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城内での戦い2

 作戦会議が一段落した八三.

「実はスナビエにはバーク門といって,異界だか魔界だかと繋がっている門がある.ハインの狙いはそれかもしれない」

 キョウは椅子に深く座って呟く.

「というと?」

 オリオンが尋ねる.

「あの門の先には死者の国があるという噂だ.ただの噂だ.王都にもダウン門という似たようなものがある.たまにこっちに迷いこむ奴がいるが,見た目は俺たちと大きな違いはない.もしかしたら古代人が絶滅を避けるために2つに分けたのかもな」

「俺たちのためにあるとは限らない.行き来する間に住んでいて通行料を取る種族や,待っている間にエネルギーが溜まるように配置した種族がいるかもしれない」

 エコールはそう言って腕を組んで寝る姿勢に入る.

「見えないところにあるから好きなように考えているだけだ.死後などない」

 フリードは馬鹿馬鹿しいと言わんばかりに述べる.

「そうかもしれませんね.でも目の前に無くとも社会にその概念は必要だから,あると考えられているのかもしれません」

 フェルケルはフリードに丁寧に反論する.

 フェルケルは目を覚ます.

「すまない2人とも.もう大丈夫だ」

「敵はどんな手を使った?」

「すまない,思い出せないんだ」

「まあそうでしょうね.私が何とかするから場所を教えて.尤も,相手が動いていなければの話だけど」

 フェルケルは地面に図を書いて場所を示す.

「私が何とかしてくる」

「お前はどうする?」

「そっちは任せるよ,囮らしく目立ってくる」

「そうか,気をつけてな」

 フェルケルは外に出て走り出した.エコールとソヴェリアは外に出てアイカの部屋目指して走り始める.

 廊下の途中,エコールとソヴェリアは危険を察知して後ろに跳ねる.天井を破ってオリオンが落下してくる.

「何だオリオンか.驚かすなよ」

「確かに敵の気配はあった…」

「少し休憩.静かにすれば隠れてたのも出るだろう」

「ほほう,こいつらが侵入者か.いつも雑務ばっかりだったからな.これは楽しめそうだ」

 若い細身の男がオリオンたちを見下ろし,上の階から飛び降りる.

「お前,十坐か?」

「そうだ.第6番イザク・セキニ」

「こいつの相手は俺がする.2人は先に行ってくれ.6番如きに魔力を使わずに温存すべきだ」

 エコールとソヴェリアは走っていった.2人を追うイザクの目線の先にオリオンが立ち塞がる.

「ここは通さない.裏征!」

 オリオンは腕輪を天に掲げて裏魔法の封印を解く.

「足止め?何だ殺す気で来ないのか?がっかりだよ」

「俺の裏魔法は硬化させること.どんな攻撃も通さない」

「そうか.どれほどか見せてもらう.裏征」

 イザクは剣を抜いて裏魔法の封印を解く.

 オリオンはイザク飛び掛かる.オリオンが攻撃をするよりも先にイザクは剣を持っていない左手で踏み込んで殴りつける.オリオンは吹っ飛び,石の柱を5本砕いて壁にめり込んだ.

「ほう,千切れないとは頑丈だな」

 オリオンはフラフラしながらも起き上がり,右手を前に突き出して気弾を飛ばす.イザクは近くの身長をゆうに超える瓦礫を蹴り飛ばし,オリオンをサンドイッチにする.続けてオリオンに向かって跳び込み,剣を左から右に振って瓦礫を両断する.オリオンには当たるものの深く切ることができずに横に引きずり出される.イザクはオリオンを左手で殴りつけて吹っ飛ばす.オリオンはソヴェリアの近くに落下し,ソヴェリアはイザクの方を見る.

「エコー,先に行って」

「…分かった.後で合流しよう」

 エコールは走り去り,ソヴェリアはオリオンを浮かび上げて自分の後ろに置く.

「次はお前が相手をするのか?そいつは固いからそれで済んだが,お前はどうかな?」

 ソヴェリアは左肩から斜めに掛けたベルトを外して背負った杖を取り外し,包んだ布を取り払う.銀とルビーでできた杖が姿を現す.

「楽しめそうと言っていたね」

「ああ」

「私もそう思う.…裏征」

 ソヴェリアは杖の先を天に掲げる.ソヴェリアの足元から水が湧き出す.

