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老木

側近アレス視点です。


本日午前10時にアノス山・ウィンクルザームへ向けて竜騎士団員6名で偵察隊を派遣した。

先日、お前も来いとおっしゃられたので偵察隊の中に加わることとなり、部下の1人であるコルセル殿の青竜に便乗する。


アレスは《精霊の森》へは1度も行ったことがないので、胸がワクワクしていた。



クランガウンド様はこの国で唯一、黒竜を従える竜騎士。5年前には陛下より団長を拝命された。そして公爵家の三男。


クランガウンド様…地位や名声はこの国でダントツなんだけど……。


チラリと横を見る。


竜騎士の特徴である顔に広がる燃える炎のような痣、切れ長の鋭く光る三白眼の黒い瞳が輪をかけ恐ろしさを引き出している。


クランガウンド様のお顔を拝見したことのない下級貴族など、この前「魔王が出た‼︎」と騒いでいたらしい。


見た目は魔王だよなぁ…。


この方は基本的に無口で必要以上にはお話なさらなず、言いたいことも呑み込んでしまうことがある(と、最近気づいた)。


しかし、密かにじぃ〜と観察していると何を考えているのか分かることがある。


いやぁ〜、割と顔に出るからなぁ〜クランガウンド様は。まぁ、私も側近に成り立ての頃は畏怖に苛まれて卒倒してたりしたっけ…。


卒倒した私をベッドまで運んでくださったのもクラガウンド様だった。

ただ、その運ばれている姿を見ていた侍女がいて、とうとう魔王の顰蹙(ひんしゅく)を買い私が殺されたという噂が流れた。


後日、母親が突然現れたことにギョッとした。

私の手を握りながら泣き崩れ嗚咽していたが、言葉の端々に「魔王が」「貴方が殺されて」と聞こえてきたので、どんな噂が流れたのか想像がしやすかった。


いやはや、懐かしいことだ…



クランガウンド様に17歳の頃から仕えて始めて、もう7年が経った。

5年前、クランガウンド様が陛下より団長職を拝命された後「お前のおかげだ。ありがとう。」と言葉を頂いた時など嬉しさのあまり泣いて喜んだものだ。


とても、優しい方なのだ。


その優しさに気付こうともしない人が多い。顔が恐いだけなのに。




きっと、いつかあの方に相応しい女性が現れる。





**************





ーーウィンクルザームーー



森の木々が優しく枝を揺らし、葉を寄せ合いながらサラサラと音を奏でている。



森の一角に開けた土地を見つけ、我々はそこに竜を降ろすことに決めた。



ーーその昔。神により大精霊が遣わされ、最初に降り立ったのがこの地だったことから《始まりの森》と呼ばれている。

大精霊により育まれた森からは、虫・小動物・精霊が徐々に産まれ、進化の過程で妖精(エルフ)族・獣人族・人族となった。また、魔力の影響により、魔獣や魔族も産まれている。


長い刻を生きる妖精(エルフ)族により伝承され書き記された《森の歴史》の中にこんな事が書かれていた。


その昔、力に溺れた者がこの森を侵略し焼き払おうとした。

だが、この土地を守護する精霊により強力な結界が張られ被害は最小限で抑えられた。だが、その侵略者は住処を焼かれ怒り狂った多くの生き物達により森を追い出され、その後行方知れずとなった。


結界は50年以上維持され邪心ある者の進入を拒んでいたが、やがて森の中心にある老木がみるみる枯れていくという現象が起こり始め、当時住み着いていたエルフや獣人達は、何もしてあげることが出来ずただ哀しみに暮れた。

結界が消え失せた数日後の満月の夜、突然枯れかけている老木が淡い光を纏い、翌日には桃色の鮮やかな花を見事満開に咲かせていたという。


歴史書には、大精霊が老木に力を与え助けたんじゃないかと書かれていたっけ…。



大精霊かぁ〜。いるなら会ってみたいよなぁ。などと思っていたら、森の奥から歌声が聞こえてきた。







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