表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/29

告白①








ーープロポーズの返事をする前に、私はクラン様に話さなければならないことがあります。





クランの一世一代の告白後、屋敷にもどるまでの道中、無言で俯き深く考え込んでいたマーナは、屋敷に着くなりクランにそう言い放つと、私の部屋まで来て下さいと強引に手繋ぎ歩きだした。


心配そうに後ろで見守っていたテルモアに「クラン様に大事な話があるの。後は自分でするから大丈夫。だから休んでいて」と言って下がってもらった。


プロポーズの返事をもらえずソファーで意気消沈しているクランに紅茶を淹れ差し出すと、マーナは少し間隔を空けて隣に座ろうとした。が、それを目敏(めざと)く見ていたクランに瞬時に横抱きにされた。

あわあわするマーナだったが、離さないとばかりに頭を胸に押さえつけられると、次第にとくんとくんと聞こえてくる心臓の鼓動に安心感を覚え、自然と凭れかかった。


「…話とは何だ?」


「…………私の、過去の話。」



クランが驚きで目を見開く。


とうとうこの日がやってきた……。

嫌われたくない…だけど…


「………イカれた女だと思われても仕方のない話を、今からしなくちゃ、ならない。……でも、本当の話だから聞いてほしい。」


縋りつき身体を震わせると、頭上で少しホッとしたような溜息が聞こえた。


「……今まで、マーナの出自について一切問わなかったのは、マーナの口から直接聞きたかったからだ。いつか、話してくれる……と思い待っていた。」


でもまさか、プロポーズの返事の前だとは思わなかったがな。もう少し早く言ってくれると思っていた。と苦笑するクラン。


「……うん。クラン様が待っていてくれてるって分かってたけど………私に、勇気がなかったの。………嫌われたく、なくて。」


「!?……嫌うものか!!俺はマーナを、」


「クラン様。今からする話をし終わった後、あなたに好かれる自信が、私にはないの。……ないのよ。」


強い口調で言葉を遮ったマーナは、涙を浮かべた顔をクランの見せたくなくて、広い胸に顔を埋めた。






小さく鼻をすすったマーナは、小さな声でポツリとクランに問う。


「クラン様、ザンクトガレン大陸の神話を御存知ですか?」


「………神話ってあれか?神が遣わした大精霊によって大地は造られ、その大地から精霊や動物が生まれ、やがては我々人族や、獣人やエルフや魔族が生まれた。という話か?」


「……えぇ。」


「…それが、どうかしたのか?」






「……その大精霊。……私なんです。」







***********







ーー私は、孤独だった。





何もない大地にぽつんと降り立ったマーニャ(マーナ)


だだっ広い土地をただひたすら見つめ、神から与えられた仕事(神の力を宿した木を植えること)を一心不乱に行った。




何年も。


何十年も。


何百年も。



休むことなく、ただ木を植え続ける毎日。

感情などありはしなかった。

緑が広がっていく様子を眺めても、何も思わなかった。



ーー約3000年くらい経った頃。


感情の欠片もみられないマーニャ(マーナ)の周りには、いつの間にか精霊や小さな動物が集まるようになっていた。


擦り寄る動物から、時々『母様』と念話が聞こえてくるが意味がわからず無視した。


その後、何千年もの間大陸中を飛び回り、ひたすら木を植え続けていると、二足歩行する動物が見られるようになった。


やがて、耳の尖った者や黒い翼をもつ者が見受けられるようになるが、この時のマーニャ(マーナ)にとっては横目でチラリと見て通り過ぎるくらい、どうでもいいことだった。




ーー使命だけしか頭になかった。





マーニャ(マーナ)が自分の力がだんだんと衰えてきていると感じ始めたある日、いつもと様子の違う精霊が多いことに気付いた。

誘導されるように着いて行った先にあったのは、枯れかかった老木。


見事な桃色の花を咲かせていた木は、花などなく葉は枯れ落ち、大きな幹を傾け今にも根元から倒れてしまいそうだった。

老木に近づくと、神力がほぼなくなった状態であることが分かり、それと同時にこの老木が、自分が1番最初に植えた木であることを知った。


ーーこの時、始めてマーニャ(マーナ)に感情が生まれた。


私は、この木を助けたい。

……枯れてほしくない。



………生かしたい!




すぐに神力を注ぐことに全力を尽くしたマーニャ(マーナ)だったが、思っていたよりも自分の力が衰えていたことに愕然とした。


力を注ぎ出して数日後、とうとう神力が枯渇したのか、身体に力が入らずぺたりと座り込む。

ぐらんぐらんする頭を無理矢理起こし老木を見上げると、持ちなおすくらいには力を注げたようで、次々と芽が出ているのが見てとれた。



ーー助けられたのかな…?



……だんだんと意識が遠のく。


力の入らなくなった身体を静かに大地に横たえると、マーニャ(マーナ)は満足した顔を浮かべ永遠の眠りについた。





************





クランの瞳は、信じられないと訴えている。


……それもそうだろう。


自分も当事者でなければ、頭がおかしくなったイカれたやつだと感じてしまう。



ーーだが、まだ話終わりじゃない。



……話すのが……怖い。



震わせる身体を抑えつつ、マーナは深呼吸を1つすると更に話を続けた……。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