現実世界の人間
「おい!そこで何をしてる!」
俺が俺の生首との初戦を終え、安堵していたのも束の間、どこからか凄い声が聞こえた。
数秒後緑のマントに身を包み、大剣を持った集団が現れ、自分の周囲を囲む。
「ここは立ち入り禁止の場所だぞ! 看板が建てられていた筈だ! ここで何をしていた!」
集団の先頭に立っていた男が言った。
「が……画像を消去しに来ました……」
俺は生首を追いかけるのに必死で看板に気付かなかったのだろう。
大声で怒鳴られて殺されるのではないかと死を覚悟して正直に此処へ来た経緯を話した。
「20年前にも同じような事を聞いたな……お前は異世界人だな?」
「は、はい……」
こちらの世界から見たら俺らの世界は異世界だから俺は異世界人という事になるのだろう。俺は正直に否定せず「はい」と答えた。
「この者を城まで連行しろ! こいつは異世界人だ! 生かしちゃおけない!」
すると俺の手と脚を手錠で縛り、短剣を取り上げた。
俺は何が起こったのかが分からずに混乱していた。
「待てよ! 俺が何したっていうんだよ! 離せっ!」
謎の集団は俺の訴えに対し、聞く耳を持たずに無視する。
俺は中世ヨーロッパの城に引きずられながら連行され、地下牢に収容された。
「俺を出せよ!」
集団は何も言わずに地下牢から立ち去った。
俺は無理矢理牢屋を壊そうと試みたが全くビクともしない。
「無駄だよ……牢屋は相当頑丈にできている」
隣の牢屋から声が聞こえる。
隣の牢屋に目線を向けると赤毛で鋭い目つきをした男が座っていた。年齢は20歳前後といったところだろうか。
「貴方は……?」
「俺はお前と同じ現実世界からやってきた人間だ」
俺は20年前の事件があったため、もう来てる人は自分たち以外にいないと思っていた。そのため現実世界から来たと聞いて驚いた。
「俺以外にもこの世界に来てる人がまだ居たのか……貴方も何か自分の情報を消したくてこの世界に来たのですか?」
「いいや、俺はそういう目的で来たんじゃない。俺は20年前にこの世界で行方不明になった父を探しているんだ。他にもいろんな理由でここに来てるやつはいるぜ」
「そうなんですか」
まだこの世界に来てる人は結構いそうだな……。
「どうすれば外に出れますかね……」
「分からない。ログアウトも試してみたが何故かできなかった」
「殺されるのでしょうか……」
「分からない……ただ外から来た俺たちを快く思っていないのは確かだと思う」
「そうですか……」
俺は集団の先頭にいた男が俺が異世界人だと言った時に生かしてはおけないと言っていた事を思い出した。この男も牢屋に連れてこられる際に同じような事を聞いたのだろう。
「あのさ……俺に敬語使うのやめてくれないかな。違和感があって嫌なんだよ。タメ口でいいよ」
「分かった。そういえば名前は?」
「俺の名前はトカゲだ」
「そうか、よろしくなトカゲ。俺はヒロヤスだ」
「おう、そうか、よろしく」
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