十六話目 決勝と反則
すみません。まだ主人公たちは戦いません。
次かその次くらいには戦わせます。
Side 静
トーナメントも順調に進み、とうとう準決勝・・・つまり上位4チームが決まったのですが、ここで問題が発生。
「なんだと!俺たちが一番に戦うにきまっているじゃないか!」
「いいえ!女の子に優先に譲ってくれるのが男の子ってもんじゃないの!」
「はっ!お前みたいな女の子は居ねえよ!」
「なんですってぇ!」
全員戦えるのに、誰が一番かでもめる始末。
結局、レーベル先生が仲裁に入り決勝までやるという物語でよく省かれるところをお届けすることになりました。
「なあ、この戦いって要るのか?」
「間違いなく要らないよ。準決勝から上は必要ないよ。」
「だよなぁ。自分だってはやく戦いたいのに・・・。」
「ぼくは早くこの視線のむしろから逃れたいよ・・・。一挙一動、逐一見られるなんて・・・。」
試合が終わって暇な人たちは、二人一組で模擬戦みたいなことをやっている。
僕たちは参加していないのを見て、さすがに先生が用意したチームがぼくたちであることに気付いたみたい。
そして余計に視線が増えた気がする・・・。
「あれ、そういえばクライスは?見当たらないけど?」
「調子が悪いとかいってトイレに行ってたぞ。緊張してるんだろうな。」
「まあ、それが普通の気持ちだよね。兄さんが度胸ありすぎるんだからね」
「そこまで!準決勝はここまでだ!」
どうやら決勝のカードが決まったようです。
全員が戦士で構成されているチームとバランスがいいチームでの戦いになるみたい。
「皆!ここまで上がってきたのはお前たちに勝った者たちだ!
しっかり見て、自分の力に出来るところを見つけろよ!
決勝はロークが代表のチームとロザが代表のチームだ!」
今戦っていて勝ったチームが4人とも立ち上がる。
どうやらこちらがバランスのいいチームのようだ。
先頭の女の子がロザという女の子で、服装から見て魔法使いだと思う。
そしてもうひとつのチームが立ち上がった時、一瞬立ち上がりそうになってしまった。
「どうした、そんな顔して?なんかあったか?」
「・・・兄さん。あのチーム・・・・!」
「あ?戦士ばかりのチームか?
確かにバランス悪いけど、火属性なんだからそこまで驚くわけじゃないだろ。」
「・・・あのチームだよ。ぼくに没落貴族とか言ってきたのは。」
「なんだって!?」
「うん・・・間違いないよ。4人ともその時の人たちだ。」
「・・あいつらとは絶対に戦うんだろうな。」
「向こうはそのつもりで来てると思うよ。」
その会話のうちに試合の準備が整ったらしく、4対4が出来上がる。
「じゃあ、正々堂々と戦うんだぞ。・・・・始めっ!!」
「「「「うおおおーーー!!!!」」」」
「後衛!さがって!」
「「りょーかい!!」」
戦士が4人のチームは戦いの合図とともに突撃体制、
バランスの整ったチームは後衛を下がらせ、支援魔法が来るまで敵から後衛を守るこれもまた典型的な戦法になった。
「「どきやがれっ!!」」
「ここは通さないわ!」
「「二人でかかればすぐ終わる!!」」
「支援が来るまでなら・・・なんとかなる!」
2対1で戦っているうち、男の子のほうは後衛から離れたところに誘導しながら戦い、突破されないように戦えている。
しかし、女の子のほうは実力の差か、POWの差か、はたまた男と女の差なのか分からないが、だんだん後衛のほうに押し返されている。
さらに、追い打ちをかけるかのように戦場に木が裂ける音が響いた。
「な、何の音だ!」
「おい見てみろよ!木の長剣がど真ん中から折れてるぞ!」
歓声があがり、みんなの気持ちが高ぶる。
剣が折れてしまった女の子は、両膝を地面に着く。
どうやらこれがこちらでの降参を意味しているらしい。
ちなみに男子は片膝らしい。
「おいおい、同じ武器で剣が折れるってどういうことだ?」
「どういうことですか?レーベル先生?」
「訓練用の剣で確かに攻撃力はないに等しいのは知っているな。
だが耐久値はただの木じゃない、けっこう良質の堅木を使っているんだ。
いくら使ったって、1日やそこらで壊れる代物じゃないぞ。」
「つまり、武器の弱点を狙う技術があるのか、それとも・・・」
「相手が武器を何か他の素材の剣に変えていたかのどちらか、ということだな。」
「・・・後者だな。あいつが持っている長剣はツヤやテカリがおかしい。」
「磨きの巧さで変わったりしないんですか?」
「・・・確かに変わるものもあるが、訓練用の剣はあんなにきらきら光らない。
別の何かだろう。ったくロークのやつ、あんだけ正々堂々やれと言ったのに。」
試合の結果は、剣が折れたことにより魔法が完成する前に後衛が叩かれて、戦士4人組が勝利した。
「あ、二人とも。結果はどうだった?」
「クライス、戦士4人組の勝利だ。言ってる意味がわかるな。」
「・・・うん。もう大丈夫。一人は倒すよ・・・。」
クライスの目にはもう迷いがなかった。
ふと聞きたいことが浮かび、クライスに質問してみた。
「ねえ、クライス。あのロークって人の武器って何かわかる?」
「え?訓練用の武器じゃないの?」
「さっき、同じ武器を真ん中からたたき折ったんだよ。同じ武器でそんな事が起こる?」
「先生はなんていってたの?」
「違う武器・・・それももっと質のいい堅木を使った武器らしいって。
クライスって商人の息子ならそういうこと詳しいかなって。」
「そうだな。
俺は質がいいとしかわからないが、あいつの息子ならもう教えてもらってるんだろ?」
先生の『あいつ』という言葉が気になったが、クライスから品物を説明する独特の雰囲気がでたので聞けなかった。
「・・・確かに先生の言うとおり、あれは訓練用の長剣ではありません。
微妙にですが剣の厚さやグリップに違う部分があります。
堅木は確かに使っていますが、中に金属が埋め込まれている感じがします。
・・・・・・・・分かりました。あの武器の正体が。」
「「「一体なんだったんだ!?」」」
「あの武器は・・・・・・・武器破壊を素人でも簡単に扱える仕込みがグリップに内蔵されている、10年程前に秘密裏に作成された暗殺用の長剣・・・・粉砕剣と呼ばれた代物です。」
クライス君は品物の鑑定になるとおどおどしまくなります。




