崩れ去る未来01
「鬼ごっこは終わり?うさぎさん」
絶望の足音と共に近づいてくる声。……逃げ切れない。
「もう……無理だよぉ…」
思わず弱音を吐いてしまいその場に崩れ落ちる。
その姿をみて青年は耐えられなくなったのかギュっと拳を握りしめ微笑みながら少女に言う。
「俺が…あいつを止める。お前はその間に逃げろ。3.2.1でいくぞ……立て!」
少女は涙を浮かべながらその青年をみる。
行って欲しくないけど声が出ない。止めたいけど体が動かない。どこか心の底で自分だけが助かりたいと思っているのだろうか。結局人間はそういうものなのだろうか。
「覚悟を決めろ俺!よし……いくぞ!3…2…1……」
青年はグッと全身に力をいれ向かってくる敵に猛ダッシュで突っ込む。
そう、それこそ意味のない体当たりだが、時間を作るため何もしないよりはマシである。
「うおおおおおおおおおお!!!」
獣のような雄叫びをあげ青年はさらに加速する。
「つまんないうさぎさん。もう逝っていいよ」
少女にはわかった。このままだと青年は死ぬ。
「ダメ……行っちゃ…」
かすれた声で必死に叫ぶもその声は届かない。
「神様……どうかお願いします……私に力を下さい。例えこの体がどうなったって構いません……だから……せめて…人を1人…大好きな人を救える力を下さい!!!」
例え自分が死んだっていい。この世から消えて存在がなくなってもいい。だから…せめて大好きな人だけは生きて欲しい。救いたい。
その時だった。まるで祈りが届いたかのように不意に頭の中で声がした。
「本当に大好きな人を救いたいなら誓え。自分の体がどうなったって構わなく、力が欲しいと言うのならな……」
ドクン…と心臓が響く音が聞こえあたりがしんと静まり返ったような気がした。
「大好きな人を救え……。貴様に黒の能力を宿してやった。」
そして声は消えた。