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神様




「お久しぶりですね。マーニャ」



少し目尻を下げて微笑みを浮かべる神様。

サラサラとした腰まである艶やかな金髪、海のような青い瞳。見ためは20代後半。まるで絵本の中から飛び出してきたかのような王子様的容姿。


記憶の中に存在したマーニャという名前は、私の前世での名前。とっても懐かしい。



「神様、お久しぶりです。(タエ)は、もしかして死んだんですか?コタツでぽっくり?」


神様は首を横に振る。


「いえ。まだ亡くなっていませんよ。でも3日後には寿命を迎えます。」


「あらら……3日後ですか。」


昨年から、心臓が弱ってきているという話はお医者様から聞いており精密検査を勧められていたが断り、延命治療も拒否。

最近では、動機・息切れ・胸痛など様々な症状が起こっていた為、死が近いことを本能的に理解していた。


しかし、まだ3日()ある。


今迄お世話になった人達に挨拶をしたい。

お礼を言いたいのだ。

私、3日後に死ぬんですよ!なんてことは言わないが、あんな事やこんな事があったね〜と少し昔話に花を咲かせながら語り合い、そして静かに死を迎えたい。


「神様。」


「何だい、マーニャ?」


「ありがとうございます。3日の猶予を下さって。」


「いや、お礼なんて。……本当は、もう少し早く現れる予定だったのだが、すまないね。」


「いいえ。私、嬉しいんです。マーニャの時はお礼を言える時間がありませんでしたから。」


「あぁ、そうだったね。あの時は君は、あの老木を守ろうとして力を使い果たしたんだったね。」



そうなのだ。



前世の私は、ある老木を守りたいがためにありったけの力を注ぎ込んだ。力を使い果たし力尽きた私は、そのまま意識を失い永眠。

それからの記憶はない。


その後、どうなったのかわからないままである。



「神様。あの後どうなりましたか?」


「気になるかい?」


「はい、とっても。」


「なら、もう一度行ってみるといい。」


「…え?」


告げられたまさかの提案。


もう一度行けるなら、行きたい!


…でも、マーニャの時のようなお仕事をしなくてはならないのか?それってかなり大変だ。


そういえば、今更だが前世の私っていったい何者だったのか。羽も生えてたし、精霊?みたいな姿だったなぁ。途中から正確に歳を数えなくなってしまったが、何年生きたのだろう?


「神様。あの、今更なんですが、マーニャは何者だったのですか?精霊とかですか?神、じゃないですよね?」


思いきって尋ねてみる。


「マーニャは大精霊だよ。《始まりの精霊》と言われている。何もなかった大地に木を植えて回り。少しづつ緑が増えていったことで虫や動物や精霊も増え、やがて進化し妖精(エルフ)族や獣人族・人族も生まれた。500年前くらいには魔獣や魔族も産まれたよ。最近では、竜が誕生したよ。最近っていっても200年前くらいか。マーニャがいなかったら生まれていなかった者達だ。君は、いわば母親だね。」



母親……。



神様の言葉にじぃ〜んと胸が熱くなる。

300年以上にもおよぶ大変なお仕事がそんな進化をもたらしていたなんて!


ファンタジー!


頑張ったんだわ、私。と感慨にふけっていたが、ハッ!とする。


「神様。あっちへ渡ってまた使命とかあるのですか?大地が弱ってるから、大地に力を!(巫女的な)とか、魔王が現れて悪の気が充満して…だからなんとかしてくれ!(勇者的な)…なんて。ないですよね?」


どこからそんな発想が、とクスクス笑う神様。使命とかないですから安心しなさいと頭を撫でられた。


日本では、そういった類いの小説とかいっぱいありましたので、心配になっただけですよと、頬を膨らませた。


「ただ、あちらでは1000年以上たっていますから、マーニャもわからないことが多いでしょう。相談役がいますので、わからないことは聞いてください。」


「相談役って……」


誰ですか?と続けようとしたが、手で遮られ。行けば分かりますよ。と微笑まれ何も聞けなくなってしまった。


知ってる精霊とかかな?


「あ、マーニャ。今迄頑張ってきたご褒美を差しあげようと思うのですが、何か望みはありますか?ひとつだけ叶えましょう。」



望み…。


日本に転生した私は、好奇心旺盛でやりたいことは何でもやってきた。その為、すぐには思い浮かばず悩んだ。


「ある程度は自分で何でもできますし……あ、神様。マーニャの能力は同じに使えるのですか?」


「多少制限するけど、使えるよ。」


なら、特に能力はいらないか。

マーニャ時代に特にやり残した事はないし。

タエでやり残した事といえば……。


「〜ん。あ!そうだわ!私の願いはーーーーーーーーーーーーで、お願いします。」



神様は困惑の表情を浮かべた。



「それでいいのかい?」




「はい!」と、私は満面の笑みを贈った。






***************





3日後、無事に挨拶を終えた私は、再びザンクトガレンへ戻ることとなった。





ブックマーク・評価して下さってありがとうございます。


ビビリな書き手ですので、感想は受け付けないことに致しました。

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