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両親②



……目の前には美味しそうなお菓子が並べられ、テーブルの向こうには大好きなクランが座っている。

マーナがお菓子に手を伸ばすと、テルモアが綺麗な花柄の模様が描かれたティーカップに紅茶を注いでくれた。


幸せで顔が緩む。


あまりの美味しさに次々に口にお菓子を放り込んでいく。

お腹が満腹になり、もぅ食べられないわと言うと、テルモアにクスリと笑われた。


マーナが口の周りについていたお菓子の粉をぺろりと舐めとると、熱い視線がビシバシと突き刺さってくる。が、こんな視線を送ってくる人物は1人しかいない。

視線の先を恐る恐る伺うと、クランに欲望を孕んだ瞳で凝視されていた。

美味しそうな獲物を見つけた狼のように瞳がギラギラ光っている。




「ク、クラン様、あまり見ないで下さい…」


「マーナ、可愛いな。……お菓子は美味しいかったか?」


「う…はい。お、美味しいです…」



「俺も食べたい。食べさせてくれ。」



お、お菓子のことだよね?

……違う意味に聞こえるのは気のせいだろうか。


クランは椅子から立ち上がりマーナの隣までやってきたかと思うと忠誠を誓う騎士のように跪き、マーナの手を掬いとる。

ちゅっと音を立てて口付けを落とした後、味見をするかのようにねっとりと手の甲を舐められる。

クランからは男の色香がダダ漏れはじめ、上目遣いでマーナを誘惑してくる。


うきゃぁぁああ!!!

て、手を舐められたぁ!?

た、食べたいのはお菓子よね?!

私じゃない!!

おおお、お菓子に決まってるわ!!


激しい羞恥に震えながら、近くにあったクッキーを掴みクランの口元へ持って行くと、逃がさないとばかりにガシッと手を掴まれた。


クランの瞳がキラリと光る。


ぷるぷる震えるマーナの指ごとお菓子をパクんと咥えられる。


「マーナの指は甘いな。」


お菓子を食べ終わっても手を解放してもらえず、何故か指を1本1本丁寧に舐められる。


………んっ


指にも性感帯があるのだろうか…マーナは体の中心が熱く疼いてくるのを感じ、足を擦り合わせた。


「あの、お願い。手を、離して?」


「嫌だ。あぁ、早くマーナが食べたい。結婚式も終わったんだ。もう、我慢しなくてもいいだろ?」





………えっ?結婚式まだ、だよね。

あ、もしかして、これは夢?

なぁんだ。夢か〜、びっくりした。



「……だから。ん?マーナ、聞いているのか?」


「え?……あ、はい!」


「……聞いていなかったな?」


「き、聞いてました!聞いてましたよ!!」


「嘘だな。そんな嘘つきにはお仕置きが必要だ。」


「えぇっ、お仕置き!?クラン様、私ちゃんと聞いてま、ぁ、はぅ……んぁっ……」


急に立ち上がったクランの大きな体に包み込まれ強引に口の中を蹂躙される。満遍なく口内を掻き回され舌を吸われると、甘美な刺激に酔ってしまい頭がぽ〜としてくる。

口の端から溢れ伝っていく唾液まで舐めとられ、マーナはこのまま身を預けてしまいたくなった。



こんな夢見るだなんて、私、欲求不満なの?!


夢だと分かっていてもクランに求められ嬉しく感じてしまうマーナ。

口の端にちゅっと音を立て離れようとするクランに未練がましく縋りついてしまい、クスリと笑われた。




「マーナ、俺が好きか?」




マーナはこくりと頷く。



好き。

大好き。

愛してる。

だから……お願い。離れないで。

私を、離さないで。

ずっと、側にいて。



クランの首筋に顔を埋め、心を込めて囁く。




ーー「クラン様、大好きです。」






**********





……何だかふわふわする。



目を薄っすら開けると、目の前にはクランの顔が…。


マーナはいつものように片腕で抱えられていたのだが、まだ夢の続きを見ているのだと勘違いしたマーナは、クランの首に腕を絡め自分の体へと引き寄せた。

甘えるように自分から唇を奪うと上唇、下唇、口内と順に舌を這わせ堪能した。

甘い溜息を漏らすと、クランの体がビクッと震え、マーナを抱きしめていた手に力が込められる。



「……クラン様、愛してます。」


クランの首筋にキスをしながらぽつりと呟くと、どこからかごほんごほんと咳払いが聞こえてくる。


………ん?……


顔をあげ寝ぼけ眼で辺りを見回すと、見たことがないような豪華な家具や大きなシャンデリアが目に飛び込んでくる。


……どこ、ここ?


突然、知らない場所へ連れて来られたような錯覚を起こす。

助けを求めるようにクランを見上げると、耳を赤くに染め、口元を手で覆っていた。

マーナは下から見上げる格好になるため指の間から口元が見えている。


クラン様、照れてる…の?


クランに肩を人差し指でトントン叩かれ、あっちを見ろというように指を指される。指先を辿ると2人の男女と目が合った。


……だ、誰?


女性は胸を強調した黄色いドレスを着こなし、キラキラした瞳でマーナを見つめていた。

男性は見事な口髭を撫でつけ、興味津々という風にクランとマーナを交互に見て、ニマニマしている。



この男性、誰かに似ているわ。

……ん〜、誰だったかしら?





「……マーナ、俺の両親だ。」



………俺の、両親?


………クラン様の、両親?




ーーー!!!???



夢から現実へと引き戻されたマーナは、クランのご両親に挨拶に来たのだと思い出し青くなる。

クラン様、テルモア、起こしてよぉ!と自分の寝相が悪いのを棚に上げ心の中で叫ぶと、クランの腕の中から慌てて逃げ出し立ち上がる。


突然立ち上がったマーナに3人の視線が集中する。



ご両親に、挨拶しなければ!

あ、何て言うんだっけ?!

あぁ、ちゃんと考えてたのに、綺麗すっぱり忘れちゃった!

と、とにかく挨拶しなきゃ!!



頭が真っ白になり言葉が出て来ない。



そして、何も頭に浮かばないまま大声で叫んでいた。









「は、初めまして!!私はマーナと言います!!



クランガウンド様を私にくだしゃいっ?!!!」














おもいっきり舌を噛んでしまい、涙が溢れた。








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