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悪役令嬢ですが、シナリオから逃げることにしました。【2000文字】

作者: 有梨束
掲載日:2026/02/26

「ティナ、生涯唯一の僕の愛しい人」

「だからヒロインを口説きに行きなさいよ〜!」


ここが乙女ゲームの世界だと気づいたのは、学園に入学した時だった。

敷地を跨いだ時、プレイしていたオープニング映像が頭の中を流れ、見ている景色とあまりに似ていた。

婚約者のダミアンが攻略対象の1人にそっくりだし、何より自分が悪役令嬢クリスティーナそのものだと気づいた。


「…私、悪役令嬢だったんだ」

そう声に出していた。

そうしたら、隣にいたダミアンが嬉しそうにこう言ったのだ。


「なんだ、ティナも転生者だったんだね」


人生が二転三転した瞬間だった。



「…どうしてヒロインのところに行かないの」

「どうして婚約者を置いて、他の女のところに行くと思うの」

ダミアンはわたしの髪の毛を掬い、そっとキスを落とす。


ダミアンは同級生であるヒロインと近づこうとしない。

他の攻略対象者はヒロインにべったりなのに。

おかげでダミアンは攻略対象者から良い印象がないし、学園を通しての繋がりも出来ていない。


「貴族として、攻略対象者とは仲良くなっておいた方がいいって」

そう言うのに、ダミアンは頑なに私のそばから離れない。


「…それに私といない方がいいって」

乙女ゲームの強制力で、私はとんでもない悪女ということになっている。

全部が私のせいになる。

この前もヒロインを階段から突き飛ばしたと、謹慎処分を喰らったばかり。

ダミアン以外、誰も信じてくれない。


このまま行けば、私は国外追放エンドだ。

ダミアンを巻き込むわけにはいかないのに。


「僕の心まで強制できると思わないでほしいな。出会った時から、僕には君だけだよ」


ダミアンは、私の頬を撫でて笑うだけだった。




ある日、ダミアンが先生に呼ばれて珍しく1人だった時。

廊下を歩いていると、向こうからヒロインと、ダミアンが並んで歩いてくるのが見えた。


頭が殴られたような感覚がした。


本来あるべき姿は、あまりにも美しくて、あまりにもしっくりきて、悲しかった。


…やっぱり、ダミアンの居場所は私の隣じゃないよ。


早くここから去りたいのに、足が動かなかった。

目が2人を追ってしまう。

…やだ、ダミアン、私に笑って。


泣くなと自分に言い聞かせた時、ダミアンがこっちを見た。

「!」

逃げなきゃと思ったけど、ダミアンが物凄い勢いで走ってきた。

ヒロインを置いて。


「ティナ〜!会いたかったよ!」

いつものように抱き締められて、ポロッと涙が零れてしまった。


「えっ!どうしたの、ティナ!?誰かに何かされた!?」

「…ダミアン、私のこと好き?」

「当たり前じゃないか、君以外に愛を捧げたい人はいないよ」

「…みんなヒロインが好きなのに?」

「なんだい、僕の好きがそんなに届いていないなんて心外だなぁ」

ダミアンは目を細めて、涙の跡にキスを落としていく。


ダミアンの想いは届いている。

でも、ずっと怖かった。

それを受け取った後に、ダミアンの気持ちが変わってしまったら?

ダミアンの愛おしそうに見る先が、ヒロインになったら?

だって、ここはゲームで、私は悪役令嬢だから。


「お2人は本当に仲が良くて素敵ですねぇ」

そこにダミアンが放ってきたヒロインが立っていて、優しく微笑んでいた。


「あ、あの私…!」

「クリスティーナ様、申し訳ありません」

「…へ、何が」

「ゲームの強制力とはいえ、いつも悪者になってしまって…」

「え」

「どうやらこの子も転生者だったらしいよ」

なんでもないようにダミアンが言うので、ええええ!?と私は叫んでいた。


「ダミアン様だけ近づいてこないのを不思議に思っていたんです」

「それで今話してみたら、判明したというわけ」

「え、そ、そんなことある?」

「しかも、彼女は彼女で困っていたらしい」

ヒロインは困ったように苦笑いをした。


「好きでもない男性に囲まれているのは怖いし、強制力のせいか話は通じないし、…お2人が羨ましいです」

その笑顔が疲れ切っていて、まるで鏡の中の私を見ているようだった。


「疲れましたね…」

「本当ですね」

「このまま追放エンドで出ていくのは、むしろ好都合に思えてきました」

「それなら今すぐ出ていこうよ」

「え?」

「他国の親戚に養子にならないかって打診されているんだ、ティナも一緒に来ればいい」

「そんなことできるの?」

「僕がティナを置いていくわけがない」


「わ、私も連れて行ってもらえませんか…!」

「…それじゃあ、国外逃亡といこうか」

ダミアンがニヤリと笑い、ヒロインが頷く。


2人は、もうこの世界を変えることを決意したようだった。


このあとはどうなるんだろうと、一瞬思った。

でも、そんなことはもういいや。

主要キャラがいなくなった後のことなんて、私には関係ない。


2人は選んだのだ、だったら私も選ばなくては──。


ゲームに屈していた分、もう縛られない人生を選ぼう。

私は悪役令嬢なんだから、好きにしたらいいのよ!


「ダミアン、私あなたと生きていきたい」


私の答えに、ダミアンもヒロインも笑ってくれるのだった。




お読みくださりありがとうございます!!  毎日投稿57日目。

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