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翌日

 俺は掲示板に顔を晒すレスをしてから1分ほど頭の中はぼんやりしていた。


 ああっ! 晒してしまったあああぁぁぁぁぁ!


 1分してから晒してしまったということに気がついた。もう取り返しがつかないという絶望に襲われた。


 俺はいったいどうなるんだよぉ! 俺の住所が特定されるのか⁉︎ 学校生活に支障がでないよなぁ! 頼むから家族だけには迷惑がかからないでくれっ!


 とてつもない不安と恐怖で頭がいっぱいになる。取り返しのつかない事をしてしまった。ネット上で何があっても自己責任だ。これからどんな人生になろうとも、その人生を受け入れなければならない。

 俺はすぐにスレの削除要請を運営に出した。しかし、時はすでに遅く、少なくともスペシャルの雑談掲示板は俺が顔を晒したことに関係するスレで埋め尽くされており、スペシャル内の他の掲示板にも俺が顔を晒したことに関係するスレが立っていた。俺が晒した顔を晒したスレはすぐに運営の手によって消されたが全ての関係するスレが消される事はなかった。

 俺の全身は震えていた。パニック状態になっていることが分かった。体が思っているように動かない。全身が震える中で力を振り絞り水を飲んで少し落ち着き、現実から目を背けるようにベッドの中へと入った。


「ふぁぁぁぁ……」


 あれ?いつから寝てたっけ……。

 俺は寝ぼけて、寝る前の事を忘れていたが、すぐに思いだした。


 俺……顔を晒しちまったんだよな………………。


 体はまだ少し震えたままだったが、昨日よりは冷静になっている。


「安弘! もうもう8時よ! いい加減起きて学校行きなさい!」


 リビングから母さんの声が聞こえる。この様子だと家族、少なくとも母さんには顔を晒した事実は知られていないようだ。

 母さんに昨日のことを伝えるか、数秒悩む。このまま放っておいて良いはずがない。ただ、知られるのが時間の問題だとしても、自分の口から顔を晒したとは絶対に言えない。事実を伝えた時に怒られるのか、それとも失望されるのかは分からなかったが、とにかく伝えた時の親の反応を見るのが怖かった。

 俺は何かあったと察されないようにいつものように朝飯を食べると、制服に着替えて家を飛び出した。


 学校へ行くのも本当は怖い。掲示板のあの伸び方ならば学校にも既に俺が顔を晒したことを知っている人はいるだろう。本当は仮病でも使って学校に行かずに引きこもっていたい。しかし、俺のいない教室で晒したことが噂されて広がるのはもっと怖かった。

 それに、もしかしたら学校に行けばインターネット関係に強い人がこういう時の対処法を教えてくれる可能性があるかもしれない。正直学校の友達や先生にも晒してしまった事実を知られたくはないが、背に腹は変えられない。俺は藁にも縋るような思いで学校へと急いだ。


 学校に到着すると始業3分前、危うく遅刻するところだった。


「あ! 安弘だ!」

「顔晒した奴がきたぞ」


 教室に入ると、早速クラスメイトが近づいてきた。馴れ合い厨のような奴らだ。正直こいつらと話すような心の余裕はない。俺は下を向き、聞こえないふりをして自分の席へ移動する。


「そういえばもやしが呼んでたぞ」


 もやしというのは生徒指導の秋見という先生のことだ。痩せていて背が高く、しかも好きな食べ物がもやしだったのでもやしというあだ名がついた。


「朝のホームルームは出なくていいから職員室に呼びにこいだって。絶対叱られるぞ」

「ああ、そうありがとう」


 適当に礼を言ってバッグを置いて職員室に向かう。

 あいつらに関わるとろくなことがないからなぁ……。


 職員室前に着くと、すぐにもやし先生こと秋見先生がいた。

 職員室に入って呼ぶ手間が省けた! ラッキー! でもこのタイミングということは俺が晒したことに対しての要件だろうな……やっぱり最悪だ。


「秋見先生……きました……」

「やぁ……待ってたよ、君は叱られると思っているかも知れないが僕は君を叱ることはないよ。ただ、ちょっと僕についてきてもらうよ」

 あれ?ここで叱られると思ったんだけど他の場所で叱られるのかな……でも叱ることは無いって言ってたしな……。


 俺は先生に言われるまま先生専用の駐車場へ向かった。


「多田君、これは僕の車だ。ちょっと乗ってくれ」

「は、はい……」


 俺は先生に言われるまま先生の白い軽自動車に乗る。俺はどうなるのだろうか。


「ごめんね、多田君。ちょっと学校じゃできないことだからこうするしかなかったんだ」

 学校ではできないことと聞いて不安になった。まさか誘拐? いやまさかな。


 そして車で走ること約10分。俺を乗せた車はモダンな雰囲気の住宅街の一角にある家の前に駐車する。家の表札には秋見と書いてあったのですぐに先生の家だと分かった。


「さぁ、降りていいよ。ここは僕の家だ。鍵をあけるからちょっと待っててね」


 先生は車から降りると、ズボンのポケットから鍵を取り出し、家の鍵を開ける。


「あがってもいいよ」

「おじゃまします……」

「ちょっとこっちの部屋へ来てくれ……」


 俺は先生についていき、2階の和室に入る。4畳半の和室の中には、中央にこたつと座布団がある他、和室にそぐわない、銭湯などに置いてあるような日焼けマシンのような物が2台鎮座し、奇妙な存在感を放っていた。


「まぁ座ってくれ」


 そう言って先生は俺にお茶を出してくれた。


「まさか君が顔を晒しちゃうなんてね。思っても見なかったよ……」


 やっぱり顔を晒したこと関係か……。


「今日はね、これ以上の画像流出を防ぐために画像をネット上の仮想空間に飛び込んで画像を消去(デリート)してもらおうと思ってね。多田君を呼んだんだ」

ここまで読んでいただきありがとうございます!


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