魔法
「さて、ヒロヤス。どう脱出するかだが……」
「どうしようか……ん?」
トカゲと牢屋からいかに脱出するかを話そうとしたまさにその時、階段の方から誰かが下りてくる音が聞こえた。その音を聞こえると、すぐに会話をやめる。
階段からは集団の先頭にいた男が降りてきた。
「姫が呼んでいる。俺についてこい」
そういうと男は俺とトカゲの牢屋の鍵を外す。そして俺とトカゲに手錠をするとついてくるように促された。そのまま階段を上り、廊下を歩き、大広間に入る。大広間の中には立派なシャンデリアが吊るされ、奥には玉座らしきものがあり、そこには茶髪でロングヘアーのドレス姿の少女が座っていた。
あれ……どこかで見たことがある気がするな……気のせいかな……。
どこかで見たことあるようにも思ったが、その既視感の正体は思い出せない。まぁこの少女もインターネット上にアップロードされた画像だろうから、俺がスペシャルを覗いてる時にその元となった画像を見たことがあったのだろう。
「姫、連れてまいりました」
「貴方達の名前は?」
「俺はヒロヤス」
「俺はトカゲだ」
「姫に向かってそんな軽い口を聞くなあぁぁぁぁ!」
「私は別に構わないわ。貴方こそ声を荒げるのを止めて下さるかしら。無理に姫だからといって敬語は使わなくてもいいわ」
姫は彼を宥めると立ち上がり、近寄って来た。
「私の名はドリーム。貴方も名前を言いなさい」
「我が名はアルゴン。このスペシャル王国の防衛隊総隊長だ」
「さて、本題にいこうかしら。アルゴン、説明しなさい」
「承知いたしました」
そういうと、アルゴンは俺とトカゲの方に振り向き、説明を始めた。
本来はお前ら2人は城に連れ帰り、刑場で処刑されるべきだったのだがな。お前らには俺が隊長を務める防衛隊に入ってもらおうと思っている」
俺は処刑される事がないと安心する。しかし、それと同時に何故防衛隊に入らなければいけないのかを疑問に思った。
「何故防衛隊に入らないといけないんだ?断ったらどうなるんだよ」
「今から説明するから黙って待ってろ!」
当然の疑問だ。しかし、トカゲが言うとアルゴンがそれを黙らせる。
「なぜかというとな……全ては20年前、お前ら異世界人がこの世界に入ってきてから始まった。お前ら異世界人は情報破壊だとか言ってこの国を荒らし始めた。そして次第に異世界人はこの国の民を傷つけ始め、戦争になった。そして沢山の人が死んだ」
「だからこの国では異世界人は見つけ次第殺せっていう風潮があるのよ」
「異世界人共は訳が分からない位身体能力が高く、訓練を積んだ俺達防衛隊でさえ束にならないと勝てなかった。異世界人によってモンスター以外の国民は70%が殺され、そして防衛隊はお前ら異世界人によって95%もの隊員が殺された」
秋見先生はこの世界で襲われて意識が戻らなくなった人もいると言っていたがこの戦争で死んだ人たちの事だろう。沢山の人が異世界人により殺されたのなら俺達を憎んでもおかしくはないか。
「あ、モンスターっていうのはね、立ち入り禁止地帯に住む生物達の事よ。彼らは気性が荒いから彼らの住む地帯は立ち入り禁止になってるの」
「ヒロヤスは立ち入り禁止地帯でモンスターとの戦闘を行ったみたいだな」
「えっ⁉︎ どうして分かったの?」
俺がアルゴンと出会ったのは戦闘終了後だった筈なのに戦闘した事を言いあてられて驚く。
戦闘の一部始終を観ていたのかと一瞬思ったが、捕まった時に何をしていたかを何度も訊かれたのでそれはないだろうと思った。
「それはね。私は魔法を使えるの。魔法で分かったのよ」
「魔法だと……」
俺はドリームの魔法を使えるという言葉に俺は心底驚いた。
この世界には魔法までもが存在しているとは思っていなかった。
「この世界には魔法まであるとはな……」
トカゲも驚きを隠せない様子だった。
「貴方達の世界に戻れなかったでしょ。あれも私ができないように魔法で結界を造ったの」
ログアウトできなかった理由が分かって少し安心した。
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