十七話目 理由と突然
昨日はすみません。急な旅行だったので、スケジュールを詰められませんでした。
今日からまた張り切っていきますのでどうかよろしくお願いします。
たった今自分が今日誕生日だったと気づいた。
メールを確認して誰からもお祝いメールが来なくて泣いた。
Side 瞬
「クライス、それは本当か?」
「間違いない・・・と言いたいのですが、確証はありません。
もっと近くで見れれば分かりますが・・・。」
「そんなことはできない、か・・・。」
よくわからないが、武器がすり替えられたことは確定らしい。
だとしたら、あいつと剣で打ち合ったり、押し合ったりするのは危険だな。
「でもどうしてそんなことまでして勝ちたいんでしょうか?」
「男の子ってもんはそんなもんだろ?」
「や、それは兄さん見てれば分かるけど、ばれるのが簡単に分かる武器をすり替えてまで勝ちたいと思うかな?」
「まあ、シュンがいうこともあながち間違いではないが・・・・あいつはな、孤児なんだ。
調べてないが、他の3人も同じ境遇だろう。」
孤児って・・・両親がいないとか、捨てられたとかってことだよな?
「あいつらはここに来るまである孤児院で過ごしていたが、その街で一度伝染病が発生したんだ。
そのとき治せる奴は街にいなく、他の町に行くとこも出来なかったんだが、魔法治療薬を都市から送ることはできたんだ・・・・・・だが。」
そこからは、想像通りだった。
貴族の奴らが『俺たちのほうが先だ!』とか『金ならいくらでもある』といい、届いた薬を買い占めてしまったらしい。
しかも、その薬をまだ感染していない子供に予防として毎日飲ませるだけで、平民や孤児院にはほとんど回らなかったようだ。もし回ってもとても平民が出せる金額ではなかった。
そのころにその惨状に気付いた他の町からも救援として治療士や、ギルドで依頼を受けた魔法使いが街を目指したが、時すでに遅し。
街の大半の人間は死に至り、孤児院も例にもれず症状の軽かったもの以外は大人・子供の区別なく死んでいった。
奇跡的に症状が軽かった者・・・およそ十数人は体調が戻ってから貴族を相手に抗議を展開したが、そこの領主貴族やその支配下にあった貴族は金を持って辺境に逃走した後だった。
街は捨てられ、生き残った者たちは街を出て各自別れていったらしい。
「そんなひどいことが・・・。」
「ああ、その時俺も救援物資を運ぶ護衛を務めていたんだが街の状況は最悪だった。
死体が道に捨てられ、街全体が死んでしまった様子だった。」
「「「・・・・・・・・。」」」
「そのときだ。かすかに声が聞こえ、皆を連れてがれきの中を捜すと1人の男の子が妹を抱いて、泣いていた。
・・・・女の子すでにこと切れていたが、必死で呼び掛けるその姿に俺たちは動けなかった。」
そして、こちらに気づいた少年立ち上がってこう言ったらしい。
『・・・お前らが、お前らがもっと早く来ていたら妹は死ななかったのに!』と。
そんな罵声と妹への感情を数刻吐き出した後、男の子はその場に倒れた。
「俺たちはそのあと、手当たりしだい街を捜索し、ギルド本部に連れて帰り、こちらで孤児院へと手渡した。
それが、あいつ・・・ロークだ。向こうは俺を忘れているようだが。」
「じゃあ、他のメンバーは・・・?」
「・・・推測になるが、同じ末路を辿ってきた者同士だろう。」
「先生、なんで今この話を・・・?」
「・・・あいつらは確かに悪いことをしている。
だがそれにも理由があってのことだ。全部を否定してほしくなかったからな。」
なるほど・・・自分と同じ何も考えない人だと思ったが、一応先生だった。
「・・・おい、シュン。何か失礼なことを考えていなかったか?」
「・・・・・・・・・・・そんなまさか。」
「・・・まあいい。それじゃあ、そろそろ戦ってもらうか。」
決勝戦の裏では、3位決定戦が行われていて今終わったらしい。
レーベル先生が全員から見える位置へと動く。
「よーしお前ら!決着はついたな。
では4位のチームから・・・ローク、そんな怖い顔で俺を見るな。
1位のお前らから順番を決めていけ。」
「「「もちろん最し「いや、最後だ。」はあっっ!?」」」
なんだか、仲間内で順番でもめているようだ。
ここからは自分たちには何を言っているかは聞こえない。
(なんで最後なんだよ!さっさと戦ってやっちまおうぜ!?)
