二十話目 過去と補習
遅れました!!!言い訳はしません!全部自分が悪いんです!
Side 静
戦闘が終わって二人が近寄ってきてこう言い始めた。
「もしかしたらと思ってたけど、シズカが戦士を二人も倒していたんだ・・・。」
「静、あいつらの顔見たか?魔法使いに近接戦で負けて、泣いてたぜ・・・。」
「でも向こうから挑発してきたんだからね?普通褒めるところじゃない?」
―――瞬がロークと戦闘中、静の状態―――
兄さんが安い挑発に乗ってから、ロークのチームの戦士二人が戦闘中なのに武器をしまってこちらに歩いてきた。
「な、なあ、きみ?」
「どうしたの?いまは一応戦闘中だから、あまり無防備にしないほうがいいですよ?」
「あ、いや、さっきのあいつの発言って本当のことなのか?」
「兄さんの『自分たちが貴族じゃない』ってことですか?
そうですよ、ぼくたちは貴族じゃありませんよ。」
急にそんなこと聞いてきてどうしたんだろう?
「やっぱりそうだったか・・。
いや、確かに俺たちは貴族を嫌ってる・・・というか平民で貴族を支持している奴はいないが・・・。だからこそ、貴族かどうかなんて見ればわかるんだ。」
「じゃあなんでぼくたちのことをあんな風に?」
「名前が名前だけじゃなかったからだ・・・ああ、名字があったからということだ。」
「この国じゃ、名字があるのは『貴族・有名な大商人・ギルドランクA』保持者の主に3つだからな。」
「貴族以外も名字があるんですね・・・。」
だったらなおさらです。
商人は有名どころですからまだわかりますが、Aランクの可能性を疑っていくのが普通になりそうです。
「なぜAランクか疑わなかったか?
それは、Aランク保持者の周りで何かあると国はそれを公表するからな。」
「たとえば、結婚とか子供が生まれたとかだ。
そしてその記録には、この年に入ってくるAランクの子供はいないとなっていた。」
「それで没落貴族と・・・。」
「ああ、あのときは済まない。
バカなことをした、少し考えれば分かることなのにな。」
「俺からも謝っておく、すまない。
ロークとは孤児院時代からの付き合いだが、あいつの言うことは当たった試しがないのにな。」
ロークさんと兄さんは結構似てる気がします・・・。
「で、どうするんですか?戦いますか?」
「・・・そうだな、せっかくAクラスの人と戦えるんだ。」
「俺ももちろんやらせてもらいます!こんなことありませんから!」
「それはいいですけど・・・まさか、魔法使いの女の子相手に戦士二人で戦おうなんてしてませんよね?」
「「そんなこと思っていませんよ!?」」
「・・・じゃあどちらから戦います?」
「「・・・俺からでいいか(な)?」」
どうやら決まりそうにないです・・・。
今のうちに魔法を詠唱しておきましょう、武器強化の魔法ならそんなにかかりませんし。
場面は戻って戦闘後・・・
「で、一人目を近接戦闘で倒し、もう一人を近接戦闘中に詠唱した魔法で相手のSPDを下げてこれも近接で倒す・・・・。
なんか自分より目立ってないか?」
「・・・シュンの戦闘に目が行ってて、全員が最後しか見てなかったみたいですよ・・・。」
ぼくは兄さんみたいに後先考えずに戦いませんから、目立たずに戦えてました。
でもこれでぼくたちがAクラス居ていい人たちだと分かってもらえればいいのですが・・・。
試合が終わり、全員がレーベル先生の周りに集まる。
そして、先生は静かに話しだした。
「・・・お前ら、わかったか?
俺の考えが正解に近かったことが・・・もちろん、あの選別でこいつら3人がふさわしくないと思ったら俺はその場でBかCと言っていただろう。」
『・・・・・。』
「それと、確かに盗賊が火のリーダーでは不満の奴もいただろう。
だが、その強さも分かってもらえたと俺は思っている。
B・Cクラスで一番強かった戦士4人のうち一人を正面から打ち破ったんだ。
文句はないだろう。」
『・・・はい。』
「そして、一番気になっている者が多いから言うが、シュン・シズカは・・・・貴族でも大商人でも、ましてやAランクの子孫でもない。
それは本人から言ってもらうのが一番いいだろう。」
レーベル先生がぼくたちに立つように促す。兄さんが先に立ち、話し始めた。
「自分たち兄妹は遠くにある辺境の村で育った。
そこは、魔物もモンスターもほとんど出ない、とても和やかな場所だった。
だが、数年前・・・村が襲われたんだ。どこかの軍隊みたいだった。
村は壊滅し、村人は散り散りになって逃げた。友人も親戚も行方知らずになった・・・。」
兄さんが次々と作り話を展開していく。
このストーリーはレーベル先生と事前に決めたぼくたちの偽の生きてきた物語です。
みんなを騙すのは苦しいですけど、ぼくたちはあまり有名にはなりたくない・・・・というより、有名になって国などに縛られたくないのです。
続きはぼくが語ることになっている。
ぼくはゆっくりと立ち上がり、兄さんの後を受け継いだ。
「それから、各地を転々としてこの学院の森に迷い込みました。
そこでレーベル先生と会い、この学院に入ることにしました。
ぼくたちの村には、名字をつける習慣がありました。
なので、ぼくたちは貴族ではありませんが名字があります。
もしかしたら、貴族であったかもしれませんが今となってはわかりません。」
話し終えてふとみんなを見ると、女の子のほとんどが泣いていた。
慌てて、話を変えようと思ったが、なにも思いつかない。
おどおどしていると兄さんがまた口を開いた。
「自分たちはここらの常識みたいなものも知らないし、変なことを聞くかもしれない。
そのために学院に入った。みんなは特に気にしないように話してくれ。」
兄さんがフォローのような話が終わった後も、みんなの雰囲気が変わることはなかった。
兄さんも打つ手が無くなったようできょろきょろしている。
その空気を打ち破ったのはさっき兄さんと戦っていたロークだった。
いきなり立ち上がったロークが叫ぶ。
「つまりお前たちは俺たちと同じ平民だったんだな!」
「「「この話聞いて感想はそこ!?」」」
シリアスな空気とか一瞬で無くなりました。
狙ってやったんなら尊敬しますが、ロークを見る限りそんな気配は微塵もしませんでした。
でも、みんなの雰囲気は明るくなりました。そこだけは感謝ですね。
「で、では皆さん!そろそろ夕飯ですので塔に戻りましょう!」
「「「おう(はい)!!!」」」
その返事の大きさでクライスをみんながリーダーと認めてくれたことがわかりました。
ぞろぞろと塔に帰ろうとする一年生を、レーベル先生が呼びとめた。
「あれ?まだ何かありました?」
「いや・・・お前らが仲たがいが無くなったところですまんが・・・・俺は確かに言ったはずだが?」
「B・Cクラス全員、いまから補習だ。すぐに座禅用の教室に来るように。」
3人を除く全員から悲鳴が上がったのは言うまでまないだろう。
これで間章は終了です。次回から2章に入ります。
その前にキャラ設定を追加するかもしれません。




