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雑魚モンスターしかコピーできないハズレスキルとして追放された俺、 魔導書を読んだら“世界の前提”が見えるようになった  作者: Y.K
第8章

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ジル爺

夜明け前。


森は、妙に静かだった。


鳥も鳴かず、風も動かない。

ただ、焚き火の残り火だけが、赤く瞬いている。


「……?」


最初に気づいたのは、ミリアだった。


「ジル爺?」


返事はない。


寝床を覗く。

杖も、外套もない。


「……いない?」


エルドが周囲を見回す。


「足音も、気配も……」


「最初から、

 “いなかったみたい”ですね」


リュカが、ぽつりと言った。


レインは、何も言わずに地面を見る。


焚き火のそば。

石の上に、紙が一枚置かれていた。


「……手紙だ」


レインが拾い上げる。


ミリアが、覗き込む。


「え、ちょっと……

 字、汚くない?」


「それが本人らしいですね」


レインは、読み上げた。



若造どもへ


起きたらおらんくて驚いたかの?

ほっほっほ、すまんすまん。


修行はな、

ほぼ終わっとる。


ほぼ、じゃ。


最後の一段階は、

本人たちが勝手に気づくもんじゃ。


ワシが教えたら、

それはもう“答え”になってしまうでな。


それと――

ミリア。


パンティの件は、

冗談じゃ。


……半分な。


では、元気でやれ。


追伸:

若いうちは抱き合えるときに

ちゃんと抱いとけ。


老人になると、

腰がやられる。


           ジルより



「……」


沈黙。


次の瞬間。


「死ね!!!!」


ミリアの叫びが、森に響いた。


「最後までスケベじゃない!!

 あのジジイ!!」


「……でも」


エルドが、少しだけ笑う。


「らしいですね」


「ええ」


リュカも頷く。


「肝心なところだけ、

 何も教えてない」


「だからこそ……」


レインは、手紙を畳んだ。


「まだ、終わってない」


その時。


――視点が、切り替わる。



ジル=バルドゥインは、森を抜けていた。


背筋は伸び、

足取りは軽い。


「……ほっほ」


独り言。


「ちゃんと立ちおった」


「前に出る者」

「支える者」

「整える者」

「見る者」


「全部、揃ったのう」


だが――

目を細める。


「まだ、完成ではない」


「最後の“覚悟”は、

 自分で拾わねば意味がない」


足を止める。


空を見上げる。


「さて……」


低く、笑う。


「久しぶりじゃの」


「〇〇」


影の黒幕の名を、

懐かしむように口にする。


「全力でやり合うか」


「それとも――」


ふっと、肩をすくめた。


「弟子が先に、

 やっつけてしまうかの?」


「どちらでも、

 面白いわい」


杖を鳴らし、歩き出す。


「では、またの」


老人の背は、

森の奥へと溶けていった。


その背中は――

驚くほど、まっすぐだった。


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