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雑魚モンスターしかコピーできないハズレスキルとして追放された俺、 魔導書を読んだら“世界の前提”が見えるようになった  作者: Y.K
第13章 同じ死体を見ている

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逆流の火種(バックフロー・スパーク)

宝珠の反応が、明確に“歪んだ”。


蒼衡そうこうから届いた簡潔な報告を、レインは黙って聞いていた。

出現地点、使用者の傾向、願いの内容――どれもが、あまりにも“揃いすぎている”。


「……誘導されてる」


呟いた瞬間、リュカが即座に頷いた。


戦域把握バトルフィールド・リード

展開された認識網が、街外れの廃区画を赤く染める。


「宝珠の発動点、逃走経路、隠蔽位置。全部、一本の線で繋がる」


「中間業者だな」

ミリアが短く言い、腰を落とした。


「しかも今回は……護衛付き」


次の瞬間、空気が“重く”なった。


エルドが盾を突き立てる。


受理領域アクセプト・ゾーン

逃げ場も、退路も作らない。ただ“ここで起きた結果は受け取る”という宣言。


闇の奥から、気配が一つ、二つ――いや、三つ。


人型だが、人ではない。

魔族。しかも戦闘用に調整された個体。


「来るよ」

レインは深く息を吸う。


戦場演算バトル・カリキュレーター》が静かに回り始めるが、結論は出さない。


「倒すのが目的じゃない」


「――繋がりを、掴む」


ミリアが前に出る。


踏越位オーバー・ライン

剣はまだ抜かない。だが“前線”だけが確定する。


「ラインは私が引く。越えさせない」


魔族の一体が、嗤った。


次の瞬間、地面が砕ける。


リュカが即座に声を飛ばす。


「右、来る!」


前線固定アンカー・ポイント

空間が縫い止められ、敵の突進がわずかに鈍る。


その“わずか”を、レインは見逃さない。


因果遮断カウザル・ブレイク

――結果に至る直前の因果だけが、切り落とされた。


魔族の攻撃が、届かない。


「今だ!」


エルドが一歩踏み込む。


被害集束ダメージ・ギャザー

暴力の向きが、一点に集められる。


ミリアが、剣を抜いた。


断戦ライン・ブレイク


それは斬撃ではない。

“戦いを続ける前提”そのものを断ち切る一閃。


魔族が後退した、その瞬間――

レインは確信した。


(……いる)


(この奥に、“流してる側”が)


戦いは、まだ始まったばかりだった。


魔族は、撤かない。


それが――答えだった。


「……守る気だな」

レインが低く言う。


中間業者ではない。

この場にいる魔族は、“回収不能なものは破棄する”役割を負っている。


つまり――

ここで宝珠を失えば、連中は切り捨てられる。


「ミリア、前線もう一段」


「了解」


戦線確定バトル・ライン・フィックス

ミリアの一歩で、戦場の“境界”が塗り替わる。


逃げ場は消えた。

だが同時に、敵も本気になる。


魔族の一体が腕を変形させ、空間を殴り潰す。


「――っ!」


リュカが即応する。


戦域把握バトルフィールド・リード

戦局重量バトル・ウェイト


空間の“重さ”が調整され、衝撃が拡散する。


「このままじゃ押される!」


「押させない」

エルドが盾を前に出す。


還流盾リフロー・シールド

受けた衝撃が循環し、魔族の足元へ返る。


「っ、なにを――!」


そこへ、ミリア。


前線穿断フロント・ピアース


一直線。

剣閃が地面を裂き、魔族の隊列を分断する。


だが、奥からもう一体が跳び出す。


宝珠を持っている。


「来た……!」

レインの視界が、歪んだ。


残命観測リミット・ヴィジョン


――見える。

宝珠の輝き。

使用回数。

魔物化までの距離。


(短い……あと二段階)


