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星の断章  作者: 星咲 美夜
一頁目
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いつもの仕事

あれから数日後。僕は相変わらず図書館で見回りとかをしている。やっぱり僕はこの仕事の方が気楽でいい気がする。


亜星(あかり)さん、あの後はどうなったんですか?」

「何がですか〜?」

「数日前の」

「あ〜、アレですか?」


相変わらず図書館の受付で本を読んでる亜星さんに、僕はため息を一つついた。一体、何の話だと思ったんだろう。


「アレはですね〜・・・事情を話して、ちゃんと依頼人から報酬はいただきましたよ〜?」

「ああいう事で、解決した事になるんですか?」

「まぁ、それも依頼人の希望でしたからね〜」


本から視線を外すことなく、のんびりと彼女は僕の質問に答えていく。


「ちなみに報酬っていうのは?」

「この本です〜、この間この作家さんの新作が出てまして〜」


嬉しそうに亜星さんは一冊の本を取り出す。まーたこの人は、こんな事で本を増やしたのか。っていうか、その一冊の為にあんな危険な事やってるのか。本当にこの人は何を考えているのか、僕には理解できない。


「うふふ、理解できないと思っていますね〜?」

「亜星さんは何を考えてるんです?」

「特に何も考えてませんよ〜」


その言葉に僕は拍子抜けする。何も考えてないなら、最初から理解なんてできないじゃないか。


「ふふっ、わたしは基本的に何かを考えて行動というのは、しないのですよ〜?」

「それは危険すぎやしませんか?」

「わたしの仕事は『情報』に頼ることが多いでしょう?」

「それはそうですが」

「それに『情報』の真偽は、わたしが一番知っていますから〜」


彼女は『情報』が真実か虚実かも見分けることができる。だからこそ『情報』に振り回されることもないし、考えなどなくても状況によって適切な行動も可能なようだ。


「わたしは《情報屋》なのですから『情報』を扱うのに、そこにわたしの『考え』や『感情』があってはいけないのです~」


ニコニコと笑顔で説明してくれるけど、僕には難しい。それは彼女の信条なのだろうか。


「亜星さんはそれでもいいかもしれないですが、僕が困ります」

「それもそうですね〜」


本当にわかってるのかどうか疑わしいが、彼女は何かを考えている。


「僕は亜星さんの為に何ができるんですかね?」

「今のままでは特にありませんね〜」


特にありませんって、それじゃダメじゃないか。酷い。


「貴方は貴方らしく、のんびりとやっていけばいいのですよ〜」

「・・・じゃあ、僕はいつも通り見回りしてきます」

「ついでに返された本を戻してきてくださいな~♪」


相変わらず彼女は分厚い本を何冊かまとめて僕に渡してくる。また重いんだ、これが。


「わかりました」


今はこれが僕の仕事。まだ僕はどうしようもないくらい無力だ。それでもいつかは僕も彼女の助手として、何かできるようにならないといけないだろう。


「僕らしく、か」


今度、個人的に《窓口》さんの所に行くか。僕自身はできることを増やしたいけど、何ができるかわからない。一応、相談っていう事で。


「そうなると、向こうの予定も聞かないといけないな・・・」


予定を考えながら本を戻している途中で、また僕は気付いてしまった。


「アレ以外にも本が増えてるじゃないか」


全く、困ったものだ。まぁ、亜星さんがいいなら別に口出しはしないが。この図書館の管理人は彼女だし。静かな図書館に僕の靴音だけが響く。静かすぎるこの状況にも、もう慣れた。僕は本を戻しながら見回りを続ける。今日も見回りだけで僕の一日は終わった。

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