十九話目 剣と盾
Side 瞬
「くそっ!邪魔するな!」
「はっ!静のところには絶対行かせねー!」
さすがに制限かけたままじゃ、3人はきついな・・・。
ま、静の頼みだ。少しくらい解除してもばれないだろう。
「もういい!こいつは俺一人でやる!だからはやく突破しろ!」
「わ、分かったローク!」
どうやら二人がかりでもここを突破したいらしい。
静も後退しながら詠唱しているから、距離もそこまで縮まってない。そして・・・
「―――――赤魔法:バースト!」
「し、しまった!」
「も、もう完成か!?詠唱速すぎだろ!?」
静が支援魔法を完成させて、その力をもらったクライスは戦士に正面から戦いを始めた。
戦士もまさか真正面から戦いを受けるとは思っていなかったようで、動揺している間にクライスの攻撃が2,3発入り、B・Cクラスの歓声が大きくなった。あれなら勝てるだろう。
「さーて、お前らまだ戦うか?なんなら降参してもいいぜ?」
「・・・れ、貴族が・・・。」
「?すまん、もっと声大きく話してくれ。この歓声のなかじゃ聞こえないぜ?」
「黙れ貴族があああぁぁぁぁ!!!!」
「ったく・・・貴族じゃないって何回言えば分かるんだ?」
「うるせえ!いまここで倒してその薄笑い顔を踏みつぶしてやる!」
あーあ、ずいぶん嫌われたなあ。
仕方ねえ、制限解除してさっさと終わらせますか。
クライスのほうはそろそろ終わりそうだし、静は・・・・・あれ?こっちに向かってきてるな。
なにかあったのか?
駆け寄ってきた静が話し始めた。
「もしかして兄さん、制限を解除する気?」
「ああ、このまま戦ってもいつまでも自分たちのことを勘違いしたままになりそうだからな。」
「だったら、あんまりたくさんは解除しないでね。Lv10くらいで抑えてね。」
「あれ?静ならここは『ダメ!』って言うと思ったんだけど?」
「いつもならね。でも、いまは兄さんの意見に賛成。
この人たちは言葉じゃ伝わらなさそうだから、兄さんお得意の拳で終わらせて。」
「ん、了解。」
前を向いて見ると、剣を仕舞った状態で止まっているロークがいた。
「・・・なんでいまの間に攻撃してこなかったんだ?」
「そんな不意打ちみたいなことをやるのは、闇属性の連中だけだ。それに・・・
「それに・・・なんだ?」
「そんな方法で勝ってもうれしくない。俺は貴族を真正面から負かしたいんだ。」
こいつ・・・・。分かってるじゃねえか。
「・・・そうだな。たしかにそんな方法で勝ってもうれしくないな。」
「だから、本気で来い!俺はその上を行く!」
「いけるもんなら、越えて見せろ!」
ほぼ同時に剣を抜き放つ。
そこで、さっきまで話し合ってた剣について気になったから聞いてみた。
「そういや、お前の剣は昔、暗殺用に使われた剣かもしれないって聞いたが、本当か?」
「ああ、これは俺がそこらで拾った剣だ。場所は言えないが。」
「・・・それって反則じゃないか?不意打ちよりダメだと思うんだが・・・?」
「何言ってやがる。レーベルさんは武器の指定なんてしてないぞ。」
いや、確かにそうなんだが・・・・。なんだろ、この何とも言えない感じ。
後ろで聞いていた静も、「確かにいってませんが・・・。」と唸っている。
先生は「そうだ!その先を見通す力をつけて欲しかったんだ!」といっている。
・・・どちらかといえばこれは『先を見通す』というより、『上げ足をとる』っていうんじゃ・・・?
「おいおい、そんな細かいこと気にするのか?それでも戦士かよ?」
「・・・それを言われてたらどうしようもないな。
だったら、先手必勝!こっちから行かせてもらうぜ!」
地面をけり飛ばし前へ走る。
後ろで静が、『安い挑発にのった!単純すぎだよ!』となにか言ってるが自分には聞こえない、聞こえないったら聞こえないんだ。
「お前、最高だぜ!もうお前が貴族とかどうでもいいな。」
そう言いながら剣を振ってくる。同じ片手用直剣だが、武器の性能は違いすぎる。
まともに受けたら武器がなくなる・・・・が。
後ろで静が、『さっきまで敵対心むき出しだったのはどこいったの?』とか聞こえたけど、空耳だろう。
「そんなことは関係ない!押し切る!」
「はっ!?そんなことしたら俺が仕込み刃を使わなくても剣がなくなるぞ!」
確かに性能が違う武器同士で、ガンガンとぶつけあったらこちらが折れるのは間違いない。
自分だってそう思う。
その証拠に、とうとう剣が腹の真ん中から真っ二つに折れた。
「これでおれの勝ちだぐぼわっ!」
「・・・剣が折れたら負けなんてルールはないぜ。ローク。」
自分はロークの腹に盾を叩きこんだ。
やはり盾での攻撃なんて想像してなかったんだろう。
「た、盾!?そんなもんで戦うってどうかしてるぜ!
しかも皮だからそんな攻撃全然、体力減らないぜ!」
「どうかしてるかは自分の体で確かめてみろ!」
「え!?なんでこんなに体力減ってるんだ!?」
「そりゃ、腹なんて弱点に盾が食い込めば相当食らうだろ。」
「じゃあ、盾も壊すだけだ!!」
「その前に終わらせる!」
戦い始めてから数分・・・とうとう体力が半分に達し、ロークが地面に片膝をついた。盾はついに壊れなかった。
「強いな、お前。」
「お前もな。」
「「ははっ・・・。」」
「戦闘終了だ!勝者はAクラスの3人だ!!」
「「あれ!?」」
ロークと声がかぶる。
まだ二人残っていたはずなんだが・・・?そいつらはどうしたんだ?
なぜ試合が終わったのかは次の回で説明します。