(そうだよ!なんで最後なの!?早く終わらせようよ!?)
(バカ!他の奴らの戦いを見て、対策練ったほうがいいに決まってるだろうが!)
(でもよー。この勢いで倒しに行ったほうがいいんじゃないか?)
(それこそあいつらの思うつぼだ。いいから俺に任せとけ。)
「・・お前ら?決まったのか?」
「あ、はい。最後でお願いします。」
「ん?最後でいいのか?てっきり最初になるかと思ったが?」
「みんなはそう言っているんですが、なるべく勝てるようにしたいですから。」
「・・・まあ、お前たちが1位なんだから文句は言わんが・・・。」
先生は、今年は火属性らしいやつとらしくない奴がはっきりしてるなぁ。
といいながら他のチームの確認へ行った。
どうやら、2位→3位→4位と戦い、最後に1位のローク率いるチームと戦うことになった。
「あいつらと戦うのは最後か・・・。どう思う、静?」
「相手がわざわざ戦うのを最後にしたとしか考えられないね。兄さんと違ってね。」
「おい、さらっと人を使えない子扱いするな。」
「で、ぼくたちはどのチームと戦えばいいんですか?」
「え?無視ですか?それとも返事をするまでもないということか?」
「兄さん、うるさい。ちょっと黙ってて。」
「・・・はい。」
皆の前に進み出て顔を上げる。
前方に構えているのは、4位の戦士3、魔法使い1の火属性ではバランスがあるチーム。
こちらは、Aクラスということもあるが、人数の関係上3人。自分と静、クライスである。
「シュン、シズカ・・・勝てると思う?」
「はっ!こんなとこで苦戦してちゃ、あいつらには勝てないぞ!」
「それに勝てると思わないと、たいていの勝負は勝てないよ。」
「・・・そうだね。よし!先生、こっちは準備完了です!」
立ち会いのレーベル先生にそう伝えるクライス。
どうやら、向こうのチームも準備は終わったらしい。
「戦い方は、実践授業と同じ。クライスが前衛、兄さんが遊撃、ぼくが後衛。
でも、授業のときと違って、支援魔法は使わないからね。
ぼくは向こうの魔法使いと一騎打ちするから・・・。」
「自分たち二人で、3人を止めろと・・・。人使い粗いなぁ、静。」
「・・・嫌そうに言う口調と、その満面の笑みはどっちかにしようね。」
「お前ら!」
と、レーベル先生の声だ。
「お前らはもう分かると思うが、俺の用意したチームはAクラスのことだ!
こいつらに勝てば、Aクラスに入れてやろう!
だが、全部のチームが負けたら連帯責任でB・Cそろって補習を行うぞ!」
「「「ちょっと待てーーー!!!」」」
おおっと、負けたときのリスクがないと思ったら、今回の戦いで無くなった授業をここで補習として入れてくるとは。
これは外野がうるさくなるな。
「え!?聞いてませんよ!?」
「そうだろうな。なんせ、いま言ったからな。」
「いつから考えていたんですか!?」
「たった今気付いた。」
「なんでいまさら!?」
「いや、授業つぶれたら他で補えって言われてるからな、学院長に。」
うーん。ありゃ反感買うぞ。そして、一体いつになったら戦いが始まるんだ・・・?




