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ベタなことをしたら死ぬデスゲーム……!?

掲載日:2026/10/23

「ベタなことをしたら死ぬデスゲーム……!?」


 灰色の壁で囲まれた殺風景な一室に、五人の男女が集められていた。

 全員が座るソファの前にはテーブルがあり、バナナやミカンなどの軽食が用意されている。五人のうち、太った男のみ、バナナを食べている。

 そして、五人はいずれもある一点を見据えている。

 部屋にはモニターがあり、その画面に映し出された黒覆面の男――ゲームマスターが答える。


『その通りだ。君たちに課せられたルールはただ一つ。ベタなことをしないこと。ベタなことをしたら、その人物は死ぬことになる』


 五人のうちの一人、中肉中背の男がおそるおそる尋ねる。


「どんな風に死ぬんだ?」


『急に胸が苦しくなり、“ぐふっ”と言って死ぬ』


「なんて恐ろしい……!」


『このゲームの制限時間は24時間。24時間生き残った者には10億円差し上げよう。さあ、せいぜいベタなことをせず、生き残ってくれたまえ。命懸けでもがいて私を楽しませてくれ!』


 ゲームが始まった。

 五人の中で最も目つきの悪い男が、ソファから勢いよく立ち上がる。


「……ふざけるな!」


 その鋭い目つきで周囲を見回す。


「デスゲームだと? ふざけやがって! 俺たちは全員、外からここに連れてこられたはずだ。つまり出る方法もあるはず!」


 そのまま言い放つ。


「こんなところにいられるか! 俺は帰らせてもらう!」


 だが、その瞬間――


「うぐ、胸が苦しい……ぐふっ」


 目つきの悪い男はそのまま床に崩れ落ち、息絶えた。

 他の四人は悲鳴を上げ、ゲームマスターは呆れたようにつぶやく。


『ルールを聞いていなかったのか? “こんなところにいられるか”とは、いきなりベタなことをしおって……』


 すると、バナナを食べていた太った男が、ゲームマスターに懇願する。


「た、助けてくれ! 死にたくない!」


『死にたくないなら、24時間生き残るしかないな』


「た、頼む! 金ならいくらでもやるから、私だけは……!」


 太った男が食べ終わったバナナの皮を捨てて、スーツの懐から財布を取り出した時、異変が起こる。


「あぐぅ!? か、金なら、いくら、でも……ぐふっ」


 財布には万札がぎっしり入っており、かなりの金持ちだったようだが、その財力を発揮することなく死んでしまった。


『なんというベタな命乞いだ……』


 ゲームマスターはため息をつく。


 早くも犠牲者は二人。眼鏡をかけた男が冷静に状況を把握しようとする。


「皆さん、落ち着きましょう。このデスゲームは競争をするわけではない。全員生還することも可能なはずです」


 男は眼鏡のレンズを額にずらし、他二人に目をやる。


「まずは“ベタ”にはどのようなものがあるか、三人で話し合いましょう。話し合った上でそれを避けるように行動すれば、三人とも生きてクリアできるはずです!」


 ところが、男は突然混乱し出す。


「あれ? 僕の眼鏡は? どこいった?」


 自分で額にずらしたのに忘れてしまっている。全然冷静じゃなかった。


「どこだ!? メガネ、メガネ~! ……ぐふっ」


 眼鏡を探そうとした途端、男もデスゲームの餌食となった。

 これで残るは二人。長い黒髪の女と、中肉中背の男だ。


「ど、どうしましょ!?」


「うーん。何もしないことが最善でしょうね。何かすればするほど、デスゲームの“ベタ”判定に引っかかる恐れがある」


「それはそうだけど……歩き回るぐらいはいいよね? 座ってると色々考えちゃうから……」


 黒髪の女は部屋の中をうろうろと歩き出す。

 その時だった。


「きゃっ!」


 太った男が捨てたバナナの皮で滑って転んでしまった。


「……ぐふっ」


 これで黒髪女も退場となった。

 ゲームマスターがついに怒る。


『お、おい! どうなってるんだ! まだ5分も経っていないのに残り一人だと!? これではゲームを開催した甲斐がないではないか! 少なくとも半日ぐらいは楽しめると思ったのに!』


 突然、中肉中背の男が笑い出した。


「ク、ククク……」


『何がおかしいのだ?』


「いやぁ、地球人というものの知能を測るため、このデスゲームに参加してみたが、どいつもこいつも低能ばかり。地球人など所詮この程度か」


『な、なんだと……! お前は一体!?』


「私の正体すら見破れない。だから低能だと言うのだ。まあいい、見せてやろう」


 中肉中背の男は、まるで細胞分裂のように、三人に分かれた。


『ぶ、分身!?』


「そうではない。我々はこういうことができる種族なのだ。一人が三人になったわけではなく、三人が一人になっていたというわけだな」


『人間ではないのか……!』


「このデスゲーム会場を破壊し、主催者である貴様を殺したら、母星に連絡するとしよう。“地球人の知能低し。ただちに殲滅せよ”とな」


『ひ、ひいっ! お前は……お前たちは何者なんだ!』


 三人が口を揃える。


「教えてやろう。我々は宇宙人だ。……ぐふっ」


 名乗り方が悪かった。宇宙人三人組は、母星に連絡することができぬまま、生涯を終えた。

 誰もいなくなった部屋を見て、ゲームマスターは頭を抱える。


『なんなんだよ、この展開! せっかくこんな部屋を用意して、五人全員クリアできたことも想定して50億円も用意してたのに、5分ちょっとで参加者が全滅しちゃったよ!』


 悔しがり具合から、準備にはとてつもない苦労があったことが分かる。

 ゲームマスターはついこう叫んでしまう。


『トホホ、デスゲームなんてもう懲り懲りだよ~!』


 すると――


『ううっ、苦しい……! え、もしかして私もベタなことしちゃダメだったの!? そ、そんなぁ……ぐふっ』


 こうして、ゲーム参加者五人及びゲームマスターは全滅した。

 しかし、安心して欲しい。

 彼ら六人……いや、正確には八人は、ここでは死んだが異世界に転生することになる。

 異世界に転生した彼らは大活躍し、その世界で英雄として称えられることになるのだが――それはまた別のお話。


 あ、しまった!

 私もベタな終わらせ方をしてしまったから……!

 ぐふっ。






完

お読み下さいましてありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
ベタ判定、ゲームマスターがしているんじゃないのかよ!? 自滅して50億がポツーンって残ってるよ。 警察の調査がベタだったりすると、警官も……ぐふっっとなるんだな。 はっ!? まさかここにベタな感想を書…
ベタな事をやってはいけないからといって、徹底的に奇をてらった事をし続けるのもまた難しいでしょうね。 狙って変な事をやろうとしても、それもある程度はパターンや法則性が出てきてベタ認定されるかも知れません…
面白かったです。 感想欄でベタなネタを書いて「ぐふっ」ってやりたかったのですが、時すでにお寿司でしたね……。 おや? 誰か、来たようだ……ぐふっ。 ありがとうございました。
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