ベタなことをしたら死ぬデスゲーム……!?
「ベタなことをしたら死ぬデスゲーム……!?」
灰色の壁で囲まれた殺風景な一室に、五人の男女が集められていた。
全員が座るソファの前にはテーブルがあり、バナナやミカンなどの軽食が用意されている。五人のうち、太った男のみ、バナナを食べている。
そして、五人はいずれもある一点を見据えている。
部屋にはモニターがあり、その画面に映し出された黒覆面の男――ゲームマスターが答える。
『その通りだ。君たちに課せられたルールはただ一つ。ベタなことをしないこと。ベタなことをしたら、その人物は死ぬことになる』
五人のうちの一人、中肉中背の男がおそるおそる尋ねる。
「どんな風に死ぬんだ?」
『急に胸が苦しくなり、“ぐふっ”と言って死ぬ』
「なんて恐ろしい……!」
『このゲームの制限時間は24時間。24時間生き残った者には10億円差し上げよう。さあ、せいぜいベタなことをせず、生き残ってくれたまえ。命懸けでもがいて私を楽しませてくれ!』
ゲームが始まった。
五人の中で最も目つきの悪い男が、ソファから勢いよく立ち上がる。
「……ふざけるな!」
その鋭い目つきで周囲を見回す。
「デスゲームだと? ふざけやがって! 俺たちは全員、外からここに連れてこられたはずだ。つまり出る方法もあるはず!」
そのまま言い放つ。
「こんなところにいられるか! 俺は帰らせてもらう!」
だが、その瞬間――
「うぐ、胸が苦しい……ぐふっ」
目つきの悪い男はそのまま床に崩れ落ち、息絶えた。
他の四人は悲鳴を上げ、ゲームマスターは呆れたようにつぶやく。
『ルールを聞いていなかったのか? “こんなところにいられるか”とは、いきなりベタなことをしおって……』
すると、バナナを食べていた太った男が、ゲームマスターに懇願する。
「た、助けてくれ! 死にたくない!」
『死にたくないなら、24時間生き残るしかないな』
「た、頼む! 金ならいくらでもやるから、私だけは……!」
太った男が食べ終わったバナナの皮を捨てて、スーツの懐から財布を取り出した時、異変が起こる。
「あぐぅ!? か、金なら、いくら、でも……ぐふっ」
財布には万札がぎっしり入っており、かなりの金持ちだったようだが、その財力を発揮することなく死んでしまった。
『なんというベタな命乞いだ……』
ゲームマスターはため息をつく。
早くも犠牲者は二人。眼鏡をかけた男が冷静に状況を把握しようとする。
「皆さん、落ち着きましょう。このデスゲームは競争をするわけではない。全員生還することも可能なはずです」
男は眼鏡のレンズを額にずらし、他二人に目をやる。
「まずは“ベタ”にはどのようなものがあるか、三人で話し合いましょう。話し合った上でそれを避けるように行動すれば、三人とも生きてクリアできるはずです!」
ところが、男は突然混乱し出す。
「あれ? 僕の眼鏡は? どこいった?」
自分で額にずらしたのに忘れてしまっている。全然冷静じゃなかった。
「どこだ!? メガネ、メガネ~! ……ぐふっ」
眼鏡を探そうとした途端、男もデスゲームの餌食となった。
これで残るは二人。長い黒髪の女と、中肉中背の男だ。
「ど、どうしましょ!?」
「うーん。何もしないことが最善でしょうね。何かすればするほど、デスゲームの“ベタ”判定に引っかかる恐れがある」
「それはそうだけど……歩き回るぐらいはいいよね? 座ってると色々考えちゃうから……」
黒髪の女は部屋の中をうろうろと歩き出す。
その時だった。
「きゃっ!」
太った男が捨てたバナナの皮で滑って転んでしまった。
「……ぐふっ」
これで黒髪女も退場となった。
ゲームマスターがついに怒る。
『お、おい! どうなってるんだ! まだ5分も経っていないのに残り一人だと!? これではゲームを開催した甲斐がないではないか! 少なくとも半日ぐらいは楽しめると思ったのに!』
突然、中肉中背の男が笑い出した。
「ク、ククク……」
『何がおかしいのだ?』
「いやぁ、地球人というものの知能を測るため、このデスゲームに参加してみたが、どいつもこいつも低能ばかり。地球人など所詮この程度か」
『な、なんだと……! お前は一体!?』
「私の正体すら見破れない。だから低能だと言うのだ。まあいい、見せてやろう」
中肉中背の男は、まるで細胞分裂のように、三人に分かれた。
『ぶ、分身!?』
「そうではない。我々はこういうことができる種族なのだ。一人が三人になったわけではなく、三人が一人になっていたというわけだな」
『人間ではないのか……!』
「このデスゲーム会場を破壊し、主催者である貴様を殺したら、母星に連絡するとしよう。“地球人の知能低し。ただちに殲滅せよ”とな」
『ひ、ひいっ! お前は……お前たちは何者なんだ!』
三人が口を揃える。
「教えてやろう。我々は宇宙人だ。……ぐふっ」
名乗り方が悪かった。宇宙人三人組は、母星に連絡することができぬまま、生涯を終えた。
誰もいなくなった部屋を見て、ゲームマスターは頭を抱える。
『なんなんだよ、この展開! せっかくこんな部屋を用意して、五人全員クリアできたことも想定して50億円も用意してたのに、5分ちょっとで参加者が全滅しちゃったよ!』
悔しがり具合から、準備にはとてつもない苦労があったことが分かる。
ゲームマスターはついこう叫んでしまう。
『トホホ、デスゲームなんてもう懲り懲りだよ~!』
すると――
『ううっ、苦しい……! え、もしかして私もベタなことしちゃダメだったの!? そ、そんなぁ……ぐふっ』
こうして、ゲーム参加者五人及びゲームマスターは全滅した。
しかし、安心して欲しい。
彼ら六人……いや、正確には八人は、ここでは死んだが異世界に転生することになる。
異世界に転生した彼らは大活躍し、その世界で英雄として称えられることになるのだが――それはまた別のお話。
あ、しまった!
私もベタな終わらせ方をしてしまったから……!
ぐふっ。
完
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