レインは迷わなかった。


《因果代償・仮受テンポラリー・サクリファイス


本来、支払うはずの“後”を、今ここで引き受ける。


視界が焼ける。

心臓が軋む。


「レイン!?」

ミリアの声が震える。


だが、レインは前に出た。


成立破棄エスタブリッシュ・ノー


宝珠の効果が、“成立する前”で拒絶される。


魔族の動きが止まる。


「今だ、奪え!」


リュカが叫ぶ。


即断放棄インスタント・ドロップ

逃走ルートを、思考ごと切り捨てる。


エルドが踏み込む。


後悔遮断リグレット・ブロック


――戻れない。


宝珠が、地面に転がった。


次の瞬間、魔族たちは“理解”した。


これは勝てない。

だが――情報は渡せない。


「撤退判断」


魔族の身体が、影に溶ける。


逃げた。

だが、宝珠は残った。


静寂。


レインは膝をつく。


「……取れた」


ミリアが駆け寄り、レインを抱き止める。


「バカ……!

こんな無茶……!」


声が、震えていた。


宝珠は、確かにそこにあった。


だが同時に――

**“向こうにこちらの存在が完全に認識された”**ことも、はっきりと分かっていた。


戦いは、次の段階へ進む。


宝珠は、冷たかった。


レインの掌の上で、静かに脈打つそれは――

願いを叶える道具には、あまりにも無機質で、あまりにも“軽い”。


「……こんなもんのために」


ミリアの声が、途中で詰まった。


レインは答えなかった。

《因果代償・仮受テンポラリー・サクリファイス》の反動が、今になって身体を蝕んでいる。


膝が震え、視界が滲む。


「レイン」


ミリアが、彼の前に立った。


「……ねえ」


声が、震えている。


「もし、間に合わなかったらどうするつもりだったの?」


レインは少し考えてから、正直に答えた。


「……たぶん、魔物化しかけたと思う」


次の瞬間。


ミリアの目から、涙が溢れた。


「――っ、なんで!」


「なんでそんな顔で言えるの!

自分が壊れるかもしれないって、分かってたでしょ!?」


拳が、胸を叩く。


踏越位オーバー・ライン》で前に出る時の鋭さは、もうない。

ただの少女の、感情だった。


「私たち……一緒に戦ってるんでしょ……?」


レインは、何も言えなかった。


その時。


「ほっほ……無理をしおったの」


岩陰から、聞き慣れた声。


「ジル爺……!」


老賢者は、ひょっこりと現れ、レインの額に杖を軽く当てた。


《位相修復》

《寿命補正》


軋んでいた因果が、元に戻っていく。


「今回はの。

“若いもんが死ぬ未来”は、まだ早いと思っての」


レインが目を見開く。


「でも、代償は……」


「長生きしとる老人の特権じゃ」


ジル爺は、からからと笑った。


「礼はいらん。

……強いて言うなら、ミリアのパンティでも――」


次の瞬間。


ゴンッ!!


「スケベたぬきぃぃ!!」


拳が炸裂し、ジル爺は地面に転がった。


その場に、少しだけ笑いが戻る。


だが。


宝珠は、依然としてそこにある。


リュカが低く言った。


「解析結果、出た」


「これ……個体依存じゃない」


「“流通さえすれば、誰でも使える”」


エルドが、盾を下ろしたまま呟く。


「止めきれないな……もう」


レインは、宝珠を見つめた。


「……世界機関には、全部報告する」


「隠しても意味がない」


ミリアは涙を拭き、強く頷く。


だが、全員が分かっていた。


もう――

民衆の手から、宝珠を完全に取り上げることはできない。


そして、その夜。


誰にも知られぬ場所で。


影の中の声が、静かに告げる。


「確認した」


「《非裁定ノーリトリート》、想定より早い」


「供給ルート、次段階へ移行」


宝珠は、ただの“商品”ではなくなる。


戦いは、もう一段――深い場所へ。


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