮想空間へ!
「あのIIDSの機械ってどういうやつですか?」
「あの日焼けマシンみたいなのがあるだろう。あれがIIDSだっ!」
話の流れで大体察してはいたが、一応聞いてみたらやはりIIDSだった。
やっぱり不自然に2台も日焼けマシンが置いてある訳がないもんなぁ……。
「早速行ってみよう」
「えっ、今から行くんですか?」
「そうだよ。何事も速いほうがいいだろう」
そういうと秋見先生は立ち上がりIIDSの前で立ち止まり、「さぁっ! 多田君もこい! 僕は先に言っているよ!」と言うとIIDSの中へと入っていく。
俺は出されたお茶を飲んでから立ち上がると、もう一台のIIDSの中へ入った。
IIDSの中には椅子のような物とモニターとコントローラーとヘッドギアがある。俺はコントローラーの電源ボタンを押し、IIDSを起動する。
どうなるんだろう……間違ってないよな。
すると画面にIIDSと表示され、次に『音声ガイダンスによるサポートを使用しますか』と出てきた。
使用するでいいかな…………。
「アカウントを新規作成しますか?それともログインしますか?」
アカウントを新規作成するかログインするかの選択画面がでてきた。当然アカウントは持っていないので、『アカウントを新規作成する』を選択する。
「アカウントを新規作成します。作成するアカウント名とパスワードを入力してください。アカウント名は変更不可能です」
アカウント名はコテハンと同じチープでいいかな。パスワードもcheapでいいや
「同じアカウント名が既に存在します。別のアカウント名を入力してください」
えええっ。安いなんて意味の名前をつける物好きが俺以外にいるのかよっ!
俺は吹き出しそうになる。
どうしようかな。秋見先生をアカウント名なんかで待たせる訳にはいかないし……。
俺の名前の安弘の安と弘を反対にしてヒロヤスにするか!
そう考えると俺は『ヒロヤス』と入力した。
「アカウント名『ヒロヤス』でアカウントを作成します。アカウントは変更不可能ですがよろしいでしょうか?」
俺は『はい』を選択した。
「アカウントの作成が完了しました。次に身体のスキャンを行います。終了しましたとモニターにでるまで中央に立っていてください」
音声ガイダンスに言われるがままに中央に立つ。
「身体のスキャンが完了しました。次にネット上のどこへ行くのかを入力してください」
ええっと……BBS SPECIALっと。いくつか候補出てきたけどこれっぽいな。
「最後にヘッドギアを装着して椅子に座りマジックテープで体を固定して下さい。固定が完了した事が確認されたら仮想空間にワープします」
なんか体をこんな感じに椅子に固定されてるとなんだか誰かに拘束されたみたいで変な感じだなぁ……。
仮想空間ってどんな世界なんだろう……ちょっと楽しみだなぁ。
俺は死への不安とは別に仮想空間への期待もしていた。
「準備が完了しました。これより仮想空間へのワ―プが始まります」
すると目の前が一瞬にして激しい光に包まれる。
ううっ…………眩しすぎるぞおおおぉぉ! これは目に悪いだろおおおぉぉ!
15秒程すると意識がだんだん遠のいてきた。
意識がっ…………。
そしてさらに5秒。俺の意識が完全に現実世界から遮断された。