 ソヴェリアは後ろに跳ねると足元から天井まで届く波が発生してイザクに向かう.イザクは剣を振ってその衝撃で波を裂いてソヴェリアに向かう.ソヴェリアは杖を振ってイザクの上から水流をぶつける.イザクは地面に叩きつけられ身動きが取れなくなる.イザクはわずかに動く腕で地割れを起こし,水を逃すと脱出してソヴェリアに向けて剣を振って衝撃波を飛ばす.ソヴェリアは体を回してかわし,回転を利用して杖の先から高圧水流を出す.イザクは剣で防ぐが,剣は瞬時に粉砕され,破片が体に突き刺さりつつ後ろに飛ばされる.イザクは貫手とその衝撃波で水を切り裂き,ソヴェリアは水を止めて体を捻って衝撃波をかわす.イザクが跳び上がりソヴェリアに殴りかかる.ソヴェリアは水の渦を自分の周囲に作り,イザクはそれに殴りかかる.衝撃波でソヴェリアの左腕に擦り傷ができ,血が流れる.イザクは流れに従って振り回されて横に飛び,着地した瞬間に水の玉に閉じ込められて浮かび上がる.イザクは体を動かすが上下左右どの方向にも進まずにもがく.力をこめて殴りつけるが,水が一時的に姿を変えるだけで,すぐに元に戻る.

「フフ…いい表情,近くで見ることができないのが残念だけど.…やっぱり楽しめた」

 ソヴェリアはイザクを見上げて様子を伺う.出られる様子が無いのを確認して杖を振る.水の玉の中で縦横無尽に水が走りイザクの首や四肢,胴体は圧力に耐えられずに捻じ曲がって折れる.水の玉は血などで黒くよどみ,弾けて周囲を汚す.

「私の勝ちね」

 ソヴェリアは裏魔法を封じて杖を包んで背負い,オリオンの様子を見に戻り,オリオンを回復させる.


 城の廊下を歩くフェルケルは突然強烈なプレッシャーを受けて硬直する.廊下の向こう側から一人の男が歩いてくる.

「(あれ…呼吸ってどうやってするんだっけ…)」

「何だ,随分と弱そうな奴が紛れ込んでいるな」

 ロイスはフェルケルの横を通り過ぎる.フェルケルは振り返ってロイスを目で追う.ロイスは向こうを向いたまま歩き続ける.角を曲がって消えた後,フェルケルは両手を地面に付いて倒れる.

「(戦わずに済んだ.良かった….いや,俺は何を言っている?敵を倒しに来たはずだ.剣を抜いて背後から切りかかるんだ.動け,動けよ!)」

 フェルケルは固まって動けない.

「くそっ…」

 フェルケルは目を閉じて起き上がり,深呼吸して,ロイスの行き先とは逆方向へ向かう.


 エコールはフリックスと合流する.

「エコール,ちょうどいいところに.この部屋,怪しくないか?」

「部屋というより交差点のような…」

 目の前には大きな扉.窓の外をちらっと見ると前の部屋と橋に繋がっているように見える.

「何を戸惑っている?壊せばいいだけだろ」

 エコールは手を前に出して念力で扉を奥へ吹っ飛ばす.扉は何者かに弾かれて壁にたたきつけられる.

「あんたたちが侵入者か,待ちくたびれたよ」

 エフィアはソファから起き上がって伸びをした後あくびをする.

「こいつの相手は俺がやる.お前は力を温存しろ」

「それはいい,2人がかりじゃお互いに当たらないように弱まってしまって面白くない」

「あんなこと言っているぞ,やはり2人がかりで…」

「悩んでいるようだから自己紹介してあげる.私はエフィア・キッシング.番号は4,4よ4.で,どっちが相手してくれるのさ?1人は通してあげるよ.私は組織の勝利なんてどうでもいいんだ.私が死ぬまでの少しの間,楽しませてもらうだけ」

「エコール,君は先に行け」

「…分かった」

 エコールはエフィアの前を横切って先に進む.

「さて,あなたが相手か.…どこかで見たことがある顔ねえ」

「口説いているのか?」

 エフィアは何言ってんのこいつ,と言わんばかりの目でフリックスを見る.

「ああ,あの時のあの子.フローラに良く似ている」

 フリックスの表情が少し変化する.

「フローラであっているのかな.彼女の父親はそう呼んでいたけど.あんたさ,ローディス家って知ってる?片田舎のちょっと大きな家に住んでた一家」

「俺の家だが?」

 フリックスの声にわずかにイラつきが表に出る.

「あら,じゃあフローラのお兄さん?」

「なぜ君がフローラのことを知っている?」

「さっきも言ったじゃない?彼女の父親,いや正確には,彼女がお父さんと呼んでいた男にフローラと呼ばれていたから.私と仲間が強盗に入ったときの出来事だから,わざわざ敵に父親と誤認させるためにそう呼んだ,とも思えないけどね」

「そうかお前か,俺たちの両親を殺したのは!?」

「へえ,ということはあの子は生き残ったんだ.すごいすごい」

「貴様…」

「どうしてあの子の両親は彼女を守ったの?自分の娘なら守るの?女の子なら守るの?」「本当に分からないのか?」

「思い出したらイラついて来た.どうしてあいつは守られて,私は捨てられなきゃいけなかったんだ!?どうしてあいつの親は守ろうとしたんだ!?」

「知ったことか.同情を誘っているのか?屑女」

「同情?私はすぐに口に出てしまうだけ.まあとにかく,気分は乗ってきてくれたようでいいねえ.やっぱり戦いはこうでなくちゃ.恨み無しの戦いは味気なくていけない」

 フリックスはオーラを纏った剣を下から上へ振り上げての炎の輪を転がす.エフィアは胸にぶら下げているカードを取り外し,人差し指と中指で挟んで天に掲げる.

