十話目 上位級ドラゴン
祝!十話目!
お気に入り件数も11件と少しづつですが伸び始めました。
PV4000+ユニーク1000越えしました!
これからもよろしくお願いします!
Side レーベル
さて・・・この最後の群れとの戦いで、あの3人の実力を測ろうと思う。
が、クライスに関してはもう分かった。
シュンとシズカに挟まれて霞んでいるが、ここ数年の新入生なら、トップクラスに入る強さだ。
火属性にしてはおどおどしていて、気も弱いが、その特徴が盗賊職にあっている。
しかし、問題は残りの兄弟なんだが・・・。
まず妹のシズカ。
覚えている魔法は平均的な一年生だ。
強化魔法も属性魔法より使うのは簡単だから、別に驚くことでもない・・・・・・なのに、強化の上がり幅がおかしい。
通常、初級強化魔法なら俺の感覚でPOW1上昇だ。
詠唱は一箇所間違えるごとに、効果・威力はその都度半減する。
シズカの詠唱は2回間違っていた・・・・・・普通なら初級魔法で1回間違えた時点で、効果・威力は発生しない。
それなのに、シズカの強化魔法はPOW2も上がった感覚がした。
単純に考えると、完璧に詠唱できればPOW8上昇するわけだ。
こんな奴に上級強化魔法なんて使わせたら、機械的に計算するとPOW32も上昇・・・・強化魔法の研究者が卒倒するぞ?
しかも強化魔法は範囲効果・・・つまり、何人いても使われる量は一定で、効率がいいと言えば良いんだが、数人の時は必要ないほどの魔法力を削っちまって、もったいない。
なんとかその余剰をカットできないか・・・・という話が首都の魔法使いたちを悩ませているんだが、今シズカからは余剰魔法力が少しも感じられなかった。
12歳の子が解決したなんて知ったら、首都の魔法使いが全員、首になるか、首をつるぞ。
もう一方の問題児はシュン。
こいつは知識で言えば、今ごろ座学を受けている無鉄砲な火属性の奴らと変わらない・・・・というかそれより下か?というレベルだ。
ただ、基礎値が人外・・・・・・Lv.1の時点で、ラビットを一撃で気絶寸前まで追い込みやがった。
しかも全く体重の乗っていない、型もない攻撃で、だ。
そんな攻撃でラビットを気絶寸前まで持っていくなら、装備込みでPOW80はないと無理だ。
生まれつきPOWがあったとしても、せいぜい3まで・・・・木の片手用直剣も訓練用だから攻撃力なんてあったものじゃない。
どうなってやがる。生まれつきPOW80なんて、親がLV.90以上の化け物同士でも起こらないし、まず俺が知るなかでそんな化け物がいたなんて公式記録は見たことない。
SPDだって目測だが、多分50はあるだろう。
生まれつきだったら、ギルドの5割が幼児に負けるという恐ろしいことが起こる・・・。
鍛えたのなら、一体どんな鍛え方をすれば、LV.1でPOW80+SPD50なんて恐ろしいことが起こるんだ・・・?
しかも、もしその鍛え方が他の人に耐えられる内容なら、私立・公立両方の学院の実践教師が全員、首になるか、首をつ(ry。
俺が生きていく為にも、そんなことが起きないように祈るしかないな。それか学院長に・・・・・あ、学院長に丸投げしよう。
「っとと。考え事にすっかり入り込んでしまった。今は3人の実力を・・・。」
ふと前を見ると、上空に何かが飛んでいるのが見えた。目を凝らしてみると・・・
「おいおい、何でこんなところに上位級のドラゴンがいるんだ・・・!?」
そこに見えたのは、風上位級『ウィンドドラゴン』だった。
少し大きさが小さいが、素質や能力、知識で何とかなる相手じゃない・・・!
「くそっ!あいつらでもこれは分が悪すぎる!間に合ってくれよ!」
俺は来た道を全力で戻り始めた。
Side 静
「ふ、二人とも、まずいよ・・。あれは、『ウィンドドラゴン』だよ・・・。
見たところ、体長は3mくらいの幼生だけど、Lv.30はあるよ・・・。」
「『ウィンドドラゴン』って風属性の中でも上位に入るモンスターだよね?」
「そうだよ。確かに幼生なら逃げ切れるかもしれないけど、風ブレスだけは喰らったら気絶じゃすまない・・・。当たり所が悪ければ・・・・・」
確かに先の『プレーンラビット』より、圧倒的に強そうですが・・・どこか、ラビットとは違う気がします・・・。
戦いたくない・・・?
いや、今は生き残ることだけ考えたほうが良さそうです。
「兄さん、クライス。ちょっと話を聞いてくれる?」
「どうした?」
「何かいい案があるの?」
「ううん。いい案ではないよ。
ただここにずっと立ち止まっているわけにもいかない・・・だから、クライス。
ぼくたちが援護するから、ここから離脱して、レーベル先生を連れて来て。」
「ま、待って。それなら、シュンのほうが適任じゃない?」
「いや、ここにクライスが残ってもやれる事がない。
盗賊職は斥候だから、その方が向いているはずだ。」
「で、でも、二人はどうするの!?」
「大丈夫。そう簡単にはやられないぜ。」
「う・・。わかったよ、その言葉、信じる!」
「じゃあ、兄さんがドラゴンに突っ込むから、その一撃が入る瞬間に後ろを気にしないで走って。
ぼくはそれに合わせて、光玉を投げるから。
ドラゴンのブレスもぼくが相殺する。」
「話は終わったか?1・2・3で突撃するぞ。」
「1・・・・・・・・・。」
「・・・・・2・・・・。」
「・・・・・・・・3!」
そう叫び、兄さんがドラゴンに切りかかる。
片手用直剣がドラゴンの脇腹にあたるところで、クライスが打合せ通りに逆方向に走り出す。
兄さんの剣は、いつの間に作ったのかドラゴンの周りにあった障壁に阻まれて当たらなかった。
1人脱出するのに気付いたのか、ドラゴンがブレスの体勢に入る。
その眼前に、ぼくは光玉を投げつけた。
「キィィシャアアアアァァァアァッァァア!!!」
ドラゴンは目を光で潰され、叫び狂い、暴れまわる。
近くにいた兄さんが間合いから飛び下がる。
「クライスは行ったか?」
「うん。残ってるのはぼくたちだけだよ。」
「わかってる。ドラゴンも目が見えるようになった見たいだな。」
ドラゴンは暴れまわるのを止め、こちらを窺っていた。
こちらの手を読もうとしているのか、
余裕の表れなのか、
他の何かなのかは分からないが、ぼくたちにできるのは一つだけだ。
「生きて帰るよ、兄さん!」
「わかってる!なんとかして、時間を稼ぐぞ!」
そう言って兄さんが走り出し、ドラゴンに切りかかる。
剣と障壁がぶつかり合う音が、森に響き始めた。




