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秋が異世界の空に見惚れていると、横から声が掛かった。
「チュートリアル突破したんだろ?どんなスキル取ったんだ?」
「あぁ、」
呟き、自分が選んだスキルを隣にいる少女に伝えた。
…楸の反応はというと…
たっぷり10秒間、口を開けていた。
「えっと?どうしたんだ、楸。…まさか、敵襲か!?」
俺達はまだここに来たばかりだぞ…
という呟きを聞き、楸は内心不安になってしまった。確かに自分を名付けてくれた良い人だが、こんなにもボケてるなんて…と。
「敵襲じゃないよ。違うよ、ただ驚いただけだ。秋が選んだスキルについて」
「え?なんでだ?良いスキルばっかじゃないか」
「そこだ!そこなんだよ。私が選んでいる時はこんな良いスキルは無かった。くそ、なんで秋だけ」
「え?ちなみに楸はどんなスキル選んだんだ?」
「えーと、魔法適性、賢者、Lvup時魔力値極振りで固有スキルは魔導具作成…だけど」
うん、俺ばかり責められるのはおかしい…やばい楸のくせに笑わせてくれる。と思う、秋だった。
「おい、楸。お前も大概だろ。なんだよ魔力値極振りって、魔法適性も付いて、ただのチートじゃねえか。魔法使いたい放題だろ」
「秋だってなんだよ、換装って何、聞いたことない」
「あぁ、換装はだな。俺の予想が合えば…なんだけど」
一応、秋は手のひらを上に向けて、呟いた。
「換装…魔剣ミストルテイン」
呟き、一応俺の世界で伝説と呼ばれる武器を呼び出す。
そして、5秒もしないうちに手のひらの上には一振の長剣が、具現化した。
うん、思ったとおりだ。一見色は剣の刀身はサファイア、柄はホワイトリリーと魔剣と呼ぶに相応しくない色だが、実は強力な能力が秘められているんじゃないかと俺は思う。
一応、透視の魔眼でミストルテインのステータスを見てみた。
魔剣ミストルテイン(Lv.1):刀身に血液が触れるたびに刃毀れ、斬れ味を回復し、無限に生き物を殺すことを目的に創られた魔剣。剣に魔力を纏わせると、剣先が割れて中から銃身が飛び出る。
あぁ、うん…強いね、この剣…。なんだよ、銃身って…魔法でも打ち出すつもりかよ。
「秋?その剣どこから出した?」
「これが換装だ。一応、武器や鎧、道具を呼び出すスキルなのかな」
「ふーん、良いな。秋は便利なスキル持ちで。それに魔法剣士と合わせるとさらに強くなれてさ」
「は?お前もだろ楸。その、魔導具作成ってのはどんなスキルなんだ?」
「あぁ、うん。少し素材集めを手伝ってくれ。素材と魔力があってこそ使えるスキルだから」
「じゃ、今はめんどくさいから、後でね。まずはステータス確認しないとな」
魔眼を発動し、自分と楸のステータスを確認した。
水城 秋 Lv.1
称号 地球人初の異世界転移
体力:10
筋力:20
敏捷:10
耐性:10
魔力:20
魔耐:10
M P:100/100
スキル
魔法剣士
スキル値倍加
ステータス分配
眷属スキル値倍加
ナビゲーション
固有スキル
魔眼(透視&略奪)
換装
装備
魔剣ミストルテイン(Lv.1)
楸
称号 無し
体力:10
筋力:10
敏捷:10
耐性:10
魔力:50
魔耐:10
M P:150/150
スキル
魔法適性
賢者
Lvup時魔力値極振り
固有スキル
魔導具作成
装備
無し
秋は楸に今見た、ステータスの情報を伝えた。
「ふーん、秋は魔法剣士らしく、魔力と筋力が少し上がっているのか」
「その合計値足しても、楸の魔力量に勝てないんですけど」
「そりゃ、私には極振り付いてるからな。どうだ、羨ましいだろー」
「羨ましいんだけど、超羨ましいけど…俺って略奪の魔眼持ちなんだよね、忘れているだろうけど。そのスキル奪っていい?」
「あぅ…なんだよ…秋はチーターなのか」
あ、楸が悔しそうに俯いた。少し、やり過ぎたか。
まぁ、略奪も実際にそのスキルを発動しているところを見ないと、奪えないんだけどな。
そのことを楸に伝えると、ぱぁっと、晴れやかな顔になり、一言。
「ふん、やっぱり前言撤回。その魔眼使えないな」
頭を思っきり、小突いてやった。
涙目になってしまったが、俺のスキルを馬鹿にした、当然の報いだ。
隣で痛たたた〜と呟いてる、楸は、突然。
「いつか…」
「うん?」
「いつか、その魔剣にあった鞘を魔導具作成で作ってみせる」
とんでもない事言った。魔剣に合う鞘を作る…と。
…いやいや、この剣は別次元に眠っているから、鞘なんていらないんじゃ…
「まさか、そいつ(ミストルテイン)に鞘はいらないと思ってるのか?」
コクりと頷いた。
「その通りだが、その剣にも居場所があった方が、剣も寂しくないと思うぞ」
「は?剣が寂しいだと」
「あぁ、」
楸は一拍置いて、
「それに私が作るのは魔導具だ。その辺の鞘とは一味違う物が出来ると思え」
「例えば?」
「た、たた…例えばぁ!?」
「あぁ…。えっともしかして…?」
「う…煩い。これから考えるとか考えてないからな」
うーん、剣の居場所…か。そんなこと一回も考えたことが無かった。
「ならさ、楸。鞘を作るのなら、お前の想いも込めろよ」
お前の想いがあれば、それだけで、俺のやる気も上がる…
と、続けて言った。
「な!?」
ボシュン、と楸の顔は一瞬で真っ赤になった。
「わ、分かった」
照れているのか、俯きながら、
さらに一言、
「けど、作るまではずっと私といることになるのだぞ。秋はそれでいいのか」
「あぁ、大丈夫だ。そんなこと気にしなくても大丈夫だぞ。あ〜、一応俺はお前を名付けた友人みたいなものだからな」
気にすんなといい、少し朱く染まった頬をかいた。
どうやら、秋は、今まで言ったことがないような、発言をし、自分で照れているようだ。
だが、楸の方はさらにその先を行った。
バタッ
隣で何かが…いや、楸が倒れていた。
「お、おい」
「ふしゅ〜」
顔から、湯気が出るんじゃないとか錯覚するほど、先程よりもさらに紅くなっていた。
それに楸自身も、今の状態を声に出していたからな。
なんというか…やり過ぎたかなぁ。
隣でふしゅ〜と呟き続ける友人を見て、一つ息を吐く。




