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人生謳歌 〜紡げ、異世界譚〜  作者: 祠乃@吸血好きの少女
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テンプレはお好きですか?

北を目指して進んでいるはずなのに、なかなか人の気配すらしない。

本当にこっちで合ってんのかよ、とか突っ込みたいがナビもいないし、楸に話しかけるとなると少しうるさくなるし、どうしようか。


そう考えていると、木立の奥から、何かの唸り声を聞いた。

ガサガサと、草木を揺らして出てきたのは、ゴブリンの群れだった。


…うわぁ、異世界転移してから最初に戦う、定番モンスターの一つと一つなんだけど、ひぃ、ふぅ、みぃ……、数多すぎませんかねぇ。軽く十数匹いると思うんだけど。

仕方がない…倒せばいいんだろ、倒せば。隣の相棒を見ると、何となくこれから起きるだろう戦闘に対して燃えているように見えるし、やるか。


「楸!やるか?」

「あぁ、流石に私達の進路の邪魔だ。いっそ派手にやろう」

「あぁ、うん…」


こんなに戦闘狂だったのだろうか。


「じゃ、行くぞ。…GO!!」


俺の掛け声で楸も同時に敵に向かって駆け出した。

楸の方は走りながら、手を前に突き出して、なにか呟いている。

ん、じゃ、俺もやるか。


「来い、魔剣 ミストルテイン!」


現在、唯一顕現出来る、俺のもう一つの相棒を手の中に呼んだ。

初戦闘だから腕を試せる。さて、初めての剣で俺はどこまで行けるかな。


「ぐギャ、ギャあ」

「は、醜い鳴き声だ。よくも、私に聞かせてくれたな。お詫びに、一つ魔法をくれてやろう」


そう言い、楸はゴブリンの口の中に、火の玉を突っ込んだ。


「戦闘中にお喋りとか、余裕だな、楸」

「あぁ、余裕だ。余裕があるっていう女も悪くないだろ?」

「うん、悪くない。っ!」

「悪くないって……。ていうか、秋の方はぎりぎりじゃないか」


そう、俺はまだ剣を扱い切れてない。逆に振り回されている、気がする。

ミストルテインが何を言いたいのかよく分からない今…。勝ち目は…。

いや、まだだ。俺は諦めることが出来ない。

そう思ったとき、ナビではない別の声が、頭の中に響いた。


(よく言った…若者よ)


…俺の声を聞いて!?


(我を呼び出したの貴様だったのか。そうか…剣を扱うの初めてとな……。仕方がない。今から我の真なる姿を見せる。剣を宙に置くように手を離せ)


「わかったよ」


返事をし、頭の中の声に従った。


「これでいいのか?」


(良い、では)


途端に、剣が光りだした。

それは、だんだんと人の形へと変えて…!?


くうぅぅぅぅ…、なんて、なんて眩い光なんだ。戦闘中だが、とても目なんて開けていられない。

仕方なく、服や腕を使い、目を覆った。


何秒…いや、何分経ったのだろうか?実際はそんなに時間は経っていないのだろう。だが、そう思わざるをえないほど長く目を覆っていたような気がする。


何となく、光が収まったような感じがしたので目を開けた。

目の前には1人の少女が…。なんか、テンプレ感半端ないんですけど…。


目の前の少女ミストルテインに目を合わせると、口を開いた。


「貴方が私を呼び出してくれたのですか?」

「うん」

「ありがとうございます。なかなか暇だったのですよ、ここ、数千年間は」


と、少女は遠い目をして、呟いた。


「ですが、貴方が呼び出してくれたおかげ、暇じゃなくなりましたぁ!それにここにはさらに戦いがある。こんなに心躍るのはいつぶりでしょうか」


知らんがな…。ていうか、頭の中で響いたもの、声も喋り方も違うじゃねぇか。

そんな、考えも少女に聞こえて…いや、見透かされていたのか、


「違いますよ。声、変えてみたんですから。それに、良いじゃないですか、あの喋り方、格好良いです」

「分かった、分かった。で、ゴブリン…退治してくれるか?」

「はい、私に任せてくれれば一瞬で」


そう言い少女は、手のひらから、短剣を取り出した。


「この何の変哲もない、これで、十分です」

「分かった。じゃあ、俺は後ろに下がるよ」

「いえ、貴方は私のお側に。それでは」


そう言い、少女は離れていったように見えた。

実際、離れていった少女は少女であって少女ではなかった。少女って言い過ぎだと思うが、あれは分身だった。

魔剣って、どれも、こんなにチートなのだろうか?

レベルが上がれば、換装で呼び出せる装備も増えるだろう。


まぁ、この少女が俺から離れなかったのは良しとしよう。そして、同時に敵を滅ぼしているのも良し。

だが、少女の登場に少し、気を取られた。


こいつ、よく見ると裸じゃんっ


そして、そっちは裸であることも気にせずに俺に触ってくる。

やめて、これ以上はやめて、楸の眼が痛いです。そして、怖い。


「少女さん、少し離れてくれないかな。それに、ずっと裸でいることは危ないよ」

「良いんです。私には鞘が無いんですよ?そこの楸さんが作ってくれるまで、私はずっと裸です。でも、私が裸でも、秋さんは私のこと守ってくれますよね?」

「楸さん…、早く鞘作ってください…」


秋は、頭を抱えて、嘆いた。

そして、秋を見つめる楸も同じように、額に手を当て、頷く。そして、


「できるだけ、早く作ろう」


そう言った。


「秋さん、敵を倒しましたよ」

「ん?」

「だから、倒したんですってば!見てください」


少女はそう言い、秋に周りを見るように促す。


「うん、凄い。流石、魔剣。俺も早く使いこなせるようにならないとな」

「はい、頑張ってください。私も早く貴方とともに戦いたいです」

「頑張るよ。じゃ、君はもう戻ろうな」

「あの、君じゃないです。ミストルテインですよ?」

「でも長いじゃん。じゃ、名前から取って、ミストで良い?」

「良いですよ。けど、私戻りたくないです」

「は?」


え?ちょっと待て、この少女は今なんと言った?戻りたくない?ていうことは、どういう意味でしょう。

…………裸、で付いてくるってこと?

鞘まだ作ってないよ。鞘作るまで待ってくれるよね、流石に…。


「ミスト、鞘ができるまで待って欲しいんだ。早く一緒に旅がしたいっていう気持ちは分かるけどさ」

「…少し、違いますけど。分かりました。3日待ちます。どうか、3日以内に…」

「だってさ、楸?」

「わかったよ。出来るだけ早く作るよ。………だけど、秋は渡さないから」

「お願いします。………望むところです」


うわー、何だか2人から電気がバチバチしているように見えるが気のせいか?


はぁ、ミストと楸ととも、これから上手くやっていかないといけないのに初日からこんなんでいいのだろうか?

不安だ…。俺が何とかしないといけないんだろうな。


と考えて、空を仰いだ。

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