「裏征」

 エフィアが右手をかざすと炎の輪は手のひらに吸い込まれて消えた.

「裏魔法無しで戦うつもり?」

「うるせえ,裏魔法がハズレなんだよ!」

 フリックスは左腕を水平に横切り,雷の小さい矢を並べてエフィア目掛けて一斉に射出する.エフィアは右手から吸い込む.フリックスは姿勢を低くしてエフィアに切りかかるが,左手で剣の刃を掴まれて止まる.フリックスは素早く剣を引き抜くが,エフィアの手に傷は全くつかない.

「(どういうことだ…まるで滑るように引き抜けたぞ.これは…)」

 剣はエフィアに触れた部分が溶けている.

「あんたの裏魔法を見てみたかったけど,使う気がないのなら仕方ない.死ね」

 エフィアはフリックスに向かって走って右手を伸ばす.フリックスは剣で腕に切りかかる.剣の先はエフィアの右手に吸い込まれて勢い良く空振りしてエフィアの胸を切る.エフィアは後ろに下がって左手を胸に当てて体を再生させて傷を塞ぐ.

「チッ」

 エフィアは両手を前に突き出し,フリックス目掛けて横向きに竜巻を起こす.フリックスは剣の先から渦の中央を通る雷撃を放つ.竜巻は消えてエフィアが姿を現す.エフィアはエネルギー弾を投げ,フリックスに当てて天井に叩きつける.エフィアはもう一発投げつける.

「裏征」

 フリックスは裏魔法の封印を解き,その余波でエネルギー弾は弱まり,両腕で防いだ.着地してフリックスは剣を元通りの長さに戻す.しかし,印刷がずれたような見た目になる.

「(やっぱり出力が多少上がる以外使えねえ.強度はタルトと同じくらいしかない.しかし,どうせ溶かされるなら大して変わらないだろう)」

「アハハハハ,なにそれ?印刷ミス?」

「好きに行ってろ!」

 フリックスは剣でエフィアを突く.エフィアは左手で剣を吸収して右手の指先から変換したエネルギーを放つ.フリックスは左脇にダメージを受けて血を吐く.

「がっ…」

 エフィアの左腕が内部で破裂する.エフィアは後ろに跳ねて,左手を再生させる.顔は苦しみに歪んで頬を伝った汗が地面に流れ落ちる.

「(何だ…これは….吸収できない,いや,吸収した後に変換できない)」

「(どうなっているんだ?急に苦しみだした.奴の魔力が尽きたか?いや,そんなはずはない)」

「(試してみるか.いや痛いの嫌だな.何が原因かは分からないが,接近戦を避ければ問題はない)」

「(吸収限界か?数で攻める)」

 フリックスは剣から音波を出して地面を抉り取って破片をエフィアに飛ばす.エフィアは右手を前に出して破片を吸収する.フリックスは直後に炎弾を5つ放つ,エフィアは引き続き右手で吸収する.

 エフィアは地面に手を広げて地面を叩く.フリックスの近くに岩を突き出る.エフィアは目視で次の岩の出す位置を調整して次々と岩を出す.フリックスは飛び上がって剣を伸ばして攻撃する.エフィアは左手の先にオーラを纏って剣を掴んで引っ張る.フリックスは引っ張られた勢いで体が動かずに,エフィアに頭を掴まれる.フリックスはエフィアに吸い込まれた.剣が地面に落ちて先端が千切れる.

「ごちそうさま…うっ…」

 エフィアは膝を着いて両手を地面に突き立てて苦しみ出す.汗で顔に髪が張り付き,呼吸も絶え絶えになって,汗と唾液が地面にボタボタと落ちる.全身がガタガタと震え始める.

「ああ…うう…」

 エフィアの右腕が爆裂してフリックスが飛び出す.エフィアはバランスを崩して倒れる.

「(全く偽装になってない偽装の能力を持つ裏魔法.まさかここで役立つとは.俺たち人間には違って見えても,吸収能力の世界では偽装できるんだな)」

「はあ…はあ…」

 エフィアはかろうじて意識を保っている.

「さらばだ.俺たちの両親を殺し,妹を傷つけた,俺たちの敵よ」

 フリックスは右手の平を上に向けて光の槍を作る.槍を放ってエフィアの心臓を貫いた.エフィアの体は一度曲がって,力尽きてべたっと倒れた.エフィアは死んだ.

 フリックスはよろよろと歩いて壁にもたれて座り込む.

「う…意識が….まずは,剣を…」

 フリックスは剣を鞘に収めて裏魔法を封じると,昏睡状態に陥った.

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