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薔薇




目を開けると、そこは天蓋付きの大きなベッドだった。


(ここは、どこ…?)


周囲を見渡すと、部屋は広く天上は高い。

設置してある家具は細やかな細工が施してあり、床には高そうな絨毯が敷かれてある。



(なぜ、ここに?……あ、そっか!竜に乗ってあの山を降りたんだわ。クランの腕の中が心地良くて寝てしまったのね。どのくらい寝てたのかしら?寝顔、見られたわよね?ヨダレ出てなかったわよね?)


ヨダレを流して眠りこけている自分を想像し、頭を抱え身悶えていると、部屋のドアが開く音が聞こえた。


視線を向けると恰幅の良い中年の女性が薔薇を手に持ち入室してきた。


「お嬢様、起きてらしたんですね。おはようございます。見てください、見事な薔薇ですよ。今年の花はみな香りが良く色も鮮やかでございます。」


薔薇はお好きですか?と、花瓶に活けながらニコニコと話す女性。

話している内容は分からなかったが、綺麗な薔薇でしょ?と言っているのではないだろうか?


『とても綺麗ですね。』と笑うと、まぁ!と笑顔になる女性。


薔薇を活け終ると、ゆっくりと私に近づき自分の胸に手を当てた。


「テルモアと申します、お嬢様。」


「テルモアですよ。」と何度も告げる女性。


そういえば、クランに名前を教えてもらった時も胸に手を当てていたなと思い出し、告げているのがこの女性の名前なのだと思った。


「テ・ル・モ・ア」


「ちぇ・え・も・あ?」


「テ・ル・モ・ア」


「てぇ・るぅ・も・あ」


「はい、テルモアです。よろしくお願い致します、お嬢様。」


背筋を真っ直ぐ伸ばし、美しいお辞儀を見せるテルモア。


「早速ですが、お着替えを致しましょう。先程、クランガウンド様より連絡がございました。後、半刻ほどでいらっしゃるそうですよ。」


着替えましょう、というように自分の服を少し掴み揺らす。


(着替えかな?)


手を優しく引かれ、促されるままベッドを降りクローゼット(であろう)前までやってきた。

テルモアが扉を開けると、色とりどりのドレスがズラっと並んでおり、思わず『うわぁ』と声をあげてしまった。


「クランガウンド様がお嬢様をこちらへお連れになった時、お迎えに出ていた使用人達は目を見開いて驚いておりましたよ。」


もちろん、私もですが。とクスクス笑うテルモア。

私は、声をあげたことに対して笑われたと勘違いして、顔を赤らめた。





クローゼットの左を見ると大きな鏡があり、チラリと覗き込む。


(あ、私ってこんな顔をしてたのね。いったい今何歳なのかしら?15?16?若いって素敵ね。)


ペタペタ顔中に触れ、変なところはなさそうだとホッとする。





テルモアが2枚のドレスを手にしている。


胸に小さめのリボンがついている全体的に華やかなピンク色のドレスと、ウエストラインに大きなリボンのある落ちついた青色のドレスだ。


「お嬢様、ピンク色と青色どちらがお好きですか?」


どちらに致しましょう?と首を傾げるテルモア。

選んで、ということだろう。私は落ちついた青色のドレスを指差し、着付けてもらった。


着付けが終わると、次はお化粧ですね。と化粧台まで移動する。


「お嬢様はお肌が綺麗なので、薄化粧に致しますね。」


化粧も終わるとまた鏡の前まで移動し、全身を写す。上から下まで眺めテルモアは笑顔を溢れさせ「とてもお綺麗です。」と言った。


綺麗なドレスを着て嬉しくなり、お礼を告げるためくるっと振り返えり姿勢を正した私に、キョトンした顔を見せる。


ドレスの裾を少し掴み、テルモアのお辞儀を真似ながら『ありがとうございます。』とお礼を言った時、自己紹介していなかったのを思い出し、胸に手を当て「マーナ」と告げた。


テルモアは頷きながら、

「クランガウンド様より、お名前を伺っておりました。これから、マーナ様とお呼びしても宜しゅうございますか?」


自分の名前が出たことに笑顔で頷く。

そんな私を見て、慈愛に満ちた微笑みを浮かべた。



テルモアさんの笑顔は魅力的だわ。と思っていると、どこからか鈴の音が聞こえてくる。

どこから聞こえてくるのかしら?とキョロキョロする私。



音が聴こえた方に視線を向けながら「クランガウンド様がお越しになられたようです。」とテルモアは微笑んだ。






ドアが開いた先に、クランがいた。









今日からまた仕事。

ゆっくり進めていきます。

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