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転生





ザンクトガレン大陸の中央にそびえ立つアノス山。


アノス山の中心はぽっかりと巨大な穴が開き、そこには色彩豊かな森が広がっていた。その森を《ウィンクルザーム》という。


若葉が生い茂る森の中で、少し斜めになっている大きな老木が見事な桃色の花を咲かせ、ひときわ大きく太い枝からは水晶に似た球体がぶら下がっている。

球体の中心には、少女が膝を抱えながら淡い光を放つ水の中に浮いていた。

銀色の長い髪は、球体をほぼ埋め尽くし少女の真っ白なすらりとした裸体を隠している。




僅かに右手がピクリと動く。



その数分後、少女の瞳がゆっくりと開いた。




*************




(ぅあ!何、ここ?)



眼を開けるとなにやら大きな球体のようなモノの中に閉じ込められており、銀色の髪の毛(最初はわからなかった)が身体に纏わりつき、さらには水の中だと認識しパニックになりそうだった。


出してー‼︎


球体を拳で叩こうとした瞬間、球体に穴が開き水と共にドバっと排出されお尻を強打。

地味に痛い。青アザになりそう。


『あいたたたた〜。』


打ちつけたお尻を右手で摩りながら、森を見上げた。

ふわっと若葉のいい香りが漂い、少しひんやりとした新鮮な空気を肺いっぱいに吸い込む。



『…帰ってきたのね。』



1000年ぶりの故郷。


しかし、普通の木々より3割増しで大きく見えるのは気のせいだろうか?


振り返ると、見覚えのある老木がでんと鎮座し太い枝からは球体がぶら下がっている。


あ、…


涙で視界が歪む。


『…あの時の老木だ…生きて、いたのね。うぅ。よかったぁ〜。』


頬を涙がつたっていく。


『……か、さま……かあさま?』


どこからか女性の声が聞こえる。


だ、だれ?…


突然聞こえてきた声に反応し、涙を拭い周囲を警戒した。



『かあさま…会いたかった。会いたかった、です。』


涙声になる女性の声。その声は老木から聞こえている気がした。


恐る恐る近寄り木の幹に触れてみると、触れた箇所が七色に光り、中から金髪美女が半透明の状態ですり抜けてきて、ガバ!っと抱きしめられる。


『あぁ!かあさま〜!』


美女の胸に顔が半分埋もれる。

何て見事なバスト!いっ、息が苦しい…。

パシパシ叩くと腕を緩めてくれた。


美女を下から見上げながら聞く。


『かあさまって。私のこと?』


『はい、かあさま!ずっと待っていたんです!私を守る為に力を…ぐすっ。私、ずっと、かあさまに。ぁ、謝りたかった、んです。』


改めて美女を見る。

………なるほど。老木と美女の波動が全く同じだ。美女は老木に宿る精霊なのだと理解した。瞳からこぼれ落ちる涙は宝石のように綺麗だ。波打つ金色の髪は、光に当たるたびキラキラ輝いていてうっとりする。細い身体には丈の長いワンピース。初め見た時は半透明だったのに、今は透けていない。

どうなっているの?

よく分からないが、この精霊は悪い者ではないと本能的に思った。

泣いている美女の身体を優しく抱き返す。


『泣かないで。私はあなたを守れたんでしょ?よかったわ、あなたが無事で。あの後どうなったのか全然分からなくて心配してたのよ。』


『うぇ、かあさまぁ〜』


子供の様にわんわん泣き出す美女。

マーニャは泣き止むまで静かに寄りそっていた。






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