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野望

側近アレス視点






ーー少女の美しさに我々は唖然としてしまった。




我々を見上げる大きな瞳は潤みキラキラしており、風に靡く銀色の髪は陽に当たると七色に輝いていた。


なんて美しい…


言葉もなく立ち尽くしていると、双子のカルディアスとメルディアスが1番に我に返り、声を揃えながらクランガウンド様に詰め寄った。


「「だ、団長!この少女は何者ですか⁈」」


この兄弟は、双子ということもあり容姿はほぼ同じだが、兄は右眼の目尻の下にホクロがあり、弟は、鏡に写したように左眼の目尻下にホクロがある。水色の波打つ髪に金色の瞳、身丈は180cmと小柄だがそれを活かし俊敏な動きで敵を翻弄する戦闘スタイルをとっている。


「何者か俺も分からん。ただ、彼女は精霊と会話できるようだ。」


「精霊⁈ 本当ですか!団長!」と好奇心全開で叫んでいるのは、最年少のコルセルだ。ピンク色の髪を伸ばし後ろで纏めている。淡い緑色の瞳を爛々と輝かさせている姿はまだまだ子供だ。魔力量が多いため身体の成長が遅く、身丈は165cmと低い。それが本人の悩みの種であった。



「あぁ、彼女は我々も普通に見えていると思っているだろうがな。」


私はチラリと彼女を見る。


精霊と会話できる少女か…もしかして妖精(エルフ)族かな?いや、でも耳は尖ってないし。



妖精(エルフ)族の特徴といえば、すらりとした四肢、尖った耳、中性的な容姿などがあげられる。が、彼女を見ても妖精(エルフ)族には見えなかった。


(まぁ、ハーフという線もあるか。)



「しっかし、別嬪ですなぁ。」がはははっと豪快に笑うのは今年還暦を迎えるガスパー殿だ。クランガウンド様と同じくらい大柄でムキムキの筋肉。燻んだ赤い髪を刈り上げており、左頬には十字傷、瞳は深い橙色をしている。一言でいえば、野獣のような御仁だ。



「クランガウンド様。この少女を、」


どうなさるおつもりですか?と、続けようとしたが、少女に視線を移すと表情を曇らせ、ペタペタと顔に触れ、不安気な様子だ。


「どうしたんだ?大丈夫かい?」


「「気分が悪いのか!?」」


「少女よ。どうかしたのか?顔には何もついておらぬぞ。」


私、双子、ガスパー殿の順に言い、コルセルはあたふたしている。


すると、我等と目があった少女は、みるみる瞳に涙を溜め何かを堪えるような表情を浮かべた。



な、なんで?!



「「ぇ、ちょっと!何で泣いて?!待って。泣かないでぇ〜!」」


「ガスパー殿の大きな声にびっくりしたんじゃないですか!?」


「ぇ、すまぬ。声がデカすぎたか?」


「皆、君を心配してるんだよ。泣かないで…」


動揺し、詰め寄る我々にびっくりした顔をする彼女に、クランガウンド様が身体を割り込ませ引き離される。


「何を泣かせている。離れろ。」


引き離した少女の頭を、大丈夫か?と苦笑しながらも撫でる手は優しい。

少女は全く怯える様子も見せず無防備に顔を綻ばせて、嬉しそうにしている。


怖がらないんだな、彼女は。


初めて会う者は、圧迫されるような畏怖に足が竦んだり恐怖したり、またある者は「魔王」だ「悪魔」だとクランガウンド様を罵倒する。


初めから笑顔を見せる者は少ない。



彼女は貴重な存在だ。



私は嬉しさのあまり目頭押さえた。






ーーしかし、次に彼女を視界に捉えた時、予想外の場面に度肝を抜かれた。



少女が、クランガウンド様に自ら(・・)抱きついていたのだ!




マジか!!!?!


怖がらないことにも驚いたが。

笑顔を見せた上に、抱きついている?!


こ、これは貴重どころではない!!

稀有な存在だ!!

絶対、彼女は手放してはいけない!

ほ、捕縛!ぃや、監禁!?ぁ、それは犯罪だった。

なんだっけ?あれだよ、あれ!




……そう、プロポーズだ!結婚だ!!!

いや、それよりもいっそ既成じ、ごほんごほんっ……





失礼。……取り乱しました。



しかし、クランガウンド様も満更でもないお顔をしていますし、彼女も満面の笑みを浮かべておられます。




彼女には、是非ともクランガウンド様の御心を鷲掴みしてもらいましょう!

クランガウンド様にもなるべく少女と過ごしてもらい親密になってもらわなければなりませんね。今後のクランガウンド様の仕事量は減らしていきましょう。


ええ。これは決定事項です。


そしてゆくゆくは結婚を。

これは、私の願望であり野望でもあります。

ふふふ。今から楽しみですねっ。








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