告白③
視点がいろいろ切り替わります
「それから、タエは87歳で天寿を全うしました。でも、その3日前に不思議な夢を見たんです。そこで、ふらふら揺れる光の玉に触れた時に大精霊としての記憶を取り戻した私は、あの世界はどうなったのかなって思いました。すると、神様が現れて帰りたいと望むのならザンクトガレンへ行かないかって提案され、私は行きたいと願いました。」
ーーそして再びこの世界へ戻り、あの森でクランガウンド様…あなたに出会った。
「私は、この大陸を見て回ってみたい。頑張って植えた大地が、今どうなっているのか知りたい。初めてあった時、あの老木に宿る精霊から、クラン様が竜騎士だと知らされた。クラン様に着いて行けば、竜に乗って大陸を自由に見れるかもしれないと思ったんです。」
ーー利用しようしたの、あなたを。
私は卑しい女だ。
それなのに、クラン様に好かれたい。愛されたいと願っている。嫌な女だ。
「言いたい事は終わったのか?マーナ。」
震え続けるマーナの身体を包み込むように抱きしめ、耳もとに吐息交じりに囁くクラン。その刺激に思わず、んぁっと甘い声を上げてしまい赤面しながらも、ふるふると首を横に振る。
「……まだ、言わなければならないことがあります。」
「…………」
クランの体を軽く押し、顔を見上げる。
「……私、子供が産めない身体、なの。」
「……それは、」
「いぇ、それよりも…。
ーーー私……人間じゃないの。」
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「………人間じゃない…?」
どういうことだ?
マーナの身体をマジマジと見下ろすが、どこからどう見ても人間にしか見えない。
人間じゃなかったら、なんだ。
……精霊か?
しかし、精霊なら実体などないはずだ。マーナは一体、何者なんだ?
「私の身体を構築する際に使用した媒体は魔物。その器にマーニャの魂を入れたの。……私は化物なの。」
ーー魔物?……化物?
子供ができない親なんていくらでもいる。
マーナが産む子供なら、さぞかし可愛いだろうと想像し悶えそうだが、子供が望めなくてもマーナを独占できるならそれでいい。
だが、飛び出してきた言葉は……魔物。
クランは少しの間困惑したが、瞬時に考えを霧散させた。
マーナが何者だろうが関係ない!
「マーナはマーナだ。精霊だろうが、魔物だろうが、子供が産めなくても、俺はマーナを愛している。世界のどこへだろうが、望むままに連れて行こう。だから、お願いだ。俺の前からいなくなったりしないでくれ。」
ずっと俺の隣で笑っていてほしい。と懇願するクランに、マーナは驚愕し目が零れ落ちそうなほど見開いた。
声を出せず口をパクパクさせてしまう。
チラチラ見える甘そうな舌に誘われて、貪るように深い口付けをした。
マーナに口付けをしたのは初めてだ。苦しそうな声が漏れ聞こえてくるが、抵抗するそ振りを見せないことで、調子に乗ってしまい止まらなくなった。
はぁっと漏れるマーナの艶めかしい声に欲情してしまいそうになる。最後にちゅっと音を立てて唇を離すと、艶を帯びた潤んだ瞳で見つめられた。
瞳の縁から、ぽろぽろと涙を流すマーナは綺麗で、たまらず抱きしめた。
こんなに俺を惚れさせて、この子は俺をどうしたいのだろうか?
「ク、クラン様…もう1度言って…?」
何度でも言おう。
「マーナ、君が何者でも関係ない。愛してる。」
顔中にキスの雨を降らせ、マーナが眠りにつくまで愛を囁き続けた。
「ふぇっ……うわあぁぁぁーん!」
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「マーニャ、良かったね。」
真っ白な空間に神様が立っている。
慈愛に満ちた瞳で、本当に良かったね。と微笑んでくれる神様。
夢の中でもほろほろと涙が流れ止まらない。
「さぁ、君の願いを叶えよう。番いに選んだのは彼で間違いないね?変更は不可だ。準備はいいかい?」
「はい。お願いします。」
バっと手を広げる神様の胸に閉じ込められたマーナ。
2人を包み込むように魔法陣が現れ光を放つ。神様の口からは、長い詠唱の呪文が聞こえたが、早すぎて聴きとることは不可能だった。次第に光は薄くなり魔法陣も消え失せ、閉じ込められていた体を解放された。
「これで君は『彼の子を宿すことが可能』となった。だが、妊娠する確率はかなり低いよ。」
「分かっています。『愛する人の子供を産みたい』っていう私の我儘を叶えて下さってありがとうございます神様。でも、クラン様には『子供ができるかもしれない』ってことは言わないでおきます。期待させるだけ期待させて、やっぱりダメだった何て言えませんから。」
「本当は、彼と同じ人間になりたいのだろうが、叶えられなくてすまない。マーニャの魂は人間の媒体に降ろすことは不可能だったんだ。」
「……ええ、私の魂は特殊で、魔力がない人では定着しないんですよね…?でも、あの世界に戻りたいって言ったのは私です。後悔はしていません。」
そう言い切ったマーニャをそっと抱きしめる神様。
「幸せにおなり、娘よ。」
額のこめかみに口付けを落とされ微笑む。マーニャもお返しとばかりに頬に口付ける。
「もちろん、幸せになるわ父様」
本当に感謝してます。
私を生み出してくれた神様に別れを告げ、クランのいる現実へと戻った。
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ーー翌朝。マーナはベッドの上で昨日あった事を思い出し身悶えていた。
酔っぱらいの男のことは綺麗すっぱりと忘れてしまい、クランの甘い口付けと愛を囁く言葉のみが、脳内を駆け巡り、マーナは幸せの余韻に浸った。
ーー私を受け入れてくれてありがとうございます。愛しています。クランガウンド様。




